THE BACK HORN、新たなポテンシャルを示す楽曲「シンメトリー/コワレモノ」
THE BACK HORN | 2014.02.19
- 菅波栄純:単純に言えば、「シンメトリー」はすごくポジティヴでドラマチックな曲じゃないですか。「コワレモノ」はダンサブルなんだけど、結構ドロドロとしたカオスな感じの歌詞で。その2曲が並んで、対照的なシンメトリーの形になるっていうのが思い浮かんだとき、これは面白いんじゃないかって。
- 松田晋二:今までのシングルは3?4曲を並べて伝えてきたんですけど、もっとビシっと強い楽曲をシングルっていう形で閉じ込めることは出来ないか?って思っていて。カップリングだからって優劣をつけるわけじゃないんだけど、両A面だったら、曲順はあるけど同等の気持ちでみんなに聴いてもらえるんじゃないか?って。
- EMTG:カヴァー曲の「春よ、来い」は、どういう位置づけなんですか?
- 松田晋二:もう1曲入れたいんだけど、そうなると2トップの形が崩れてしまうなと思ってたときに、たまたま「マニアックヘヴン」でやった音源を聴く機会があって。
- 岡峰光舟:2011年の春に東北を廻ったツアーの楽屋で、みんなで「春よ、来い」をYouTubeで見ていて。あの曲に励まされたのを思い出してライヴでやったんですけど、改めて聴いたら良いバランスでアレンジ出来てたから、ちゃんと録音をしたら良い形になるなと思って。
- 松田晋二:オリジナル曲とカヴァー曲は、それぞれまた別のベクトルだから、「シンメトリー」も「コワレモノ」もしっかり届くし、楽しんで聴いてもらえるんじゃないかと思って、この形にしました。
- EMTG:そういう想いがあっての3曲なんですね。「シンメトリー」は、曲を再生した瞬間にものすごく驚きました。正直な話、CDの中身が間違ってるんじゃないか?って思ったぐらいで。
- 松田晋二:いいですね。
- 山田将司:どのインタビューでも言われますね、それ(笑)。良い驚きを与えられてるっていうことですよね?
- EMTG:はい、まさにその通りです。曲の基になる部分は5年前からあったそうですけど、アルバムで言うと『THE BACK HORN』を作った頃ですか?
- 山田将司:その後ぐらい?『パルス』の頃?
- 菅波栄純:多分それぐらい。これは本当に直感だったから説明出来ないんですけど(笑)、ちょっと特別だなって思ったんですよね。だから締切を意識せずに作ってみたらどうだろうと思って。のんびりしてそうに見えるけど根はせっかちなところもあって、何か曲が生まれそうだったらガーっと仕上げていきたいタイプではあるんですよ。だから(今回は)チャレンジ的な意味もあって。水をちょっとずつ貯めていくように作りました。
- 松田晋二:始まった瞬間に扉が開くというか、光がバン!って射してくる感じがあって。この曲がみんなの中で響いたらどうなるんだろう、すごいことにならないか?っていうワクワクした感覚をそのまま閉じ込めてますね。
- 岡峰光舟:冒険しているようなファンタジー感のある曲だなって。ロックでもあるんだけど、その枠もちょっと超えてんのかな?っていう。良い音楽だなって。
- 山田将司:でも、すごく栄純っぽいとは思ったんですよね。「元はせっかち」とか「元は根暗」とか自分で言ったりしてるけど、でも前向きに生きてる感じとか。
- 菅波栄純:あぁ。
- 山田将司:激しそうに見えるけど鈍臭かったり、怖そうに見えて意外と人との接し方はソフトタッチだったり──。
- 菅波栄純:そこはイメージ的にちょっと……。
- 岡峰光舟:もうそのイメージになってるから(一同笑)。
- 山田将司:まぁ、今の栄純のモードがすごく出てるなと思って。これだけポジティヴな歌詞が並んでる曲は初めてに近かったら、最初に一聴したときは、自分がここにどう入って行くかを考えちゃいましたね。
- EMTG:実際に歌ってみてどうでした?
