レビュー
CIVILIAN | 2017.11.21
このアルバムからは、バンドという音楽スタイルを選び直し、自らの表現を追求し続けた末に掴み取った新しい喜びがしっかりと伝わってくる。そう、さまざまな葛藤と試行錯誤を乗り越え、ついに彼らは“祝福の日”を迎えたのだ。
心の中に抱えた孤独、他者との関係における悩みや違和感を直視し、わずかな希望の光を求める気持ちをリアルに描いた楽曲によってオーディエンスからの強い支持を得ている3ピースバンド、CIVILIANがメジャー1stアルバム『eve(イヴ)』を完成させた。2016年7月にバンド名を“Lyu:Lyu”から“CIVILIAN”に改名した彼ら。シングル「愛/憎」「生者ノ行進」「顔」「赫色-akairo-」を含む本作には、Lyu:Lyu時代のアルバム『君と僕と世界の心的ジスキネジア』(2013年3月)から約4年8カ月の軌跡がリアルに刻まれている。
まず印象に残るのは、鋭さと華やかさを併せ持ったバンドサウンドだ。CIVILIAN名義になってから、楽曲の幅を大きく広げてきた彼ら。わかりやく言えばアッパーで開放的なナンバーが増えたのだが(Lyu:Lyu時代はダークかつシリアスな雰囲気のミディアムチューン、バラードを得意としていた)、それに伴い、3人の楽器の音質、アンサンブルもかなり変化しているのだ。コヤマヒデカズ(Vo/G)のギターにはオルタナティブ、シューゲイザー的なテイストが加わり、より豊かなフレージングを実現。また、純市(Ba)のベース、有田清幸(Dr)のドラムも、ダイナミズムと躍動感をバランスよく兼ね備え、楽曲のボトムを支えると同時にその世界観を増幅させている。その結果として本作は音楽的な彩りに満ちた作品に仕上がっているのだ。
一方で、このバンドの本来の精神性、メッセージ性が1mmもブレていないことを確認できるのも、本作の魅力だ。アルバムの最後を飾る「I’M HOME」の冒頭でコヤマは《死んでるような朝が来て 生きたいと願う夜が来た》と歌う。悲観と諦念に飲み込まれそうな感情を何とか乗り越え、自らを生きることへと導きたいと願う――その切実な思いがCIVILIANの原動力であることはまったく変わっていない。
そしてこのアルバムを聴けば、サウンドメイク、アレンジメントが向上したことで、楽曲に込められた感情が以前よりも強烈に伝わってくることを感じ取ってもらえるはずだ。『eve(イヴ)』を作り上げたことで3人はようやく“本来の表現”に辿り着いたと言っていい。ここから始まるCIVILIANの本当のストーリーをぜひ共有してほしいと思う。
【文:森朋之】
リリース情報
eve
発売日: 2017年11月22日
価格: ¥ 3,000(本体)+税
レーベル: Sony Music Records
収録曲
01.eve
02.一般生命論
03.残り物の羊
04.どうでもいい歌
05.愛 / 憎
06.ハロ / ハワユ
07.赫色 -akairo-
08.言わなきゃいけない事
09.生者ノ行進(Album Ver.)
10.あなたのこと
11.I’M HOME
12.顔
13.明日もし晴れたら
14.メシア(2017.9.5 at Aobadai Studio) *bonus track