レビュー

chelmico | 2019.02.22

 Rachel(レイチェル)とMamiko(マミコ)からなるガールズラップユニット“chelmico(チェルミコ)”が、今年25周年を迎える「爽健美茶」のブランドアンバサダーに抜擢され、CM出演に加え、CMソングを担当。おなじみのCMソングに二人のラップを加えた「爽健美茶のラップ」が2019年第1弾デジタルシングルとしてリリースされた。

 誰もがよく知るCMソング「爽健美茶」のオリジナル楽曲の作曲は、高木完やいとうせいこうとともに日本のヒップホップの黎明期を牽引し、「チョコボール」や「ウォシュレット」など、1000曲以上のCMソングを手がけている近田春夫。CMソングではあるが、日本語ラップのオリジネーターと今一番勢いのあるラップユニットのコラボが実現した形となっている。そして、編曲とトラックメイクは、chelmicoのメジャー1stアルバム『POWER』で、ハッピーなウエディングソング「OK,Cheers!」とアーバンな失恋ソング「UFO」の2曲に参加しているシンガーソングライターでトラックメイカーのESME MORI(エズミ・モリ)。ピアノのバッキングを基調にした小気味よくシャイニーなトラックに二人が、<いろんなことが あるけれど/私は 今日も 生きていく>という、「OK,Cheers!」をはじめとしたchemicoの楽曲に共通する本質的な姿勢が込められたフレーズに向かって、それぞれの思いをラップしていくという構成になっている。

 ここからは想像だが、こんな二人の日常が垣間見える。まず、<あ~~~>とため息交じりに目を覚ましたMamikoのバースから始まる。深夜ラジオとお笑いが大好きな22歳の彼女は完全に昼夜が逆転しており、外に出かける気にもなれず、目覚まし時計のアラームをセットして再び眠りについてしまう。一方、爽健美茶と同じく’93年生まれで25歳のRachelはクラブにいるのだろう。ラップにある<B2B>とは、企業間取引というビジネス用語ではなく、2人のDJが交代で曲をかけあう即興演奏的DJのプレイスタイルのこと。B2Bを楽しんだ後に自販機で爽健美茶を買って、食欲をなくすくらいの悩み事や不安を飲み干したところで、Mamikoの本格的なバラードシンガーのような歌が一瞬だけ浮かび上がり、クラブのドアを開け、いつの間にか陽が昇った青空を見上げたところで1番が終わる。2番の冒頭の場面は翌日。どこかのロックバーで待ち合わせた二人はお互いの悩みや葛藤、言葉にならないモヤモヤを語り合ってがっちり肩を組む。顔は泣き笑いに近い。周りになんて言われても関係ない、二人が好きなことを好きなタイミングで好きなようにやろう!と声を合わせ、無敵のパワーを持つchelmicoとして前を向き、自分たちだけの花を咲かせようと決意する。自問自答を繰り返した末に二人でたどり着いた<いろんなことが あるけれど/私は 今日も 生きていく>というフレーズは、冒頭のフックに出てくる同フレーズに比べ、潔く強く、涙が出るくらいの眩しさを感じる。Rachelと同じように、立ち止まって爽健美茶を飲み干し、空を見上げたら、少しだけ気分が晴れるんじゃないかと思えるような楽曲となっている。

 余談ではあるが、<ハトムギ 玄米 月見草/ドクダミ ハブ茶 プーアール>と記憶している人も多いと思うが、現在の爽健美茶はノンカフェインのため、プーアル茶と緑茶は入ってない。<プーアル茶>のところは、オリジナルメンバーながらも歌詞には入ってなかった<ナンバンキビ>になっている。この<ナンバンキビ>の歌い方、フロウ、アクセントのつけ方だけでもchelmicoらしさを感じるので、テレビから流れてきた際にはぜひ耳をすませてほしい。

【文:永堀アツオ】

リリース情報

爽健美茶のラップ

爽健美茶のラップ

発売日: 2019年02月22日

価格: ¥ 250(本体)+税

レーベル: unBORDE

収録曲

01.爽健美茶のラップ

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