困難も一緒なら乗り越えられる。まるでキャラバンのようなナオト・インティライミの新作

ナオト・インティライミ | 2012.04.18

 その人なつっこい人柄同様、ナオト・インティライミの歌は、誰の心にもすんなり入り込んでくる。4月18日にリリースされるニューアルバム『風歌キャラバン』にも、思わず鼻歌まじりに歌いたくなるメロディの名曲が多数収録されている。だが、それらの癒しソングだけが彼のすべてではない。エレクトロなダンスチューンもサラリとこなすような、攻めのナオト・インティライミもアルバムには詰まっている。今回はなるべく各収録曲について細かく語ってもらったので、制作の裏側を感じながらインタビューを読んでいただこう。

EMTG:アルバムタイトルの『風歌キャラバン』って、旅のイメージがあるナオト・インティライミさんらしいですね。
ナオト:“キャラバン”って言葉が、数年前から何となく自分の中にはあって、その存在がだんだん真ん中にきた感じです。アルバム制作の準備段階では、完全に“キャラバン”の意識が大きくなってました。列をなして、大勢で旅をするイメージですね。旅をしていくと、日照りが強かったり過酷な状況があったりするわけだけど、みんなで水を分け合ったり、歌をうたいながら進めば、苦難も乗り越えていけるんじゃないかと思うんです。このアルバムも、そんな意味を持つ作品になればいいなと。
EMTG:収録曲に「はなうたキャラバン」という曲がありますが、今言っていただいたイメージにすごく近い気がします。
ナオト:そうですね。これはアルバムを象徴する曲だと思います。
EMTG:かと思うと、アルバム1曲目の「Yeah!」は、エレクトロなダンスチューンだったりして、ビックリしました。こんな要素もあったのかと。
ナオト:全然普通にありますよ(笑)。1曲目にしたのは、たぶん最初に聴いてほしかったからかも。特に奇をてらったわけでもないし、自然に自分の中から出てきた音楽なんですよ。アルバムだと本来のナオト・インティライミを見せられるんで、ありがたいですね。シングルやCMソングを耳にして、それでナオト・インティライミを知ってくださる方が圧倒的に多いと思うんだけど、シングルだと情報量も少ないですから。
EMTG:曲が並ぶと、いろんなアーティストの方とコラボされているのも目立ちますね。「起志快晴」と「こころことば」では、スキマスイッチの常田真太郎さんと歌詞を共作されてますが。
ナオト:シンタくん(=常田)はずっとサッカー仲間で、“いつか一緒にやろう”って言っていたら、まずはデビュー曲(=「カーニバる?」)で共作が実現して。その後も作詞に協力してもらったりしてるんですが、今回もこういう曲にシンタ君のエキスが入ったら面白いだろうなと思ったんです。
EMTG:「起志快晴」は言葉遊びが面白いなと思ったんですが、常田さんとはどうやって作業を進めていったんですか?
ナオト:基本メールと電話で。“こんな感じで書きたい”ってやりとりをするくらい。10?20回くらいやりとりすると、歌詞になります(笑)。まさにサッカーのパス交換をしている感じで書き上げました。自分以外の人と歌詞を書く作業は楽しいですね。
EMTG:「こころことば」はいかがでした?
ナオト:難しい言葉を使わず、わかりやすく気持ちを伝えたらと思って書きましたね。今、少しずつ自分の音楽がいろんな人に聴いてもらえるようになったり、関わってくれるスタッフが増えたりっていうことに対して、単純に“ありがとう”って歌い上げるんじゃなく、もっと身近な感覚で“ありがとう”が言いたくて。それで、音も手作り感のある音でぬくもりを表現したくて、楽器も全部自分で演奏したんです。
EMTG:いいですね。そして、そんな暖かみのあるお話のあとに(笑)、6曲目の「Let me..…」についてお聞きしたいんですが……これ、かなり色っぽい曲に仕上がってますね!
ナオト:男の本能チューンですね(笑)。ただのいい人、面白い人で終わりたくはないですから(笑)。”ナオト・インティライミはただ爽やかなだけじゃないんだよ”っていう部分も提示していかないとね。それも含めてのナオト・インティライミだから。
EMTG:そして、「トリステーザ」はJAMOSAさんとのコラボですね。
ナオト:フィーチャリングのコラボ自体が初めてだったんで、すごく新鮮にやらせていただきました。曲も書かせてもらったんですけど、人にめがけて作曲するというのは、自分にめがけて書くのとはちょっと違うんですよね。違う角度で制作するいい機会でした。
EMTG:あと、全国高校サッカーの応援歌になった「Message」も印象的ですね。サッカー好きにとっては、たまらないタイアップだと思いますが。
ナオト:ホントに自分自身も高校時代は、国立(競技場)のピッチを目指してましたから。でも、違う形で夢が叶ったかな(笑)。
EMTG:面白かったのは、曲の前半ではリアルにボールを追っている世代、後半ではそこから10年くらい経った“自分”に向けて内容が分かれているところなんですが。
ナオト:実はこのお話をいただいた時、自分が高校時代にガチンコでサッカーをしていた時の映像を見返してみたんです。
EMTG:よく残ってましたね(笑)。
ナオト:そうですね。しかも、それがひたすら熱かったんです(笑)。もちろん今もその熱さは変わってないと思うけど、何か置いてきてしまったものもあるんじゃないかと思って。それで、当時の“彼”に教えてもらったメッセージを1番の歌詞に書いたんです。でも、そこで思ったのは、当時の“彼”にも伝えたいメッセージも出てきたんですよね。それで今度は2番の歌詞を今の自分の目線で、昔の“彼”に対して書いたんですよ。
EMTG:特にスポーツをやっていなくても、今の自分達に響く言葉ですよね。一転して「Hello」はすごく優しい曲だし。
ナオト:これは、震災直後に宮城の友だちといろいろ話をしていて、その電話のやりとりから生まれた曲なんです。
EMTG:意外な曲、優しい曲、熱い曲ありの中、アルバムの最後は「愛してた」で、しっとり落ち着かせましたね。これは、好きなのに別れを選択するふたりの歌ですが。
ナオト:進学、就職が決まって、今まで一緒だったのに別々の街で暮らすようになる……まぁ、遠距離恋愛っていう選択肢もあるんだろうけど、それが相手のためかと考えたら違うんじゃないか、好きだけど離れた方が相手のためなんじゃないか……そんな切ない気持ちを書きました。過去形のように「愛してた」で書いてはいるんですが、実はこれまでも愛してきた……そして今なお愛しているという現在完了の瞬間描写なんです。
EMTG:深いですね。さて、アルバム発売後には初のホールツアーも予定されているそうで。最後に、ツアーへの意気込みをきかせてください。
ナオト:初のホールツアーでもあるし、今まで行ったことのない北海道や東北、北陸といったところをまわるので、すごく楽しみです。僕がいつもライブで言うのは、誰もがうまくいかないことや悲しいこと、辛いことを抱えながら生きているわけだけど、このライブに来てくれている時間だけは、その気持ちを解放して夢中になれる空間を作ってあげたいんです。だって、ただ聴きに来たわけじゃなく、一緒に歌いに来たんだろ、騒ぎに来たんだろって。だから、お客さんはどんどん巻き込みますよ、僕は(笑)。いわば寄っかかり型ですから(笑)。でも、“このライブに来たら間違いない”っていう空間にしていきたいですね。

