7月10日……よくよく見れば“7・10”で“ナオト”の日。この絶妙な日に、ナオト・インティライミが“日本武道館LIVE on ナオトの日”を行った。アリーナにセンターステージを設置し、なんと客席は360度解放で、オーディエンスがステージを囲むスタイル。ここに1万3千人ものファンがつめかけ、開演前から場内は熱気にあふれた。
　開演時間になり、ナオトを迎える手拍子がおこると、ほどなくセンターステージを囲っていた幕があく……と、そこにはハンモックに横たわるナオトの姿が！

　「今日、俺ひとりなんだよ！　しかもやる曲もしゃべる内容も一切決めてない（笑）。俺“大丈夫か？”ってくらい決めてない（笑）。だからみんなで一緒にライブを作ろうぜ！　今日あるのはギターとピアノと歌本！」

　この度胸に観客からも拍手や歓声が起こる。まさに気の向くまま……という展開だが、世界各地で多くのストリートライブを行ってきたナオトだけに、空気の読み方は天下一品。まずはギターを手に「発声練習するか！」と呼びかけて、観客にコーラスさせていく。そこから「Good Morning」に続けるというウマいステージ運びで、瞬く間にナオト・ワールドへ引き込んでしまった。キッカケをつかんだあとは、完全に彼のペース。「あの素晴らしい愛をもう一度」やラテンの名曲「ベサメ･ムーチョ」をカバーしてみせたり、ピアノバージョンで「声をきかせて」やシングル曲「ありったけのLove Song」などを聴かせ、メリハリのある展開でライヴを進めていく。印象的だったのは彼のサービス精神。なんと、曲によって彼は自分の向きを変えながら、全方向の観客に向かって歌を届けていったのだ。
　こうして、合間に軽快なMCをはさみながらも、集まったファンが聴きたいであろう「今のキミを忘れない」や「恋する季節」などのシングル曲も惜しみなく披露。後半ではしっかりと盛り上がりタイムも用意。「マワセ マワセ」やラストナンバーの「カーニバる？」では、観客がタオルを振り回し、躍動感のある光景を作った。

　「全部吐き出していけよ！　ストレスとか――全部吐き出していいよ！」

　彼の言葉に、1万3千人のファンはジャンプしたり歌ったり、自由に体を動かす。ステージにはナオトひとりだというのに、まるで大音響でライブを楽しんでいるかのような盛り上がりだ。これでさらに熱くなった観客からは、アンコールを求める歌と手拍子がわきおこる。そして、アンコールでは期待通り盛り上がりチューンの「Ballooooon!!」（ここで初めてバックトラックを流す）が飛び出し、最後の最後まで楽しませてくれた。まさに“風まかせ”だったライブも、終わってみれば、ナオト・インティライミの人間力によって見事なエンターテイメント･ショウに仕上がってしまう。ギミックにたよらないパフォーマンスは、文句なく圧巻だった。

☆ちなみに、ナオト・インティライミの人間力の秘密は、9月27日にDVDがリリースされる映画『ナオトインティライミ冒険記 旅歌ダイアリー』と、9月25日発売の旅のコンセプト・アルバムCD「旅歌ダイアリー」発売の中にヒントがありそうだ。

【取材・文：海江敦士】