レーベルツアー『small indies table tour 2018』のファイナル、9月28日の恵比寿LIQUIDROOM公演をもってドラマーが脱退し、3人編成となったKOTORI。その会場でリリースが予告されていた2ndミニアルバム『CREAR』が、12月5日にリリースされた。　

　2018年は“3ヶ月連続ワンコイン・シングル”と題して、3月には第1弾「YELLOW」、4月には第2弾「RED」、5月には第3弾「GREEN」という3枚のシングルを発表。その楽曲達は強力な武器となり、時には誰かの弱さに寄り添い、時には自らを鼓舞するように鳴り響き、ライブバンド・KOTORIの活動を加速させてきた。だが、そこに突然に訪れた“4人のKOTORI”との別れ――。4人でのラスト公演の場で、横山優也（Gt&Vo）は「この4人、このレーベルと、ここにいる人、これまで来てくれた人……全てを背負って歌います！」と叫んでいたが、その時に告げられることのなかった悔しさや、それでもこの道で間違えていなかったと自分達を肯定する言葉、なによりも≪君に出会えてよかった≫という感謝の気持ちが、1曲目の「さよなら」からは溢れてきた。そして、シングル「YELLOW」に収録されていた2曲目「1995」へと続くと、この先も止まることなく、躍進し続ける宣言として≪青春はまだ終わらない／だって僕らは／1995≫と繰り返す。≪戦う君へ この歌がこの歌が届けばいい≫と、リスナーを優しく励まし続けた3曲目「EVERGREEN」（シングル「GREEN」収録）も、『CREAR』の中ではまた違った頼もしさを感じさせていた。

　そして、今作においてとくに印象的な1曲と言えば、4曲目に収録された「オリオン」。恋愛ソングともとれるナンバーだ。寒空の下、冬の星座を眺めながら、離れてしまった人への想いを馳せたことのある人は少なくないだろう。だけれど、大人になれないもどかしさを感じながらもがむしゃらに生きていた “19歳”から月日が経てば、わかってしまうこともたくさんある。未来は限りあるものだってこと。同じ星の下にいても、一度離れてしまったら、もう会えないかもしれないってこと。この曲の中には、≪最後の季節が来てしまっても／何も変われないままでいるよ≫と歌う反面、絶対にまたいつか会えると信じられるほど子供ではなくなった、今のKOTORIらしい繊細な心の揺らぎが描かれている。なお、そこから連なるように、5曲目「RED」（シングル「RED」収録）をゆったりと歌い始める流れも秀逸で、徐々に加速していくサウンドと共に、夢に懸ける想いが燃え上がっていく様は、ライブでも見どころ。しかしラストには、ビールを片手に音を奏でるバンドマンらしい日常を≪僕らにとってのlife.≫と言い切る新曲「life.」が収録されており、「肩肘張らずに進んでいこう！」と微笑みかけるような軽やかなコーラスが、リスナーが抱えている悩みさえも“なんかどうでもよくしてくれる”不思議な1枚となっている。

　失礼な言い方になるかもしれないが、全力で背中を押す応援歌も、ただただ甘いラブソングも、彼らには似合わないと筆者は思う。でも、失敗しながら、葛藤しながら、人間臭く生きている彼らだからこそ伝えられる歌がある。そして、「YELLOW」「RED」「GREEN」……色とりどりの感情や景色を切り取ってもなお、待ち受ける新たな世界への期待感。それこそが、きっと、『CREAR』という色の意味なのだろう。2019年には初ワンマンもLIQUIDROOMで控えているだけに、この先のKOTORIに期待せずにはいられない。

【文：斉藤碧】