レビュー
Who-ya Extended | 2020.04.28
耳にした瞬間に音楽が弾けた。ディストピアな風景が広がる退廃感、むせび泣くギター、鮮烈な音像が織りなす極上のサウンドセンス。どこか懐かしくも未来派を感じるスチームパンクな調べ。ずっと聴いていたくなるせつなくも狂おしいハートに直結する歌声の魅力。
2019年、フジテレビ“ノイタミナ”アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』のオープニング曲「Q-vism」を担当した、20歳のボーカリストWho-ya(フーヤ)中心としたクリエイターズユニット、Who-ya Extended(フーヤエクステンデッド)が1stフルアルバム『wyxt.』をリリースした。
デビュー曲「Q-vism」が、いきなりiTunes総合チャート1位獲得。歌詞、曲、編曲ともにWho-ya Extended名義ながら、キービジュアルのみの公開で、ライブの予定もないという謎めいた存在。ネット上にほとんど情報が記されていないという徹底ぶりだ。
注目は、アニメに引き続き劇場版『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』オープニングテーマとなった、1曲目に収録されたリード曲「Synthetic Sympathy」。ツイッターで“明確に言葉で表せないような、不自由かつ自由な選択の連続こそ、生きているという事なのか。 隠している罪や喪失感を一枚ずつ剥がすように、最後は全てを許せるように。その先にある真偽を知る為にも、今あるザイルを手離してはいけないのだ。”と独白している。未だ正体不明なそのキャラクター性、続けて駆け足で全曲を解説していこう。
2曲目、「Killing My Fear」が解き放つインダストリアル・ロック。3曲目、「Dogma-Agnostic」での泣きのミドルな展開。4曲目、「ErroЯ CØDE」ではシンセリフがビートを牽引するアッパーチューン。5曲目、「Slight light life」における静寂を切り裂くような壮大な世界観。6曲目、「Too late to know」での裏へ裏へいくオルタナティブなロック感。7曲目、「●REC ON」エレクトロ要素を含んだ歌詞がヒトクセあるポップチューン。8曲目、「G.O.A.T」は低音が効いたベースミュージック風味を取り入れたナンバー。ファンク要素も織り交ぜ、ダンサブルに楽しませてくれる。9曲目、「memorized.」は流麗なピアノサウンドが牽引するピュアな側面を垣間見せるバラード。そして10曲目、「Q-vism」はWho-ya Extendedを代表するキラーチューンだ。ドラマティックに歌で畳み掛けていきながらも途中トラップ感、カッティングギターのエッジさで魅せまくる聴き処満載のナンバー。
シューゲーザー×海外同時進行コンテンポラリーなポップロックセンスを、国内マーケットはもちろんアニメーションを通じて海外へも解き放つ逸材。感情揺さぶられる練られたキャッチーさにやられた1枚だ。
【文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】
<配信リンク>
https://lnk.to/Who-yaExtended_wyxt
リリース情報
wyxt.
発売日: 2020年04月15日
価格: ¥ 2,800(本体)+税
レーベル: SME
収録曲
01.Synthetic Sympathy
02.Killing My Fear
03.Dogma-Agnostic
04.ErroЯ CODE
05.Slight light life
06.Too late to know
07.●REC ON
08.G.O.A.T
09.memorized.
10.Q-vism