レビュー
YUKI | 2012.08.29
アーティストがキャリアを積み重ねて行く中で、ひとつのポイントになってくるのが「年齢」ではなかろうか。作品性やライヴなどでの演出はもちろん、アーティスト本人の存在=表現者としてのスタンスにも関わって来る、大切なポイントであり、永遠のテーマでもある。特に女性アーティストの場合、特に重要なポイントになってくると、私は思っている。なぜなら、女性アーティストの場合、結婚、出産など“女性としての立場”の変遷(上書きと言ってもいいかもしれない)があるからだ。この “女性としての立場”を、上書きすることなしに、追加していっているのが、YUKIというアーティストではなかろうか。しかも、無理なく。そして、これっぽっちの違和感もなく。ここが、彼女のアーティスト性に直結する個性にもなっている。
YUKIのニューシングル「わたしの願い事」は、ピュアなメロディーが特徴のミディアム・チューンだ。映画「ひみつのアッコちゃん」の主題歌ということもあり、少女性が煌めく、極上のポップスである。しかしながら、その歌声は、母性に通じる懐の深さも。この少女性と母性の両立が、この曲の魅力&YUKIの人間力。楽曲全体を通した浮遊感も特徴。少女性と母性を天秤にかけたような“永遠の揺れ”をイメージさせるサウンドだ。こういう、耳を凝らすとじつはアグレッシヴなアプローチの楽曲を、キャッチーなポップスに昇華してしまうあたりこそ、YUKIの底力。今回も、お見事、である。
まるで、蕾がゆっくり花開くように……今日よりも煌めく明日=未来をイメージさせる、そんな強い意志が、軽やかに飛び跳ねる1曲である。
【文・伊藤亜希】