レビュー
吉井和哉 | 2018.06.14
ソロデビュー15周年記念作として6月13日にリリースされた『SOUNDTRACK ~Beginning & The End~』は、「ソロ活動が1本の映画としたら、サントラのようなもの」というコンセプトで制作された。吉井和哉はどんなストーリーを思い描いて、この12曲を選び、新曲「Island」を書いたのだろう。
この“サウンドトラック”は、2015年12月28日の武道館公演の音源を再構成している。THE YELLOW MONKEY再集結がアナウンスされる直前のライブだ。そこでアンコールの最後に演奏された「MY FOOLISH HEART」が本作の幕開けを飾る。ナポリタンズ(日下部“Burny”正則/ギター、三浦淳悟/ベース、吉田佳史/ドラム、鶴谷崇/キーボード、ジュリアン・コリエル/ギター)に、この日フロントアクトも務めたスペシャルゲスト(駒沢裕城/ペダルスティールギター、クリストファー・ハーディ/パーカッション、松尾慧/篠笛)が加わったドラマチックな演奏だ。≪行かなきゃ やるべきことのつづきに なげだすものか 逃げ出すものか≫と歌うこの曲は、2006年にシングル「BEAUTIFUL」のカップリングとしてリリースされたが、ソロ・アーティストとしてのスタイルを確立した重要な曲であるようだ。それならこれは物語の幕開けにふさわしい。
ここに選ばれた12曲は、吉井和哉というソロ・アーティストが作り出してきたものの中で選りすぐりといっていいだろう。内省や自問をポップな曲に落とし込み、じわじわと歌い上げて染み込ませる。そんな唯一無二のスタイルを彼が作り出し、ライブで練り上げてきたことを痛感させる作品として、これは完成した。だから素晴らしく聴き応えのあるサウンドに圧倒されるが、ライブの流れを追うものではなく、臨場感は最小限に抑えられている。孤独も出会いも飲み込んでゆっくり歩み出し弛まず進み続け確実に大きな足跡を残してきた姿が浮かび上がってくるようだ。
そんな足跡をどのように刻んできたかを見せるのが、6月6日に発売されたLive Blu-ray Box『1228』。2006~2015年まで毎年12月28日に行われた10年分のソロ・ライブ映像を収録した見応えのあるセットだ。2015年の映像を見ると、CDが全く別なものとしてコンパイルされていることが実感でき、CDを「サウンドトラック」と位置付けた意味がわかる気がする。
そしてCDの最後に収録された新曲「Island」は、野沢雅子、DAIGO(BREAKERZ)、山田孝之、栗原類の4人がインストゥルメンタル音源に乗せて歌詞を朗読するユニークなリリック・ビデオがリリース前に公開されたが、シリアスな現実をシニカルに描きながらも希望を抱き“名前のない島へ行こう”と呼びかける、新たな「MY FOOLISH HEART」のように思える曲だ。2016年から再集結しているTHE YELLOW MONKEYは「もう解散しない」と吉井は宣言しているが、ソロ・アーティスト吉井和哉も動き続けているのだ。
このリリースに合わせてスタートしたツアー「Kazuya Yoshii 15th Anniversary Tour 2018 -Let’s Go Oh! Honey-」でどんな吉井和哉に出会えるのか、楽しみである。
【文:今井智子】
リリース情報
15th Anniversary Album 「SOUNDTRACK〜Beginning & The End〜」
発売日: 2018年06月13日
価格: ¥ 2,778(本体)+税
レーベル: 日本コロムビア
収録曲
1.MY FOOLISH HEART
2.シュレッダー
3.FLOWER
4.CALL ME
5.(Everybody is) Like a Starlight
6.点描のしくみ
7.恋の花
8.血潮
9.HEARTS
10.TALI
11.トブヨウニ
12.ノーパン(収録:日本武道館 2015.12.28)
13.Island(新曲)