レビュー
Slimcat | 2017.10.16
兵庫県西宮市出身のロックンロール・バンド、Slimcat。中心人物である小川悟(Vo・G)は帰国子女で、このたびTHE BAWDIESやgo!go!vanillasが所属するSEEZ RECORDSから、1stミニアルバムをリリースする。……きっと、これらのキーワードからは、ちょっとハードルが高い、男臭く本格的なロックンロールをイメージするかもしれない。しかし、実際に再生してみると、いきなりひゅん、と爽やかな風が頬を撫ぜてくれるような開けた感覚があって、心地よく裏切られた。もちろん、西宮のすべてのロックバンドが泥臭いわけではないし、帰国子女だからって近づきにくい人ばかりではないし、THE BAWDIESやgo!go!vanillasにだって爽やかさはある。でも、安直なイメージを軽やかに笑って越えていくような知性やジャンプ力を、Slimcatからは感じたのだ。
きらきらしたギターリフとキュートなコーラス、そしてちょっぴり懐かしさをにじませたサビが印象的な「Don’t Stop Groovin’」。イントロのユニゾンから、カッコいいライヴの絵が浮かんでドキドキさせられる「Time Machine」。火を噴くようなギターとベース、体の芯にズシンと響くドラム、そして迫りくるヴォーカルが一体となった「Heartbreaker」。弾き語りでも聴きたくなる、繊細なギターと囁くような歌声からはじまるミドルチューン「Stand By Me」。歌声もフレーズも隙間までも、ひとつひとつが色っぽく響いてくる「Light Up」。小さなライヴハウスから、どんどん遠くまで広がっていきそうなスケール感がある「Homecoming」。……6曲の中に、これでもか! と言わんばかりに詰め込まれた、色とりどりの魅力。笑顔のアー写や1曲目の入り口の広さから気軽に飛び込んでみると、めくるめくロックンロール・ワールドに連れて行かれて驚かされる。あらゆるタイプのリスナーのハートを掴むキャッチーさと、ロックンロールに敬意を表するような土台の強固さを、結成3年目の1stミニアルバムにして早くも感じさせてくれる。まっすぐなエネルギーと、新鮮な意欲がガソリンになっているかのような、新世代のロックンロール・バンド。だからこそ、ルーツに根差しながらも、すべてを新鮮に響かせることができるのだと思う。
全員が22歳。間違いなくまだまだ成長していくだろうし、この6曲で披露しきれていないオリジナリティもあるだろう。今秋から来年年明けにかけて、彼ら史上最長のツアーも開催される。ライヴを重ねてパワーアップしていくバンドである予感がするので、これからますます注目していきたい。
【文:高橋美穂】
リリース情報
American Youth
発売日: 2017年10月18日
価格: ¥ 1,500(本体)+税
レーベル: JMS
収録曲
1. Don’t Stop Groovin’
2. Time Machine
3. Heartbreaker
4. Stand By Me
5. Light Up
6. Homecoming