レビュー
かりゆし58 | 2019.12.18
ご存じの方も多いだろうが、この「アンマー」と「オワリはじまり」は、かりゆし58にとって代表曲であり代名詞的とも呼べる楽曲たちだ。彼らの曲中、知っている曲をみなに挙げてもらったら、どちらもトップ5には入ることだろう。
この2曲が多くの人に知れ渡り、今でもフェイバリットで居続けているのは、どちらもライブを通し育て上げられた点が挙げられる。人から人へと聴き継がれ歌い継がれ、一人歩きし、みなの中でそれぞれの曲が育っていったからに他ならない。
そんな彼ら人気の同2曲がカップリングにて、レゲエ/スカ、いわゆるジャマイカン&カリビアン・アレンジの演奏の上、歌い直され、レゲエやスカの定番ともいえる7インチアナログ盤として初回生産限定リリース。合わせて各音楽配信サイトにて絶賛配信中だ。
楽曲説明をすると、「アンマー」は、母への慈しみと感謝の気持ちが投函できなかった心の手紙のように綴られた、初期から欠かさず歌われている楽曲。ライブのどんなところに入れても、一瞬で雰囲気を同歌色に染めてしまう力を持っている。対して、「オワリはじまり」は自分の今日一日を慈しみと共に振り返らせ、そしてまた明日に向けて新たな力強い一歩を踏み出させる楽曲。彼らのライブでは最終曲として歌われることも多く、最後はやはりみなと一緒に、この曲を歌わないとどうにも締まらない。
他にも、彼らにとって大切且つ想い出深い理由として挙げられるのが、各曲、彼らにとってターニングポイントとなった面。「アンマー」は当時、メロコアバンド気質の高かった彼らに、後の人間味やリスペクトを与える曲の輩出への後押しのキッカケとなったであろう曲だし、「オワリはじまり」は、自分たちの役割が人の背中を押し、更なる明日へのバイタリティを寄与すべく歌を歌い続けていくこと。そんな自覚が確立された歌のように今となっては映る。今回副題として、「TIMELESS=永遠の、時代を超越した」をつけただけあり、初出から片や13年超、片や10年近く経ちながらも、今でも色褪せず、いや、時を経て今や当時以上にいきいきキラキラと響き、歌の信憑性や込めた想い、そして自戒としても響いてくるから不思議だ。
今回の盤の内容に移ろう。ファンデーションレゲエのマナーにアレンジされた「アンマー」は、レゲエの中でも原初的なカリビアンなナイヤビンギと言われる手法で非常に軽やかに生まれ変わったバージョン。母への感謝が、手書きの手紙を贈るが如く優しく響くのはオリジナル同様。加えて、そんなこと入っていないながらも、どこか母からの「なんくるないさ」というアンサーも聴こえてくるように感じられるのも興味深い。
対する「オワリはじまり」は、ラストのハミング部にて会場全体で歌っている光景も浮かんでくるリメイク。アイリ―な雰囲気が漂うスカのラインや、マナーに沿ったアレンジも印象的なバージョンが、更に明日を楽しみにさせてくれる。オリジナルの夕焼け感に対して、こちらはどこか午前のひだまりを想起させるのも印象的だ。
そんな彼らも来年は結成15周年。ミニアルバム『恋人よ』でのデビュー日でもあった2月22日には実に2年4ヶ月ぶりの待望のフルアルバム『バンドワゴン』をリリースすることも既に発表されている。
その先鞭づけに今一度、彼らの代表曲を今の気分のアレンジで再び楽しむのも一興な今回の2曲。アレンジは違えど、これこそまさにTIMELESS! 今も変わらない、当時込めていた想いの色褪せなさと、そこに込めた各曲への想いを、今だからこそ是非あなたと一緒に楽しみたい楽曲たちだ。
【文:池田スカオ和宏】
【"アンマーTIMELESS/オワリはじまりTIMELESS“ トレーラー】
リリース情報
アンマーTIMELESS/ オワリはじまりTIMELESS[7 インチアナログ盤]
発売日: 2019年12月18日
価格: ¥ 1,500(本体)+税
レーベル: LD&K
収録曲
A面:アンマーTIMELESS
B面:オワリはじまりTIMELESS