レビュー
daisansei | 2021.03.01
daisansei=大賛成。ポイントは“大”である。ただ“賛成”と言うと議論っぽくて少し堅苦しいが(“反対”も連想してしまうし)、“大”がつくと、賛意がほんの少しのユーモアをまとって、ふわりと地表から浮き上がるような感じになる。
安宅伸明(Gt/Vo)のソロユニットだった“大賛成”に脇山翔(Key)が加わって本格始動したのが2019年5月。早くも翌月には初EP『箱根』、12月には2作目『ショートホープ』を配信リリースした。2020年に入ってから“daisansei”に改称し、4~7月には4ヵ月連続でデジタルシングルを発表。11月にはサポートメンバーだった小山るい(Gt)、フジカケウミ(Ba)、川原徹也(Dr)が正式加入し、初の全国流通盤となる1stアルバム『ドラマのデー』を11月11日にカセットテープでリリース、11月25日にはCDでリリースした。
タイトルもカセットというリリース形態も、先述したほんの少しのユーモアと軽快さを体現している。その印象は音を聴けばさらに確かになる。安宅のとぼけた味のあるボーカル、浮遊感の強いメロディ、行き先を決めない散歩のようなのんびりしたテンポ。「体育館」や「花束」は意外に速いが、印象はあくまでゆったりしている。くるりやはっぴいえんどに影響を受けたと聞けば納得がいくが、僕は志村正彦が歌っていた時代のフジファブリックをちょっと思い出した。
バンドのテーマソングというかアルバムの開会宣言のような、エレキ弾き語りの短い曲「賛成するとき見える鳥」から、ラップで始まる「ラジオのカセット」への流れでグッと引き込まれる。時計の音にアコギが同期する「便箋」は3人で歌を掛け合うし、「しおさい」には語りが挟まり、“あなたが”と“花束”で押韻する「花束」は音数も多い。コーラスや女性ボーカルの使い方もうまい。あれやこれやと盛り込んであるのだが、不思議と情報過多な印象はない。空間を広めにとり、ひとつひとつの要素の隙間を空けてある感じだ。
中でも「しおさい」はハイライトと呼べそうな風格を備えた曲である。メロディに絡むフリーキーなギターとダイナミックなドラムを筆頭に、アンサンブルの力感が伝わるし、<輪郭も声も少しだけずれてるから重ならない>ふたりが海辺で過ごすわずかな時間に去来する思いを閉じ込めた歌詞のストーリーも、日本的な青春のくぐもった輝きがある。初めて触れた彼らの音楽に、僕も“賛成”じゃなく“大賛成”を表明したい。
【文:高岡洋詞】
リリース情報
急須
発売日: 2021年02月17日
価格: ¥ 255(本体)+税
レーベル: ミニミニラジコンレコーズ / WASIKI
収録曲
01.急須
リリース情報
ドラマのデー
発売日: 2020年11月25日
価格: ¥ 2,037(本体)+税
レーベル: Eggs / ミニミニラジコンレコーズ
収録曲
(カセットテープ) 2020年11月11日
(CD) 2020年11月25日
01.賛成するとき見える鳥
02.ラジオのカセット
03.北のほうから
04.体育館
05.便箋
06.しおさい
07.花束 (Alternative)
08.ざらめ、綿飴
09.ショッポ
10.アンテナ (カセットテープのみボーナストラック)
お知らせ
「急須」
https://linkcloud.mu/7c9b6861
『ドラマのデー』
https://linkk.la/8uBUdCq6o5kuCXp63rnKH0
■ライブ情報
Live humanity #01
04/02(金)東京 渋谷SPACE ODD
w/ Boiler陸亀 / MOP of HEAD / Owl / SOMOSOMO
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。