レビュー
GReeeeN | 2018.10.31
一聴してもはや確信しかなかった。これはもう間違いない、と。合唱曲を思わせる4人の声の重なりと柔らかなピアノ&ストリングスによる頭サビの幕開け、続くラララのハーモニー。それらが鼓膜を通過していきなりみぞおちを掴みにかかってくる。そして歌詞に散りばめられたフレーズやその行間から色濃く立ちのぼるのは誰の心にも息づいているだろう青春のイメージ。一過性でも刹那的でも特定の誰かのものでもない。ある人にとっては永遠の憧れであり、他のある人にとってはかけがえのない思い出でもあるような、十人十色にして普遍の青春だ。
こうした誰もがそっと抱えていて、大切にしている綺麗なものや目映いものを音楽へと昇華させるのがGReeeeNは本当に上手い。さまざまなジャンルに精通した音楽的センスや持ち前の才能、キャリアに伴うスキルの熟達など上手さの要因を挙げればきりがないが、ただ上手いだけではなく、GReeeeNというグループが老若男女を問わず広くポピュラリティを獲得している所以はやはりボーカルグループとしての突出した存在感、つまりは歌の力だろう。誤解を恐れずに書けば彼らの歌はけっして技巧的ではない。技巧に依らず、まっすぐに放たれる4色の声のグラデーション、そこに宿る体温や人間味を素直に感じられるからこそGReeeeNの歌は人を惹きつけて離さないのだとこの「贈る言葉」を聴いて改めて思う。
また、4人の歌がその魅力を遺憾なく発揮できるのは彼らが常に心がけているという、わかりやすくて奇を衒わない言葉選びの作用も大きい。今作の歌詞に使われている言葉も言ってしまえばありふれたものばかりだ。なのに彼らによって紡ぎ上げられ、彼らの声を通して発せられた途端にGReeeeNの歌以外の何ものでもなくなるのだから舌を巻くしかない。今回は曲調も構成もいつに増してシンプルゆえ、その威力はよりダイレクト。「贈る言葉」というタイトル通り、彼らから贈られた言葉にまんまとど真ん中を撃ち抜かれてしまった。しかも通算32作目のシングル、どれだけストレートを投げ続けてはストライクを決めるのか。カップリングの「カワリバンコハンブンコ」はギターを基調にしたやさしくも力強い佳曲。不安な背中にそっと寄り添い、一歩を踏みだす力をくれるはずだ。
なお、「贈る言葉」は11月3日公開の映画『走れ!T校バスケット部』の主題歌。それにちなみ、今回のミュージックビデオは映画のスピンオフストーリーとなっている。MVだけのオリジナルキャラクターとして校長先生役で出演するのは、GReeeeNの4作目のシングル「人」のジャケットを飾った武田鉄矢。「贈る言葉」と言えばドラマ『3年B組金八先生』という世代にとってもかなりムネアツなコラボレーションだろう。ともあれ、こちらもぜひチェックを。
【文:本間夕子】
リリース情報
贈る言葉
発売日: 2018年10月31日
価格: ¥ 1,000(本体)+税
レーベル: ユニバーサルミュージック
収録曲
1. 贈る言葉
2. カワリバンコハンブンコ
3. 贈る言葉 ~ピアノ伴奏~