レビュー

Saucy Dog | 2020.09.07

 どんな石でも磨けば光る、というが、元からキラキラの石をさらに丹念に磨けば、なおさら輝く宝石になるだろう。Saucy Dogの4作目となるミニアルバム『テイクミー』はそういう作品だ。メロディ、アレンジ、楽曲の構成、そして歌詞。大事なものが何ひとつこぼれ落ちないように、丁寧に紡ぎ、つなぎ合わされた曲たちが、このミニアルバムには集まっている。すでに配信でリリースされている「シーグラス」「結」「BLUE」はもちろん、新曲がすばらしい。

 温かなギターリフとゆったりとしたリズムが終わった恋への切ない思いを優しく包み込む「今更だって僕は言うかな」、アッパーなロックアンサンブルに乗せて自分で自分を愛する決心を歌う「雷に打たれて」、自由に飛び回るようなメロディラインが平凡な毎日に小さな希望の灯をともすような「猫の背」。それぞれの楽曲がそれぞれの風景を柔らかなタッチで描き出し、少しずつ僕たちの毎日を変えていく――聴いているとそんなイメージが浮かぶ。それは外でもなく、歌詞を書く石原慎也(Vo/Gt)の思いだろう。どうしようもないことがたくさん降りかかるこんな毎日のなかで、何を抱きしめ、何を感じながら生きていくのか。『テイクミー』に歌われているのは、そんなリアルである。

 Saucy Dogというバンドの最大の魅力は、どんなときでも自分たちの「等身大」と向き合い続けてきたところだ。石原は「実体験からしか歌詞を書けない」ということを常々言っていて、それはこれまでの作品でも、そして今作でも徹底されている。石原が見たこと、感じたことが繊細な言葉遣いとともにここには記されている。だが、このミニアルバムはそこで閉じていない。どの曲も、どのフレーズも、「君もそうだろ?」と投げかけてくる。それはつまり、彼らにとっての「等身大」が、より広く、普遍的な視界を手に入れたということだ。

 たとえば「雷に打たれて」の<僕は僕でしかないし 数え切れない失敗も 誰かにとっての汚点でも 全て愛してみせるよ>、あるいはたとえば「猫の背」の<だって繰り返すだけの毎日なら 要らない 変わりたい 誰にも 邪魔はさせない>という「決意」。自分自身の毎日のなかにある感情の機微を見つめながら、同時にぐっと前を向く強さが、今作をこれまでの作品とは違うものにしている。だから、このミニアルバムはメッセージになっているのだ。Saucy Dogから今を生きる人々への、ひとつの態度表明。すべてを曝け出して、彼らは新たなフェーズに向かっている。

【文:小川智宏】




Saucy Dog「film」Music Video <4th Mini Album「テイクミー」2020.9.2 Release>


Saucy Dog「シーグラス」Music Video <4th Mini Album「テイクミー」2020.9.2 Release>


Saucy Dog「結」Music Video <4th Mini Album「テイクミー」2020.9.2 Release>


Saucy Dog 4th Mini Album「テイクミー」トレーラー

リリース情報

テイクミー

テイクミー

発売日: 2020年09月02日

価格: ¥ 1,800(本体)+税

レーベル: A-Sketch

収録曲

01.シーグラス
02.今更だって僕は言うかな
03.雷に打たれて
04.結
05.film
06.BLUE
07.猫の背
<ボーナストラック>
08.寝ぐせ
※ボーナストラックはCDのみに収録

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