【取材・文:海江敦士】

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リリース情報

風歌キャラバン(初回盤)

風歌キャラバン(初回盤)

2012年04月18日

ユニバーサル・シグマ

ディスク:1
1. Yeah!
2. 君に逢いたかった
3. ガムシャララ
4. 起志快晴
5. Que sera sera
6. Let me…
7. トリステーザ
8. Message
9. はなうたキャラバン
10. Hello
11. こころことば
12. 愛してた
ディスク:2
1. Hello(MV)
2. 君に逢いたかった(MV)
3. 愛してた(MV)
4. Brave (Live at 両国国技館)
5. 今のキミを忘れない (Live at 両国国技館)
6. タカラモノ ~この声がなくなるまで~ (Live at 両国国技館 )

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お知らせ

■ライブ情報
「風歌キャラバン」発売記念 ミニライヴ&握手会
2012/04/18(水)阪急西宮ガーデンズ 4Fスカイガーデン・木の葉ステージ
2012/04/19(木)アスナル金山 明日なる!広場
2012/04/20(金)ダイバーシティ東京プラザ フェスティバル広場

ナオト・インティライミ TOUR 2012 風歌キャラバン
~キャラバンだけど知らない人にはついて行っちゃダメ!絶対!~

2012/05/17(木)柏市民文化会館
2012/05/18(金)静岡市民文化会館 大ホール
2012/05/25(金)サンポートホール高松
2012/05/27(日)広島ALSOKホール
2012/06/01(金)新潟LOTS
2012/06/03(日)北海道ファクトリーホール
2012/06/08(金)福岡サンパレス
2012/06/10(日)鹿児島 宝山ホール
2012/06/15(金)名古屋センチュリーホール
2012/06/17(日)仙台市民会館
2012/06/22(金)オリックス劇場(旧厚生年金会館)
2012/06/23(土)【追加公演】オリックス劇場(旧厚生年金会館)
2012/06/29(金)神戸国際会館 こくさいホール
2012/06/30(土)岡山市民会館
2012/07/05(木)東京国際フォーラム ホールA
2012/07/06(金)東京国際フォーラム ホールA

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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