レビュー
LUCKY TAPES | 2018.10.03
華やかで洗練されたポップ・ミュージック。心地よく腰を揺らす横ノリのグルーヴ。ルーツであるブラックミュージックを基軸に、生演奏でゴージャスなディスコやソウル・ナンバーを鳴らす。LUCKY TAPESの新作『dressing』は、これがメジャー初のフルアルバムとは思えないほどの完成度と洗練を感じさせる一枚だ。
そして、新作は早くもバンドの次のフェーズを感じさせる意欲作でもある。5月にリリースされたEP『22』でも垣間見えたトラックメイキングの手法はさらに推し進められ、ラップ・ミュージックへの接近も見られる。それも、いわゆるゴリゴリのヒップホップではなく、ここ最近の海外メインストリームのポップスでも見られるタイプの、歌とラップの境目を感じさせないメロディアスで心地よいフロウだ。特にCharaをフィーチャーした洒脱なラブソング「Lonely Lonely」、韻シストのBASIがぐっとBPMを落としたメロウなトラックの上でラップを見せる「COS」は新境地。どちらもループするサンプリングのフレーズがキーになっている。ゴスペル的な分厚いコーラスとレイドバックしたグルーヴが心地よい「JOY」も印象的だ。
バンドを率いるフロントマンの高橋海は、トラックメーカーとしての顔も持ち、プロデューサーとしてiriや向井太一、eillといった次世代を担うシンガーソングライターの作品も手がけている。そうした才覚がバンドアンサンブルの成長共に発揮された一作と言えるだろう。
もう一つ、見逃せないのがアルバムのラストトラック「ワンダーランド」だ。この曲は横ノリのグルーヴではなく、マーチングバンド風のリズムを基調にしたヴィンテージなポップソング。包容力のあるピアノに乗せてファンファーレのようなホーンが鳴り響く、多幸感あふれる曲だ。
高橋海はブラックミュージックだけでなく、多彩な音楽の素養を持つクリエイターでもある。オランダ出身のポップ・マエストロ、ベニー・シングスと交流を持ち、細美武士率いるthe HIATUSが憧れの対象だったりもする。
おそらくLUCKY TAPESは、この先どんどん変化していくだろう。デビュー時の印象にとらわれることはなく、くるりやクラムボンやthe HIATUSのように、作品ごとに方向性をがらりと変えつつも、ミュージックラバーに愛されるバンドとしてキャリアを築いていくことになるのではないだろうか。そんな、アーティストとしての充実した先行きも予感させるメジャー・ファースト・アルバムだ。
【文:柴 那典】
■ツアー情報
”dressing” release tour 2018
10月6日(土) 広島・広島CAVE-BE
10月8日(月祝) 福岡・福岡BEAT STATION
10月10日(水) 静岡・浜松FORCE
10月12日(金) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
10月14日(日) 大阪・梅田Shangri-La
10月19日(金) 岡山・岡山Livehouse IMAGE
10月20日(土) 香川・高松DIME
10月27日(土) 北海道・札幌Sound Lab mole
10月31日(水) 宮城・仙台MACANA
11月2日(金) 新潟・新潟GOLDEN PIGS BLACK
11月4日(日) 石川・金沢vanvan v4
11月8日(木) 東京・マイナビBLITZ赤坂
リリース情報
dressing
発売日: 2018年10月03日
価格: ¥ 2,700(本体)+税
レーベル: ビクターエンタテインメント
収録曲
1.22
2.Punch Drunk Love
3.COS feat.BASI
4.Balance
5.Gossip
6.Lonely Lonely feat.Chara
7.Gravity
8.Joy
9.MOOD
10.ワンダーランド