レビュー
SiM | 2020.06.17
自由奔放、変幻自在、バンドの持てる武器を総動員した大傑作である、SiMの5thアルバム『THANK GOD,THERE ARE HUNDREDS OF WAYS TO KiLL ENEMiES』がここに完成。前作『THE BEAUTiFUL PEOPLE』(2016年)以降、ライブは観るたびに進化を遂げ、今作収録の新曲も積極的にプレイされ、そこで初耳の観客の心をガッチリと捉えていた。しかし、出来上がった全13曲を聴き、驚きのレベルを超えたハイクオリティの曲調が勢揃い。ニューメタル、レゲエ、パンク、ヒップホップ、ドラムンベース、ロカビリーなどが縦横無尽に絡み合う極上のミクスチャー・サウンドを構築。バンド史上もっとも音楽的に幅が広く、豊潤な表情を浮かべた楽曲が揃っている。作品を経るごとに自己研鑽を遂げるSiMの最新型サウンドがここにある!
今作のアルバム名の和訳は「神よ、敵を倒す方法を100通り以上与えてくれたことに感謝します」という意になる。実に含みのあるSiMらしいネーミングであり、自身や作品に対する絶対的な自信が垣間見える。どの曲も凝ったアレンジを施しながら、強烈なサビが顔を出すキャラ立ち抜群の曲調ばかりだ。<di da la la,da la la>と耳に残るフレーズを配した「Devil in Your Heart」はスカのリズムを用いたノリのいい曲調。「BASEBALL BAT」は今作の中でもとりわけキャッチーで、シンガロング必至の歌メロはインパクト絶大。また、ウッドベースを用いたロカビリー風味の「BLACK & WHiTE」や、レゲエ、ラップ、ラウドを絶妙なさじ加減で絡めた「SAND CASTLE feat. あっこゴリラ」も完全に新境地と言えるナンバーだ。そして、今作を締め括る「FATHERS」はホーンを導入した感動的な1曲である。結婚して、子供が生まれたMAH(Vo)の赤裸々な心境が綴られている。<父さんが居なくなった後も 強く、生きていくんだ>(和訳)と優しいメロディで歌い上げる歌詞にはグッと来てしまった。さらに<俺はヴォーカリストで、父親で、人間だ 俺は、俺だ>(「No One Knows」の和訳)の歌詞からは一人の音楽家であり、一人の父親である自分自身を全肯定した力強さを感じる。ヘヴィネスとポップネスをマックスに封印した今作の底流には生々しいまでの人間味が脈動している。音楽的、感情面においても新たなフェーズに突入した記念碑的な一枚だ。
【文:荒金良介】
SiM - BASEBALL BAT (OFFICIAL VIDEO)
SiM - FATHERS (OFFICIAL VIDEO)
リリース情報
THANK GOD, THERE ARE HUNDREDS OF WAYS TO KiLL ENEMiES
発売日: 2020年06月17日
価格: ¥ 2,500(本体)+税
レーベル: EMI Records
収録曲
01.No One Knows
02.SiCK
03.Devil in Your Heart
04.HEADS UP
05.BASEBALL BAT
06.Smoke in the Sky
07.BLACK & WHiTE
08.Crying for the Moon
09.YO HO
10.CAPTAiN HOOK
11.SAND CASTLE feat. あっこゴリラ
12.BULLY
13.FATHERS