希望に通じる何かを歌いたかった、高橋 優ニューシングル「陽はまた昇る」リリース!
高橋優 | 2012.08.07
映画『桐島、部活やめるってよ』の主題歌として書き下ろされた「陽はまた昇る」。胸の内で募っていく劣等感、不安を乗り越え、懸命に希望を探す姿を鮮やかに浮き彫りにしている。力強い演奏と高橋優の歌声が一体となり、こめられた想いがリスナーの心の奥へと届いていく。彼の音楽の力を改めて実感させられる曲だ。今回のインタヴューは表題曲、カップリングの「旅路の途中」、10月からスタートする全国ツアーのことを中心に語ってもらった。
- EMTG:映画の主題歌として書き下ろしたんですね?
- 高橋:そうです。台本や原作の小説も読んで、撮影現場にも足を運ばせて頂いた上で、楽曲制作に取り組みました。こういう経緯を辿った制作は初めて。でも、楽曲を作るシチュエーションはいつもの通りです。自分の部屋で想いを巡らせながら作っていきました。結果的には僕がいつも考えていること、届けたい想いがこもった曲になりましたね。
- EMTG:想いをダイレクトに投げかけるエネルギーの強さも、この曲の魅力です。
- 高橋:シングルとしては、こういうのは久しぶりですね。この曲に寄せる想いが個人的にもすごく強くて。僕は「ほら、こんなに幸せじゃないか!」「世界は希望に満ち溢れている!」とか言われると信じられないタイプ。でも、「世界はダメだよな……」という思いで聴いてくれる方々と通じ合っても、そこには何も価値が生まれない気がする。愚痴を言い合うんだったら、歌でなくてもいいと思うので。だからやっぱり希望を歌いたい。愛とか絆とか光とかについて歌いたい。そう考えた時に、「そもそも論」みたいなことに立ち還っていくしかないのかなと。
- EMTG:そもそも論?
- 高橋:はい。「本当に希望はないか?」「僕らが生きている理由は何もなくて、ただ生まれて死んでいくだけ。生きている間は絶望しかなくて、希望はあったとしても目立たないのか?」って考えていくと、「もし本当にそうだったら、ずっと永遠に夜でいいじゃないか」ということになるじゃないですか。でも、夜が過ぎれば陽は昇る。「それって何でだろう?」って。永遠に悲しいならばずっと泣いて過ごせばいい。でも、いつかは泣き止むし、雨だっていつかは止む。そういう事実は、全人類が納得してくれると思う。明けない夜はないし、止まない雨はない。そこから入っていったのが「陽はまた昇る」です。
- EMTG:明けない夜はないし、止まない雨はない。絶望もそれと通じるものがあるのではないかと?
- 高橋:そういうことです。そう考えることで希望には至らないまでも、「希望に似た何かはあるのかもしれない」という想いに至ることは出来る。そういう楽曲にしたかったんです。イケているやつだけが1日27時間あって、イケてないやつだけが1日22時間だったりするわけではないっていうことは歌えていると思います。誰にとっても1日は24時間。みんなに同じように雨は降るし、みんなに同じように陽は昇るんだよっていうことを描くことで、希望に通じる何かを歌いたかったんです。
- EMTG:「陽はまた昇る」はまさにそうですけど、非情な現実をきちんと見据えたその先に希望を見出そうとする姿勢を、僕は高橋さんの様々な楽曲から感じます。
- 高橋:光を歌うためには、光の価値を知っていなければいけないと思うんです。そこらじゅうが明るいところに光が射しても、光が射したかどうかなんて分からない。やっぱり暗闇にいたり、少なからず闇を知っている人が、光の価値を理解する。だから暗い部分から目をそらすのは、高橋優の場合は違うのかなと思うんです。そういう想いを抱きながら、いろいろなことを歌えたらいいなと思っています。
- EMTG:カップリングの「旅路の途中」についてもお話を聞かせてください。これはオリンピックに出場する水泳選手、背泳ぎの日本代表・入江陵介さんのために書いたというエピソードをブログで読んだんですけど。
- 高橋:彼とはプライベートでも仲良くさせて頂いていて。先日、初めて泳いでいる姿を見させてもらったんですけど、すごく感動しました。ほんの1分とか2分の泳ぎのために何年もかけて練習と準備を積んで、選手たちは大会に臨むんですね。その結果によって人生や運命も変わる。それってすごい世界であると同時に、残酷な世界であるとも言える。そこへ選手たちは立ち向かっていっている。そのことを知って、すごく感動しました。そんな世界で1等賞を獲りにいく入江くんって、どれほどの努力をして、どれほどのプレッシャーで闘っているのか? 想像を絶する世界ですよ。頑張っている入江くんを見たら、自分も頑張れるなと思いました。そのことによって思い出したのは、「高橋優が頑張っているところを見ると、俺も頑張れるぜ」って言われた体験でした。だから、そういう気持ちを踏まえた「旅路の途中」は一方的な応援ソングというよりは、歌っている方も元気になれるものにしたかったんです。自分への応援歌でもあり、応援してもらっていることへの感謝の気持ちもこめられています。
- EMTG:僕、この曲を聴いてライヴの風景をすごくイメージしたんです。ライヴってステージで歌っているアーティストとお客さんがお互いの元気を交換し合う場じゃないですか。あの感じと重なるものが大きいなと。
- 高橋:ライヴの風景は、間違いなく意識しながら書きました。入江くんの応援歌であるのはたしか。でも、自分を応援してくれる方々にこの歌を届けていきたいっていう想いもすごくありました。
- EMTG:高橋さんが音楽シーンで頑張っている姿も、ファンのみなさんに「頑張ろう!」っていう気持ちを間違いなく届けているはずですよ。
- 高橋:そうおっしゃって頂けると、とても嬉しいです(笑)。《君が頑張っているから 僕も頑張ろうって思えるのさ》っていう言葉はすごく素直に出てきたんです。多分、僕自身が誰かに言って欲しい言葉でもあるんだと思います。
- EMTG:ところで、10月から全国ツアーがスタートしますけど、これに向けての意気込みはいかがですか?
- 高橋:またこうしてホールツアーを出来るのが、とにかく幸せです。僕は98%くらいライヴのことしか考えていないような人間ですので(笑)。「歌は聴いてもらうためにある」って思っているんです。歌を歌うだけで楽しいって言う人を否定する気持ちは一切ないんですけど、僕の場合は歌を歌うからには聴いてくださる人がいて欲しい。少なくとも2人以上いて欲しい(笑)。僕は路上ライヴからスタートして、2人が3人になり、4人になり……ってやってきました。僕のライヴによって絆のようなものが生まれたら素晴らしい。例えば「高橋優の歌がきっかけで、路上で友だちが出来た」っていうような話を聞くと、何とも言えない感動があったんです。そういう場所が少しずつ広がっていくのは、僕にとって本当に幸せ。「歌は聴いて頂ける場所がないと成立しない」という我がまま、欲求はこれからもずっと僕の中にあると思います。「ライヴ」って言うとカッコいいですけど、歌を聴いてもらえるっていうのは、僕の中でとにかく喜びなんですよね。その時間をもし「楽しい!」なんて言ってもらえたら、そんなに幸せなことはないです。
【取材・文:田中 大】
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※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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