レビュー

KANA-BOON | 2018.05.29

今年メジャーデビュー5周年を迎え、「5シーズン・5リリース・5イベント」と題したアニバーサリー企画を開催しているKANA-BOON。シーズン1の『KBB vol.1』(シングルのカップリング曲を中心にしたベスト盤)に続く、シーズン2のリリースとなる『アスター』は、“夏"をテーマにしたミニアルバム。その中心にあるのは、生々しい感情を映し出す、谷口鮪(Vo・Gt)の“歌"だ。

2013年のメジャーデビューと同時に、バンドシーンを一気に駆け上がっていった4人。当時の彼らの最大の武器が、高速の4つ打ちビートを軸にしたアッパーチューンだったことに異論の余地はないだろう。エッジ―かつダンサブルな楽曲はバンドキッズたちの圧倒的な支持を獲得、KANA-BOONは時代の寵児と言ってもいい存在となったのだ。

その後、表現力を大きく広げてきた彼ら。3rdアルバム『Orijin』(2016年)ではロックバンドとしてのダイナミズムを大きく向上させ、4thアルバム『NAMiDA』では身の回りで起きた出来事、そのときに感じたリアルな感情をまっすぐに描くことで、普遍的なポップミュージックとしての魅力を感じさせてくれた。そして本作『アスター』は、“歌"のパワーをしっかりと実感できる作品に仕上がっている。

喜怒哀楽のすべてを聞かせたいという切実な思いを胸に《会いたいだけ/会いたいだけ》と歌うアッパーチューン「彷徨う日々とファンファーレ」、淡々と続いてく日々のなかで感じる切なさと希望を叙情的に綴った「アスター」、夏の風景のなかで“失って初めてわかる、あの恋愛の大切さ"を映し出す「夏蝉の音」。楽曲の背景にある物語が浮かび上がり、そこに込めた様々な思いがじんわりと伝わる――この作品を聴けば、KANA-BOONの“歌"の奥深さを実感してもらえるはずだ。

何才になっても失敗するし、落ち込んでしまう日もあれば、どうしようもない日もある。しかし、我々はどうしても希望を抱くことをやめることができないし、“明日はきっといい日になる"という思いを諦められない。谷口鮪はそのことを認識したうえで、「聴いてくれる人を元気にさせたい、楽しくさせたい」というシンプルな動機を貫いているのだ。

楽曲のストーリー性、繊細な色合いを持った風景、繊細に揺れる感情をしっかりと際立たせる古賀隼斗(Gt)、飯田祐馬(Ba)、小泉貴裕(Dr)の表情豊かなプレイ、そして、ドラマティックに広がるメロディラインも本作の魅力。明日への希望をつなぎとめてくれる歌は、5周年のタイミングで手に入れたKANA-BOONの新しい武器なのだと思う。

【文:森 朋之】

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リリース情報

アスター

アスター

発売日: 2018年05月30日

価格: ¥ 1,500(本体)+税

レーベル: Ki/oon Music

収録曲

1.彷徨う日々とファンファーレ
2.ベガとアルタイル
3.アスター
4.線香花火
5.夏蝉の音

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