レビュー

ゲスの極み乙女。 | 2018.01.24

音楽に飲み込まれる――あぁ、この上ない幸福。
 この上ない幸福が、様々な方向から攻めてくる。それが、ゲスの極み乙女。というサウンドの魅力だと思う。
時に、テクニックを駆使した複雑なアンサンブルで。時に、グッドメロディーで。時にロマンチックなコーラスで。時に誰にも真似できないような楽曲展開で。時には、言葉がそのまま脳裏に焼き付く抜群の言語感覚で。
まったくもって本当に、稀有な存在だ。

彼らの5枚目のシングルとなる「戦ってしまうよ」は、リアルタイム対戦型の新感覚カードゲーム『クラッシュロワイヤル』の新CMソングだ。このバンドのサウンドを司る川谷絵音が、同ゲームを実際にプレイして作った楽曲だそうだ。
タイトル曲の「戦ってしまうよ」は、音数の足し引きも大胆で驚く&楽しいアップチューン。バンドとしてのアンサンブルはもちろん、ちゃんMARIの鍵盤の多彩さに舌を巻く。

「イメージセンリャク」は、イントロから休日課長のぶりっぶりのベースがぐいぐいくるファンキー・チューン……かと思えば、川谷のラップと女性陣のタイトなコーラスが飛び出てきて世界観を一転させる。ループするギター、繰り返される同じメロディーと同じフレーズ……と、トランシーでスリリングな要素も満載のトリッキーな1曲である。

ダウンテンポの「息をするために」は、たゆたうようなメロとラップ、川谷のボーカルアプローチで、独特のリズムを放つ異色作。息=呼吸の微妙なリズムのブレをサウンドに落とし込んだかのようなアート性が特徴だが、インテリジェンスに陥っていないポップセンスは、さすが。

「ぶらっくパレード(Remix by AmPm)」は、川谷のラップのスキルが楽曲の表情を作る、彼らにしてはシンプルな印象の1曲。サウンドアプロ―チは、エレクトロニカというより、アンビエントに近いかも。しかしながら、サウンドより歌詞を軸にしている分、ダイレクトにメッセージが入ってくるのが魅力だろう。中高音のロングトーンなどでみせるクリアな声質が、川谷のボーカルのひとつの特徴&魅力だが、その彼が、シャウトするように歌っているのも面白い。
 
 大胆に、華麗に、容赦なく、そして楽しげに。
しかも、決して音圧に頼らず、鳴る音そのもので瞬時に作り出すパラレルワールドが、この新作でも私を飲み込んでくれた。
あぁ、幸福だ。やっぱり、ゲスの極み乙女。って、音楽が幸福をもたらすことを知っている。だから音楽の強さを信じられるんじゃないかな、なんて思ってみたりする、深夜でありました。

【文:伊藤亜希】

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リリース情報

戦ってしまうよ

戦ってしまうよ

発売日: 2018年01月24日

価格: ¥ 1,200(本体)+税

レーベル: ワーナーミュージック・ジャパン

収録曲

1.戦ってしまうよ
2.イメージセンリャク
3.息をするために
4.ぶらっくパレード(Remix by AmPm)

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