レビュー
CHRONICLE | 2019.09.05
3人組にはいつの時代でも活躍できるポジションがある。音楽と物語とアートがシンクロする新時代の音楽アート集団CHRONICLEは、歌詞も手がけるイラストレーターloundraw、サウンドクリエイターHIDEYA KOJIMA、ボーカルT.B.Aによる特異なトライアングルを描く3人組だ。loundrawが生み出す壮大な物語を軸に、ビジュアライズされたサウンドが多角的にエンターテインしていく姿に次世代の可能性を感じた。
ひとり一台、万能なスマートフォンを片時も離さずに愛でる時代。音楽は常にあらゆるカルチャーと溶け合える存在となった。CHRONICLEが目指す世界は映像、アニメ、ライブ、書籍、展示、ゲーム、プロダクトなどなど様々な広がりを予感させる。
CHRONICLEのホームページを開くとアニメーションが流れる。そこには「音楽から生まれる物語。ART&MUSIC&STORY“CHRONICLE” 今、はじまる――。」と書かれていた。サイトには映画の解説本のようにImage board galleryや、予告編アニメなどコンテンツがセットアップされ、物語の登場人物が解説されている。本編すべてを公開することなく断片的なキーワードを投げかけることによって空想が広がる仕掛けだ。ユニークなのは“CHRONICLEの世界で人気の音楽配信サービスサイトのUI。 《MUSIC SONARS》という企業が運営している。”という設定の一節だ。物語には音楽が密接ということなのだろう。
http://www.chronicle.city
イラストレーターloundrawは、これまで監督・脚本・演出・レイアウト・原画・動画と制作のすべてを手がけた卒業制作オリジナルアニメーション『夢が覚めるまで』や、『あおぞらとくもりぞら』などを手掛け、今年早々に、アニメスタジオFLAT STUDIOを設立したばかりだ。また人気作品『君の膵臓をたべたい』、『君は月夜に光り輝く』などの装画でも知られている時代を担うアーティストでもある。サウンドクリエイターHIDEYA KOJIMAは、オフィシャルのプロフィールに書かれていなかったので名は伏せるが、とある人気ポップ・ユニットの一員であり、DAOKO等へ曲提供を行うなど音楽シーンの最前線を切り開く新しい才能だ。ボーカリスト、T.B.Aに関しては一切情報は開示されていない。そもそも“T.B.A”というネーミング自体、一般的には“To be announced”の略であり、“後日発表”の意味を持つ。なんとも意味深だ。
そんななか、プロジェクトのキックオフとなるデビュー・シングル「宇宙」が9月4日にリリースされた(6月に配信限定リリースされていた)。DVDには、物語のヒントが点在するアニメーションの様々なコンテンツを収録。なお本作は、映像に付随するサウンドトラックのような位置付けではない。音楽が映像のクリエイティビティを刺激し、映像が音楽を広げる自由度の高い相関関係を持つ。こうして、ドラマティックなピアノによるイントロダクションから物語が加速し、宇宙を突き抜けていくかのような傑作ポップソングが誕生した。まずは本作を聴きこみながら、今後の展開を楽しみにしたい。
【文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】
リリース情報
宇宙
発売日: 2019年09月04日
価格: ¥ 1,000(本体)+税
レーベル: アリオラジャパン
収録曲
01.宇宙
02.宇宙 弾き語り ver.