レビュー
-真天地開闢集団-ジグザグ | 2021.03.03
アーティストたるもの、やはり佇まいには独特の世界観を纏っていてほしいものだ。思わず「何これ?」と振り向かせるインパクト……つまりはカリスマ性である。しかも、そのカリスマ性に、確固たる美意識や表現力が加わっていたら? そんな条件の揃ったアーティストに出会えば、思わずもっと知りたくなってしまうだろう。折しも2020年はコロナ禍に襲われ、ライブで気になるアーティストに出会うという機会が激減してしまった。そんな中、ネット上でジワジワ注目され始めていたのが-真天地開闢集団-ジグザグ(これで「しんてんちかいびゃくしゅうだんジグザグ」と読む)だ。
とはいえ、彼らは決して昨日今日生まれたバンドではなく、2016年から活動をスタートさせている。ライブを“禊”、観客を“参拝者”と呼び、徹底したコンセプトでパフォーマンスを展開してきた。ダーク・ファンタジーのアニメから飛び出したような雰囲気のメンバーは命(みこと・Vo/Gt)、龍矢(りゅうや・Ba)、影丸(かげまる・Dr)の3人。トリオ編成というシンプルな編成ながら、多様な音楽性を持ち、見た目のイメージをいい意味で裏切ってくれる楽曲も多い。前置きが長くなってしまったが、ここで少しでも彼らが気になった人のために、バンドの最新音源、5曲入りの音源集『ハキュナマタタ』を紹介しよう。
1曲目に飛び出す「Requiem」は、ゴリゴリのベースイントロで始まり、そこからエモさが爆発するハードチューン。だが、2曲目の「コノハ」では曲調が一変。人気アニメの主題歌なみにキャッチーなメロディーが炸裂する。疾走感のあるテンポで、ライブ……いや、禊では大いに盛り上がる図が想像できる。
3曲目の「Guru」では、シリアスなテーマを激情的なサウンドに乗せ、再び熱量のある曲を聴かせてくれる。そして、猫好きの心を鷲掴みにした4曲目の「拙者忍者、猫忍者。~木天蓼三毛蔵と町娘おりん~」では、まさかのコミカルな一面をフィーチャー。超アッパーなブチあげサウンドに<拙者忍者、猫忍者。>という中毒性のあるフレーズを連呼するポップなナンバーで聴き手を煙に巻く(子供に人気が出そうな楽曲だ)。躊躇なく変貌していくスタイルで、「Requiem」からの振り幅がたまらない。
シメとなる5曲目はアコギで切々と歌われる「キーウィのさんぽ道」。物悲しい旋律に物悲しい歌詞だが、実は微妙に不思議なテーマだったり……というヒネリも効いていて、聴きながらニヤニヤしてしまった。
各曲のバラバラ具合は相当なのだが、この個性ある曲たちを繋ぎとめているのは、どの曲にもベースに“和”へのこだわりが透けて見える部分だと思う。ちょいちょい曲に挟まれる雅やかな和音階や音色、そして日本語にこだわった歌詞には、全楽曲の作詞作曲に加え、バンドのトータルプロディースを手掛けるボーカル・命のセンスが光っている。視覚、聴覚、そして大脳直撃のワードセンスに、溢れる遊び心。この融合を堪能すべく、一度は禊を体験してみたいものだ。たとえ禊が難しくとも、音源を聴くだけでも彼らのエンタメ魂はしっかり届くはず。
2021年、ぜひ-真天地開闢集団-ジグザグという難解な名前を覚えておいていただきたい。何かご利益がある……かも?
【文:海江敦士】
リリース情報
ハキュナマタタ
発売日: 2020年11月25日
価格: ¥ 1,819(本体)+税
レーベル: CRIMZON
収録曲
01.Requiem
02.コノハ
03.Guru
04.拙者忍者、猫忍者。~木天蓼三毛蔵またたびみけぞうと町娘おりん~
05.キーウィのさんぽ道