レビュー
Hump Back | 2020.08.19
Hump Backにとって3枚目となるシングル「ティーンエイジサンセット」が、8月19日にリリースされた。
魅力的なバンドの音楽に触れた時、ふと、若い時に出会っていたら、もしかしたら自分の何かが変わっていたのかもしれないなぁと思うことがある。将来なんてろくに考えず、好きなことにだけ全精力を注いで突っ走っていた10代。大人にも友達にも相談できない自分なりの悩みを抱えて、どうすることもできずに唇を噛んで泣いたあの頃。とはいえ10代だろうと30代だろうとやっていることに本質的な大差はないのかもしれないが、過ぎ去りしあの時にこんな音楽があったら嬉しかっただろうなと、Hump Backの曲を聴くと思える。表題曲の「ティーンエイジサンセット」は私にとってまさにそんな曲だったし、今はもちろん、過去の自分にも聴かせてあげたくなった。
明るくパワフルな純真ロックサウンドが追い風となって背中を押してくれるが、決して押し付けるようなことはしない。<悲しい街には虫が湧き/雨続きTシャツは生乾き/こんなとき/隣の人に優しくできたらとってもステキね>という部分がまさしくそうだが、世界中の人ではなく「隣の人」、優しくしよう!ではなく「優しくできたらステキ」だと彼女たちは歌う。言葉の中に優しい余白があるから、こちらの心にも素直に響いてくるのだと思う。そしてそういった優しさは「閃光」の中の<ねぇ、こんな夜は君と君の犬を抱き締めたいよ>というフレーズからも感じ取れる。大好きな君と、そんな君が大事にしている犬を大切にできれば十分なのだ。何もかもを一気に抱えようとする必要はなくて、自分の両手が伸ばせる範囲の中で人を想い合えることができたらいいよね、と伝えてくれているような気がする。
そして3曲目の「また会う日まで」は、新型コロナウイルス感染防止のために行われた活動自粛期間以前にレコーディングされた楽曲ということで、優しく穏やかなバラードチューンが色々と荒みがちな心の起伏を落ち着かせてくれる。この曲は4月30日から6月15日まで期間限定で先行配信されていた楽曲でもあり、「こんな事態だからこそ、真っ先に音楽を届けよう」という彼女たちの気持ちが伝わってきて嬉しかった。
世界が大きく変わっていく中でも、自分が大事にしていくべきもの/大事にしたいと思えるものは何なのか?――手と目が届く距離にある守るべきものを見失わないようにしたいと、改めて気付かせてくれる作品だ。
【文:峯岸利恵】
Hump Back - 「ティーンエイジサンセット」Music Video
リリース情報
ティーンエイジサンセット
発売日: 2020年08月19日
価格: ¥ 1,000(本体)+税
レーベル: 林音楽教室
収録曲
01.ティーンエイジサンセット
02.閃光
03.また会う日まで