レビュー
Hump Back | 2019.07.17
3ピースガールズバンド・Hump Backのメジャー1stフルアルバム『人間なのさ』が、7月17日にリリースとなる。この『人間なのさ』というタイトルを見て、とてもHump Backらしいなと思った。「人間だもの」でも「人間なのだ」でもなく、「人間なのさ」。その発音から感じ取れる軽やかで前向きなニュアンスもそうだし、いつだって自分の手の届く日常生活圏内を歌っている彼女たちのスタンスが一言で分かる言葉だなと思う。
今作では、革新的/挑戦的な音を加えて楽曲の幅を広げるでもなく、「1stアルバムだから」という肩肘張って背伸びをした気負いもなく、ただひたすら「3人が鳴らせる範囲の音に、自分の思った言葉を乗せて、誰に合わせるでもなく自分たちがやりたいように作った」というシンプルかつ良質な音が鳴っている。既にシングルリリースされている“拝啓、少年よ”や“生きて行く”はもちろんのこと、新曲7曲全てに対してもそういった伸びやかさが感じられる。バンドにとって「メジャー」という舞台で活動するということは大きな功績であり節目でもあると思うのだが、彼女たちにとっては、いつも通りの変わらぬペースで歩いていたら、たまたま賑やかな大通りに出たなぁくらいの感覚なのかもしれない。「変化を恐れない」と意気込んで強く在ろうとするのではなく、「変化を楽しみ、受け入れていく」という彼女たちの気張らない性格が音楽として表れている。だからこそHump Backの音楽は、懐かしいのにいつも新鮮で、ドキドキしながらも安心して聴くことができるのだろう。
生きていれば、意味もなく哀しくなることもあれば不甲斐なさに泣くことだってあるし、苛立つことがあっても気付けば数分後にはゲラゲラ笑っていることもある。その不安定さこそが愛すべき「人間らしさ」なのだと思うし、その変化と真正面から向き合っていくことが大事なことなのだと思う。そして、人間である以上決して切り離せないそうした感情の起伏の数々を超える度に、そこから得た気付きや成長をシンプルに歌ってくれるHump Backの存在は、信頼できるし有難いなと思う。そんな彼女たちの芯となる部分を存分に堪能できる一枚だ。
【文:峯岸利恵】
リリース情報
人間なのさ
発売日: 2019年07月17日
価格: ¥ 2,200(本体)+税
レーベル: 林音楽教室
収録曲
01.LILLY
02.拝啓、少年よ
03.サンデーモーニング
04.コジレタ
05.生きて行く
06.オレンジ
07.Adm
08.クジラ
09.恋をしよう
10.ナイトシアター
11.僕らは今日も車の中