ステージ上でのYUKI自身をイメージした“最高、最大級”のアルバムが完成!
YUKI | 2011.08.22
前作『うれしくって抱きあうよ』以来、約1年半ぶりとなるアルバム『megaphonic』が、YUKIから届く。「最高の音」「最大級の音」という意味を持つこの作品を、彼女は「自分の持っているものを、最大限に明るく、いかにハッピーに届けられるかを考えながら作っていた」のだという。シングル曲「2人のストーリー」「ひみつ」「Hello!」を含む全13曲には、今YUKIが伝えたい思いが詰まっている。
- EMTG:YUKIはここにいるから、大丈夫。私はどんな時でも歌っているよ、と宣言しているようなアルバムですね。
- YUKI:今は全てのミュージシャンが、音楽の役割というものを考えていると思うんです。私自身、震災以降いろいろな事を考えました。その中でひとつ気づかされた事は、自分にうぬぼれてはいけないということでした。音楽なんて、衣食住が足りてこそのものだと思ったし、音楽を大事にしてくれる人はたくさんいるけれど、音楽が必要ではない人だっている。でも、辛い状態に身を置いた時に、人間の中から生まれてくるのは想像力だと思ったんですね。見えないものを見るような感覚が音楽にはあると思いました。だから私は「音楽の中においで」と思ったんです。そういう気持ちになれるまでには時間がかかったけれど、今、音楽でおもしろいものを作れなくてどうすると思ったし、まずは自分自身がへこたれないように体を鍛え、健康を保ち、平常心を保てるように心を強くしなくてはいけないと思ったんですよ。
- EMTG:震災前と震災後では新しいアルバムに託す思いが変わった?
- YUKI:収録曲のほとんどの歌詞は、1番を震災前、2番を震災後に書いたので、(もし震災がなかったら)別の落としこみ方になっていたのかもしれないですね。でも、アルバム制作を始める前から、漠然とですけど、新しいアルバムは明るくて力強いアルバムにしたいと考えていたんです。
- EMTG:なぜ、そんなアルバムを作りたかったのでしょう?
- YUKI:私の言霊は自分でも強いと思っているので、自分の言葉ですら自分が引きずられてしまうんです。だから、普段からなるべく悪い言葉は使わないようにしているし、悪いバイブレーションを出さないように日々気を付けているんですね。批判的になったり、敵を自分の中で作って文句を言う時間があったら、私はご機嫌さんになりたい。ご機嫌になれば、きっと周りにいる人にもそのご機嫌が伝線していくんです。不機嫌に全くならないかといったらそれはウソになりますけど、私はなるべく朗らかに、はつらつと、颯爽といたい。良いバイブレーションを届けることで、何かが良い方向に変わっていく。そういうことを、いかに音楽でできるかを考えていたので、明るくて力強いアルバムにしたいと思ったんだと思います。
- EMTG:megaphonicには「最高の音」「最大級の音」という意味があるそうですね。
- YUKI:明るくて力強いアルバムには、普段の私ではなくて、ステージ上の私というイメージがあったんですね。ステージ上の私はいろいろな魔法が掛けられて、私一人ではできないこともできるし、小さな声がどんどん大きくなって、もっともっと響かせることができる。焦点は、今の自分が楽しいかどうかにあるけれど、私は決して自分のためだけに歌っているのではなく、私が歌うことで誰かが楽しくなるのならば、いくらでも私は歌いたいと思っています。だからこそ真剣に笑い飛ばすこと、気持ちを強く持つことを、私は歌でやりたい。そういう思いから、“強い”とか“大きい”というキーワードが自然と生まれてきました。みんなのパワーをもらって、ステージ上で大きくなっている私をひと言で表す言葉は何だろうと探したら、megaphonicという言葉が出てきたんですよ。
- EMTG:今作には80年代のハード・ロックの要素を取り入れたバンド・サウンドがあったり、エレクトロ・ポップやウエスタンがあったりと、いろんなタイプの曲が収録されました。
- YUKI:自分としては、もう少し去年のツアーのような繊細な感じを続けて行くのかと思っていたんですけど、実は『うれしくって抱きあうよ』を制作していた後半の頃には、ギターの音が恋しくなっていたんです。大きな会場にギターの音を思いっきり響かせたいと思っていたので、当初はギター・サウンドばかりのアルバムにしようかと思っていたんですよ。でも、まだ可能性があると思ったし、きっと体をいろいろな方向に動かしたくなってしまったんでしょうね(笑)。
- EMTG:歌詞もいろんな可能性を広げていますね。
- YUKI:「2人のストーリー」で男性目線の歌詞を書いたり、「あの娘になりたい」では、ちょっとオタク系の妄想女子を主人公にしてみたりして、設定をいろいろなところに飛ばしてみました。そうすることで歌詞は面白い方向に進み、変わっていくと思ったんです。今まで使ったことのない言葉を使ったのも、自分の歌詞の感じをどんどん変えていこうと思っていたからなんです。でも、私が伝えたいことの基本にあるものは、どんな書き方や表現を使っても、昔と変わっていないんだということを再確認しましたね。
- EMTG:その基本的な部分というのは?
- YUKI:私の楽観主義な部分です。たとえば、「ひみつ」の歌詞は、最初ドロドロした恋愛関係や女性のイヤな部分を描きたいと思っていたにもかかわらず、楽観主義な私の中からはそういう部分が出てこなくて(苦笑)。でも、挑戦してみるということが大事だったんです。「楽しいから笑うのではなく 笑うから楽しくなる」のようなストレートな歌詞や「集まろう for tomorrow」というタイトルも、今までのYUKIの美意識の中では絶対にあり得ないものだったので、出てきてしまったときには自分でもビックリして、大笑いしてしまったんです(笑)。でも、今は“明日のために”と歌えるし、歌いたい。自分が自分にNGを出していたものが、今はどんどんなくなっていますね。
- EMTG:10月からは全国アリーナ・ツアー「YUKI tour“MEGAPHONIC”2011」がスタートします。
- YUKI:思いっきり、自由に楽しんでもらえるライブになると思います。ずっとYUKIを感じていてもらえるライブにしたいので、余計な演出はありません。ライブが終わったあとも、みんなに笑顔でおうちに帰ってもらえるような、そんなライブにしたいです。
【 取材・文:松浦靖恵 】
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