- 山田将司:5年かかってるだけあって、歌詞とかメロディーも推敲されてて純度が高かったし、自分が難しいことを考える必要はないなと思って。生きてるといろんな波はあるけど、その上に飛べるだけ力を曲が持ってるから、そこを目指していきましたね。何年か経って聴いたときにも輝き続けるものになる気はしました。
- EMTG:バンドが掲げている「生と死」というテーマの中で、この曲は「生」に特化した曲だと思うんですが、なぜそういう曲を作ろうと思ったんですか?
- 菅波栄純:本当のキッカケになったところとしては、自分がそれを聴きたかったっていうのはありますね。ポッカリ心に穴が空いている気持ちが、震災以降ちょっとあって。何かを失ってしまうようなものを受け入れ難いと思っていたんだけど、でも、人生ってそれの繰り返しだから。何かを得て、何かを失って、という。その中で少しの希望とか夢とか、さっき光舟がファンタジーって言ってくれたようなロマンとか、そういうものがないと、また一歩踏み出せなかったりして。だから、曲を再生したときに、すごくロマンが溢れてくるようなものを聴きたいって思ったんですよね。
- EMTG:震災のときに配信された「世界中に花束を」も光を感じる曲でしたけど、また少し違う光みたいなものがありました。
- 菅波栄純:あぁ。きっと影響は受けてると思います。このタイミングでギュっと濃くなって形になったのは、「世界中に花束を」なり『リヴスコール』なり──もしかしたら『アサイラム』っていうタイトルからして、それは始まってたのかもしれないけど──迷子になっている気持ちが帰る場所、少し休む場所に俺らの音楽がなりたいっていう気持ちが、この曲に水を上げたのかもしれない。
- 松田晋二:光っていうよりは目印っぽいというか。光ってるのはメロディーであり楽曲であって、歌詞は「それでいいんだよ」って、ここにいるのを認めることを何気なく語りかけているような言葉だなと思っていて。何気ないことを歌うのが一番難しいと思うんですよ。何気ない曲を何気ない気持ちで作ると、何気ないものになってしまう。そこは栄純の言い方とか伝え方がすごく絶妙に重なりあって、これだけ輝いたんだなって思います。
- EMTG:そして、もう1曲の「コワレモノ」はいつ頃に出来たんですか?
- 菅波栄純:主な部分が出来たのは、震災の直後ぐらいですね。これも勘なんですけど、今じゃないなって、そのときは思いました。
- 岡峰光舟:デモがすごくぶっ飛んでて。打ち込みのドラムにピコピコした音が入ってて、あんまりバンドサウンドとしてピンと来る感じじゃなくて。
- EMTG:今の肉感的な感じじゃなくて、もっと無機質な感じだったんですか?
- 菅波栄純:そんな感じだったかもしれないです。
- 松田晋二:音も悪いから全然分かんないし。
- 菅波栄純:うん(笑)。
- 松田晋二:でもムードは分かったけどね。重要なところは分かった。なんかこう、笑いながら怒ってる怖さみたいな。
- 菅波栄純:竹中直人さんみたいな(笑)。でもなんか、現代人っぽいよね。
- EMTG:そうですよね。Twitterとか、文字を見るとすごく楽しそうなんだけど、本当は死んだ顔して打ってたりするのかなって思ったりしますし。
- 菅波栄純:また怖いこと想像しますね(笑)。
- 松田晋二:そういう「奇妙なんだよ」っていうのを全面に充満させてるんだけど、それを飛び越えたときにすごくポップに響いてくるっていうか。ポップでキャッチーなんだけど、中身はすごいネジれてて怖いっていう。だからゾンビ映画っぽいっていうか。
- 岡峰光舟:怖いっちゃ怖いけど笑えるみたいな?
