レビュー

SUPER BEAVER | 2020.10.21

 SUPER BEAVERが10月3日に日比谷野外大音楽堂で行った「SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP~ラクダビルディング&ビルディング~」の余韻がいまだに抜けない。彼らのライブはいつも最高だが、新型コロナウイルスの感染拡大により、社会全体が閉塞感に覆われた時代において、なおさら楽曲に託した普遍的なメッセージに鼓舞された人が多かったに違いない。

 その日比谷公演で先駆けて披露されたのが、メジャー再契約第2弾シングル「突破口/自慢になりたい」だ。ライブを観た方はご存知だと思うが、2曲共に既発の名曲群に負けないパワーを発揮し、耳馴染みのない新曲にもかかわらず、大きなリアクションを巻き起こしていた。一聴で楽曲に感情移入できるのはビーバーの真骨頂と言えるものだ。

 まずTVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』第2クール オープニングテーマに抜擢された「突破口」。藤原”32才”広明(Dr)の手数の多いパワフルなドラムをエンジンに、柳沢亮太(Gt)の切れ味鋭いギターフレーズ、上杉研太(Ba)の躍動感溢れるベース・ラインが折り重なり、暗闇を切り裂くような疾走感溢れるナンバーに仕上がっている。冒頭から渋谷龍太(Vo)は<今をやめない やめない やめない>と歌い上げ、とりわけ<正々堂々 「今」と今向き合って 堪能するよ現実 酸いも甘いも全部>の歌詞にはバンドの生き様が刻まれているようだ。目の前の出来事に背を向けず、楽しいことも辛いことも真正面から向き合って、光明を追い求める愚直な姿勢に胸を打たれる。その姿勢にウソがなく、凄まじい説得力が宿るのは彼ら自身がそうやって道を切り拓いて、今日に至っているからにほかならない。

 もう一つの楽曲「自慢になりたい」。最初にこの曲名を見たときは少なからず驚いた。世の中には星の数ほど様々な曲名が溢れている。けれど平易な言葉を用いながら、これと似た言い回しの曲名が過去にあっただろうか。もはやここには自我やエゴはなく、他者(あなた)から見て、自分がどうありたいのか。それを赤裸々なまでに直截的な言葉(曲名)で表現している。さらにサビで<僕は あなたの 自慢になりたい>と堂々歌い上げている。人間は常に周りにいる友達、仲間、恋人、家族など、自分を見守ってくれる誰かの存在があって、人一倍頑張ろう!という気持ちが芽生えてくる生き物。誰かの期待に応える感情こそが生きるパワーに繋がるんだと伝えてくれる楽曲。人と人との関係性をこんな切り口で表現してくれるのはビーバーだけかもしれない。聴いているだけで涙腺が緩んでくるナンバーである。

【文:荒金良介】

リリース情報

突破口 / 自慢になりたい

突破口 / 自慢になりたい

発売日: 2020年10月21日

価格: ¥ 1,727(本体)+税

レーベル: Sony Music

収録曲

01. 突破口
02. 自慢になりたい

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