レビュー
LILI LIMIT | 2018.02.06
LILI LIMITの楽器の編成は、ギター、ベース、ドラム、キーボード。ロックバンドの編成としては、とてもシンプルで王道なものだ。しかし、彼らが奏でるサウンドは、おそらく多くのリスナーが思い浮かべる「ロックミュージック」「ギターロック」というイメージとは、かなり異なるタイプのものだと思う。鳴り響かせるあらゆる音色、旋律を緻密に組み立てて、1つの空間を作り上げる彼らの楽曲はクラブミュージック的な側面も色濃く、環境音楽的でもあると言えるだろう。ライブハウスとクラブの垣根を軽やかに乗り越えるだけでなく、我々の生活の中にある無数の場面にも自ずとシンクロできるこの作風は、最新作となる3rd EP『LIB EP』に、まさに発揮されている。
柔らかな光に溢れた美しい空間を作り上げる「COLORS」。トライバルなビートと、エレキギターが奏でる艶めかしいサウンドが印象的な「GET UP」。濃厚なグルーヴがじっくりと高鳴っていく「ENCLOSE」。胸の奥にまで深く染み入るメロディが壮大に広がる「FEEL IT」――収録されている各曲は、多彩なイメージの断片を次々とリスナーに投げかける。街の風景、夢見心地の感覚、刻々と色合いを変える空、空気の肌触りなど、楽曲の中に散りばめられている様々な質感、感情、モチーフを受け止め、思い浮かぶ世界にとことん没入するのが、とても楽しい。描かれている具体的な事柄がリスナーと重なり合う、いわゆる「共感」を誘うタイプの作風ではないのだと思うが、「この感じ、なんとなく知っている気がする……」という「共鳴」をじっくりと誘うという点で、「ポピュラリティに満ちた音楽の一類型」と言い切っても良いだろう。
そして、このようなLILI LIMITの作品に触れて改めて実感させられるのは、音楽から生まれる旨味は、メロディやハーモニーだけではないということだ。音符では表しようもない漠然とした音の響き、醸し出されるムード、無音の空白、展開のさせ方といったものも、たくさんの喜びを生み出すことに繋がる。そんな素敵なワクワクを味わえる今作は、あなたの持っている一番良いヘッドフォン、イヤホンなどで聴くことをお勧めしたい。「音って、こんなにも豊かに人の心に訴えかけることができるんだ!」という嬉しい衝撃を噛み締められること間違いなしだ。
【文:田中大】
リリース情報
LIB EP
発売日: 2018年02月07日
価格: ¥ 1,204(本体)+税
レーベル: Ki/oon Music
収録曲
01. COLORS
02. GET UP
03. ENCLOSE
04. FEEL IT