レビュー
Hump Back | 2018.12.03
大阪出身の3ピースガールズ・ロックバンド、Hump Backが12月5日に2ndシングル「涙のゆくえ」をリリースする。前作の1stシングル「拝啓、少年よ」を引っ提げたツアーでは自身初の全国ワンマンツアーを敢行し、10月にはレーベルメイトであるハルカミライ・SIX LOUNGEと共に日比谷野外大音楽堂での3マンをソールドアウトで迎えるなど、日夜成長を遂げていく彼女たち。フェス会場だろうとライブハウスだろうと関係なく、例えば演奏中に予定調和にも似たハンドクラップが沸き起こると「ライブハウスには拳ひとつで充分!」と叫び、オーディエンスの本能に従ってほしいという真っ直ぐな想いを訴えるロックバンドならではの矜持が感じられる。Hump Backは、“ガールズバンド”という言葉の響きから想像するようなか“弱さ”や“儚さ”は殆ど感じられず、どちらかと言えばかなり漢気で強く、とてもエネルギッシュだ――。そんな彼女たちにとって今作のタイトルにもある“涙”は無縁な存在かと勝手に思っていたが、楽曲を聴いて、「涙」や「泣くこと」というのはHump Backが前述したような功績を辿っていく過程において必要であり、とても豊かな感情表現のように思えた。
筆者自身は30歳を目前とした人間なのだが、ふと「最近、最後に泣いたのはいつだろう?」と考えた。ドアに指を挟んだ時とか喉に物が詰まって咳き込んだ時とかはまぁあるとして、本気で悔しかったり、本気で哀しかったり、本気で怒って感情がめちゃくちゃになったり、失恋して泣きじゃくって翌日に目が腫れたり、心から感動して心を揺さぶられて無意識に頬を伝った涙だったり、思い返してもそういう経験が直近では無くて、“泣く”に至るほどの心の動かし方を最近はしていないのかもしれないなと感じた。良く言えば自分の感情をコントロールできるようになって常に平穏を保てる「大人になった」ということなのかもしれないが、「これってとても寂しいことだな」と気付く。年齢を経ていくにつれて凝り固まってしまうそうした心をグッと押してくれるのは、1曲目の「生きて行く」の《ああ僕ら/生きて行く/ただ歳をとることが/ひどくつまらなく見えました/ああ日々が過ぎていく/泣いて笑って転んで/ただ生きていたいのさ》というフレーズだったりする。林萌々子(Vo&Gt)が、意図的かつ考察的に生み出したものではなく、様々な日々を超えてきた今だからこそ浮かぶフレッシュな言葉の数々と、歩きながら聴くにはうってつけのテンポの良いメロディ。映画『真っ赤な星』の主題歌に抜擢された「クジラ」も、カントリーチューン「のらりくらり」も、ミディアムチューン「悲しみのそばに」も、4曲全てが前へ進みながら口ずさみたくなる楽曲だ。“哀しいから”、“辛いから” 泣く、それはいい。でも、流した涙をたったそれだけの役割だけで使ってしまうのは勿体ない。濁った視界が涙によってクリアになったり、心の淀みを流してくれたり、そういう「涙の先の方が重要なんだよ」と、教え励ましてくれる作品となっている。
【文:峯岸利恵】
リリース情報
涙のゆくえ
発売日: 2018年12月05日
価格: ¥ 1,111(本体)+税
レーベル: WELL BUCKET RECORDS
収録曲
1.生きて行く
2.クジラ
3.のらりくらり
4.悲しみのそばに