レビュー
JUN SKY WALKER(S) | 2018.01.24
今年の5月にデビュー30周年を迎えるJUN SKY WALKER(S)。このアニバーサリーイヤーの幕開けを華麗に飾るのが、彼らにとって初のカバーアルバム『BADAS(S)』だ。収録されている10曲のうち、まず印象に残るのは、RCサクセション「ベイビー!逃げるんだ。」、BOØWY「NO.NEW YORK」、ARB「魂こがして」、THE MODS「ゴキゲンRADIO」、ザ・ルースターズ「FADE AWAY」――これらの曲は、彼らがティーンエイジャーだった頃に夢中になって聴いていたロックナンバーなのだろう。猛烈にワクワクしているメンバーたちの姿が、シャープなビートを利かせたサウンドからストレートに伝わってくる。
少年時代の彼らは、このうちの何曲かをコピーしたのではないだろうか? 楽器を始めたばかりの初心者であったとしても、大好きな曲を不完全ながらも自らの手でなぞることができた瞬間は、憧れのミュージシャンと同化できたかのような興奮を噛み締めるものだ。また、自分と同様にぎこちない仲間たちと合奏できた時の喜びは、まるで天下でも取ったかのような感覚に等しい。長年に亘るキャリアがあるジュンスカが、このような無邪気な喜びに今尚溢れている様は、それ自体が「音楽って、こんなにも素敵なものなんだよ」という美しいメッセージになっていると思う。そして、この気持ちこそが、メンバーたちが音楽と共に人生を歩み続けられたエネルギーの源であり、紆余曲折を経ながらもJUN SKY WALKER(S)としてデビュー30周年を迎えることができた大きな理由の1つなのだろう。
共に80年代末~90年代初頭のバンドシーンを盛り上げたTHE BLUE HEARTSへのリスペクトを感じる「リンダリンダ」、原曲のメロディを大切にしながらジュンスカらしいサウンドで表現している松任谷由実「Hello, my friend」、後輩バンドたちとの温かい関係性が窺われるスピッツ「楓」、Mr.Children「星になれたら」、MONGOL800「あなたに」も今作には収録されているが、どれも新鮮な息吹に満ちている。カバーしているミュージシャンたちとジュンスカとの間にある様々なエピソードが30周年記念サイトで綴られているので、アクセスして読むことをオススメしたい。『BADAS(S)』を一層楽しめる興味深い事実をいろいろ見つけられるはずだ。
【文:田中 大】
リリース情報
BADAS(S)
発売日: 2018年01月24日
価格: ¥ 3,000(本体)+税
レーベル: ドリーミュージック
収録曲
1. ベイビー!逃げるんだ。
2. リンダリンダ
3. NO.NEW YORK
4. 魂こがして
5. Hello, my friend
6. ゴキゲンRADIO
7. 楓
8. FADE AWAY
9. あなたに
10. 星になれたら