発売初週に約94,000枚を売り上げ、2月8日付のオリコン週間アルバムランキングのトップへ花を咲かせたのは、1月27日にリリースされた、ころんの1stフルアルバム『アスター』。夕空を前になびく青い髪色が印象的なイラスト姿の男の子は、2016年6月から、楽曲投稿、動画配信を中心に活動する6人組エンタメユニット「すとぷり」の一員として脚光を浴びるエンターテイナー・ころん。音楽クリエイター、ゲーム実況者、歌い手など、持ち味の異なる6人から成る「すとぷり」は、2020年12月に、「Yahoo!きっず　検索ランキング2020」人物ランキング部門で1位を獲得、3rdアルバム『Strawberry Prince』が、日本レコード協会より「2020年11月度プラチナディスク」に認定されるなど、10～20代からの注目度が最も高いユニット。メンバー間でも、特筆してゲーム実況者の側面を持つころんは、ハイテンションでコミカルにプレイするゲーム実況をはじめとした動画を毎日投稿。2019年の自身の誕生日からは毎年作詞を手がけたオリジナル曲も公開し、音楽制作にも意欲的だ。なにより、最大限におちゃらけたキャラのころんが多くの人から愛される理由のひとつは、自分に素直なことにある。

そんなころんを的確に描き出したのが、『アスター』だ。鳥屋茶房、TOKOTOKO（西沢さんP）、ピノキオピー、みきとP、蝶々Pなど著名ボカロPによる書き下ろし曲を含めた14曲を収録した『アスター』のタイトルが意味するのは、ころんのイメージカラーである青色の花「アスター」の花言葉の“信頼”、“あなたを信じているけど心配”。

うねるギターのサウンドにぴょんぴょんと連呼する声が重なるロックチューン「Mad Hat Rabbit」や、恋が弾けるリズミカルな「きゅんですきゅんです」、さところ（さとみ(すとぷり)参加曲）によるほろ苦い恋を歌う「恋はJust In Me」、「すとぷり」6人をボーカルにあてたダンスミュージック「パンピじゃないのよッ!!」からは、ハイテンションな声でいてよく通るころんの真っ直ぐな歌声が次から次へと飛び出す。一方で注目したいのは、ころんが作詞を手がけた3曲。

＜（どんなに転んでも）／何度だって這い上がるさ／（そうさ僕たち）／敗北ヒーロー＞「敗北ヒーロー」

敗北して初めてヒーローになれると称えるピアノロックチューン「敗北ヒーロー」、同曲と地続きの作詞曲「敗北の未来地図」、高速デジタルサウンドが織り成す「アスター」を通して、自身とリスナーの日常に寄り添う歌詞を丁寧に書く。また、『アスター』収録曲のなかでも、ころんの心情にリンクするのが、＜笑顔になる為だけに生まれて来たんじゃ無い／きっと泣いて怒ってほら湧き上がるコスミックムーズ＞というフレーズが印象に残る「コスミックムーズ」。「すとぷり」の人気度が加速するのに連れて、訪れる不安や葛藤を経験しているころんの姿を鮮明に映し出した同曲は、苦しみがあるからこそ、物語は開ける、未来は勝利するという、ネガティブを味方に変える柔軟なころんのスタンスが表れており、『アスター』を煌びやかに彩っていく。

＜手に取った花が心に宿った／でもそれはふいに不自然に変わる／見知らぬ人の絶えまない嘘に／気づけば黒く傷んで枯れ果てた＞「アスター」

出会いの数だけ、良くも悪くも自分のストーリーが膨らんでいく。そこに心配は尽きないが、転んだとしても周りを信じて立ち上がるころんを象ったエンカレッジングな1枚が、『アスター』だ。

【文：小町碧音】