レビュー
KEYTALK | 2019.05.15
移籍したユニバーサルミュージック/Virgin Musicから初めてリリースするシングル『BUBBLE-GUM MAGIC』。首藤義勝(Vo/Ba)が作詞作曲を手掛けたタイトル曲「BUBBLE-GUM MAGIC」は、新境地を存分に感じさせる仕上がりだ。KEYTALKのサウンドとして大半のリスナーがイメージするのは“4つ打ち”と“疾走感”だと思うが、この曲はそれらの要素を含んではいない。しかし、このバンドの真骨頂とも言うべき“ダンサブルさ”という点は貫かれているのは勿論、“楽しい”という喜びも目一杯に届けてくれるのが特筆すべきところだろう。ファンキーなビートをさり気なく躍動させつつ、ハンドクラップやコールを入れたくなるポイントも絶妙に盛り込んでいるこの曲は、ライブの現場でも存在感を発揮するはずだ。
勢いに任せた即効性の高い刺激に任せなくても、ワクワクするサウンドをしっかりと構築できているこの曲は、彼らが確かな演奏力、アレンジ力、表現力を持ったバンドであることも堂々と証明している。気づいているファンも多いと思うが……KEYTALKは、ブレイクポイントを迎えたロックバンドに対して用いられるのが一般的な“今、最も勢いに乗っている”というような紹介のされ方を、実はずっとされ続けているバンドだ。“永遠の旬”とも言うべき彼らの不死身のフレッシュさは、ミュージシャンとしての揺るぎないスキルの上で多彩な作風が広がり続けているから実現している。そんな姿の産物そのものである「BUBBLE-GUM MAGIC」には、“KEYTALKの最新のデビュー曲”というような矛盾しまくった表現も、とてもよく似合う。
そして、巨匠こと寺中友将(Vo/Gt)が作詞作曲を手掛けたカップリングの「海」も切れ味が抜群だ。通り過ぎて行った幸せな日々、胸の奥で残像のように揺らめき続ける記憶を瑞々しい美メロで描いているこの曲は、巨匠ならではの持ち味を再確認させてくれる。過去の曲から挙げるならば「エンドロール」や「ミッドナイトハイウェイ」がまさにそうであったが、彼が作る曲は骨太さを含んだ哀愁を漂わせる。今回の「海」も、そういう風味の極みだと言えよう。どちらかと言えば少年的な繊細さを醸し出すことが多い首藤に対して、巨匠が持っている哀愁の核にあるのは大人の男性のセンチメンタリズムだ。KEYTALKのメインソングライターであるこのふたりが自ずと醸し出している作風の幅は、今後もこのバンドの魅力的な奥行きの深さとなっていくに違いない。
【文:田中大】
リリース情報
BUBBLE-GUM MAGIC
発売日: 2019年05月15日
価格: ¥ 1,200(本体)+税
レーベル: ユニバーサルミュージック
収録曲
01.BUBBLE-GUM MAGIC
02.海