レビュー

SIX LOUNGE | 2018.10.17

 この夏~秋、フェスにイベントにサーキットフェスにSIX LOUNGEの雄姿を各所で観ることが出来た。そこでの彼らはキチンと自分たちの役割を把握しており、ある時は目覚まし役に、ある時は盛り上げ番長に、ある時はパーティ感を盛り込みつつキチンと大団円へと導く大将のように、極めてTPOに則したライブを展開していた。そして驚いたのは、それらはセットリスト的にはそう変わってはいないだろうに、曲順や流れ、メリハリやMCの使い分けにより上述を成していたところにあった。

 勢いや若さ溢れるロックンロール一辺倒なバンドイメージを持たれがちなSIX LOUNGEだが、実はその歌や音楽性は極めてバリエーション豊富で色々なタイプを有している。そしてそれは、このニューミニアルバム『ヴィーナス』からもありありと伺える。そう今作は、ロックンロールを基調にしながらも様々なタイプやテンポ、感触や物語を楽しませてくれる1枚でもあるのだ。

 1曲目を飾る「MARIA」は彼らの人気曲「メリールー」、前作ミニアルバムのリード曲「くだらない」に代表されるミディアムで聴き手をぐっと抱き寄せるかのようなラブソング。若干セクシーさを交えた歌詞とファルセットを上手く交えた歌表現、そしてサビでのちょっとした夜明け感もたまらない。続く「MIDNIGHT RADIO」はダウンピッキングが似合うソリッドなロックンロールナンバー。ラジオよこの夜と共に終わらないで、とのワンナイトの刹那感を交え歌い放っている。サビ頭から始まる「青に捧ぐ」は6/8のロッカバラード。ミッドなテンポの中、グッドナイト感と途中の転調がドラマティックだ。

 そこを抜けるとロックンロールナンバー「ピアシング」が飛び込んでくる。こちらは先とは違ったタイプの暴発性を有したパーティーチューン。“よし、ここから!!”というところで終わってしまう小曲なのもご愛敬。その分も取り戻すかのように続く「ラストシーン」に入ると、作品が更に転がり出す。既にライブでは披露されている同曲。ラストに向かうにつれシフトアップし、ストレートに伸びていく曲調がいい。そしてラストに鎮座しているのは6分にも及ぶ大曲「憂鬱なブルー」だ。こちらは今作の中でも白眉ながら新しい彼らを楽しませてくれるダイナミズム溢れるスケール感の大きな1曲。ラストに向かっての柔らかく優しいコーラスと共に徐々に広がっていくそのサウンドは、しまいには光の中に包まれていくかのように広がり、今後の彼らの将来性を楽しみにさせてくれる。

 ソリッドな演奏には磨きがかかり、ボーカル&ギターのヤマグチユウモリのウィスパーやファルセットを交えた歌のスキルアップと、広くなったその幅にも驚かされた今作。もちろんそれは繰り返されてきたライブで培ったスキルもあるだろうが、ライブ感を大事にしつつも歌をキチンと伝える / 歌をキチンと歌う、そんな意識も手伝っているようにも伺えた。

 勢いや少年性から、ミッドでも大人な歌内容でも勝負が出来、その歌や演奏にはより成熟さが増した感のある昨今のSIX LOUNGE。そう、彼らはまだ20歳そこそこ。その吸収は速く成長は著しい。そして、その辺りが確認でき確信できるのが今作『ヴィーナス』に他ならない。

【文:池田スカオ和宏】

リリース情報

ヴィーナス

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ヴィーナス

発売日: 2018年10月17日

価格: ¥ 1,800(本体)+税

レーベル: ユニバーサル ミュージック

収録曲

1. MARIA
2. MIDNIGHT RADIO
3. 青に捧ぐ
4. ピアシング
5. ラストシーン
6. 憂鬱なブルー

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