- 松田晋二:そうそう。そういうホラーを目指して作ったわけじゃないですよ?(笑)
- EMTG:もちろんです(笑)。
- 山田将司:俺は好きな世界観ですね。さっきおっしゃってた、誰かに対して表面的にはそうなんだけど、心の中では暗黒舞踏が繰り広げられてるみたいな。そういうのを感じた。ファンキーな感じもあってロックなものっていうのは、THE BACK HORNにとっても新鮮だと思ったし。
- 岡峰光舟:やってて楽しいから、これからライヴでやっていくことで転がっていく部分もあるだろうなって思いますね。
- EMTG:「シンメトリー」と「コワレモノ」は両極な2曲ですけど、両方とも根底的なテーマとして、自由とか解放みたいなイメージがすごくあったんです。
- 菅波栄純:あぁ。解放っていうのはあるかもしれないですね。自由と束縛の狭間とか、混沌から抜け出したいけど抜け出せないとか。
- 山田将司:あとは赦していくみたいな、そういうのもあるかも。
- EMTG:確かにそうですよね。バンド的にもっと自由にいろんな挑戦をしようっていうモードだったのかなと思ったのですが、いかがですか?
- 松田晋二:でも、そこも結局曲ありきというか。自由とか解放みたいなのは、確かにそうだなと思ったんですけど、多分、そこを目指して作ったら、もっと違うものになるような気もしますし。解放して行くぞっていう気持ちから生まれたというよりは、大切なこの曲達を、大切に届けて行きたいっていうところですね。
THE BACK HORNの新作は、再生した瞬間に飛び込んでくる英語詞と、圧倒的な光にただただ驚かされる「シンメトリー」と、躍動感のあるグルーヴの中で“楽しそうに踊ってるんだけど、目は死んでる(松田談)”というダークさ極まる「コワレモノ」の両A面シングル。バンドにとって、両A面は初の試みとなる。また、これまでエレファントカシマシやTHE YELLOW MONKEYのトリビュート盤への参加はあったものの、自身の作品に初めてカヴァー曲(松任谷由実「春よ、来い」)を収録したり、楽曲を解禁する前に歌詞を発表するというプロモーションを行なうなど、結成15年にして初物づくしな作品となった。充実の1枚をリリースする4人にまず、なぜ両A面シングルという形式にしたのか?というところから、話を訊いてみた。
【取材・文:山口哲生】
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リリース情報
お知らせ
9mm Parabellum Bullet×THE BACK HORN『決闘披露宴』
2014/03/01(土) 宮古KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
2014/03/02(日) 大船渡LIVE HOUSE FREAKS
2014/03/04(火) 石巻BLUE RESISTANCE
2014/03/05(水) いわきCLUB SONIC
2014/03/17(月) Zepp Namba
2014/03/18(火) Zepp Nagoya
2014/03/27(木) Zepp Tokyo
KYO-MEIワンマンツアー2014
2014/05/01(木) LIQUIDROOM
2014/05/03(土) 清水SOUND SHOWER ark
2014/05/05(月) 滋賀U★STONE
2014/05/06(火) 神戸VARIT.
2014/05/10(土) 水戸LIGHTHOUSE
2014/05/11(日) HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
2014/05/15(木) 高松DIME
2014/05/17(土) 高知X-pt.
2014/05/18(日) 松山サロンキティ
2014/05/22(木) 岡山ペパーランド
2014/05/24(土) 広島クラブクアトロ
2014/05/25(日) 松江AZTiC canova
2014/05/30(金) 仙台Rensa
2014/06/01(日) サッポロファクトリーホール
2014/06/03(火) 南相馬BACK BEAT
2014/06/07(土) 新潟LOTS
2014/06/08(日) 松本Sound Hall a.C
2014/06/10(火) 甲府CONVICTION
2014/06/17(火) 金沢エイトホール
2014/06/19(木) Zepp Nagoya
2014/06/20(金) なんばHatch
2014/06/25(水) 大分DRUM Be-0
2014/06/27(金) 鹿児島キャパルボホール
2014/06/29(日) Zepp Fukuoka
2014/07/01(火) 長崎DRUM Be-7
2014/07/04(金) 盛岡Club Change WAVE
2014/07/06(日) 郡山Hip Shot Japan
2014/07/10(木) Zepp Tokyo
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。