新編成となったplenty。最新作が完成
plenty | 2014.11.25
- EMTG:新メンバーは、ずっと探していたんですよね?
- 江沼:はい。一時探したんですけど諦めまして。そこでひょっこり一太が出てきたんです。
- 新田:郁弥はずっと「ドラムを入れてバンドになりたい」って言っていたし、僕も同感だったので、いいタイミングで一太が現れてくれました。
- 中村:僕、plentyが元々大好きで、チケットを買ってライブを観ていたくらいなんです。江沼の歌にすごく惹かれていて。「いい歌を歌う人だな」と思っていました。
- EMTG:サポートのプレイヤーに参加して頂く体制が続いていたわけですけど、やっぱり正式メンバーと活動したかった?
- 江沼:そうなんです。何て言うんでしょう? 「楽をしてるんじゃないか? 」っていう感覚があって。メンバーに入ってもらって、作曲みたいなところからいちいち喧嘩していくのが、今後のplentyに関する1つの解決策になるんじゃないかと思っていたんです。
- EMTG:イメージしていることを的確に具現化してくださるサポートプレイヤーとやるのは楽だし、いいことであるようにも思えるんですけど。
- 江沼:どうだろう? 楽なことをして生まれる音楽を聴きたいですか?
- EMTG:「楽」と表現すると語弊があるかもしれないけど、スムーズなのは悪いことではないようにも感じるんです。
- 江沼:なるほど。でも、いいものを生むのは楽ではないですからね。そういう矛盾をずっと感じていて。俺と新田の関係だけじゃなく、もっとフレッシュな人に入ってもらって、バンドとして再生したかったんですよ。例えば打ち込みとかの音楽をやることになったとしても、俺個人の作曲技術の成長ではなくて、3人のバンドとしての成長の中でそういうことをやるようになりたいんですよね。
- EMTG:plentyって仲間と苦難を乗り越えて何かを掴むことを求めるような、ある意味、青春っぽい熱さも持っているっていうことですね。
- 江沼:「ロックバンド幻想」みたいなのって、やっぱりあるんです。ビートルズとかレディオヘッド、オアシスだったり、そういうものに憧れてギターを持ったから、葛藤しながら活動することが必要だという想いがあるんですよね。でも、plentyにはよく理解してくれて、守ってくれるスタッフがいるわけです。そのノンストレスな状態だと、よく分からない方向に行く気がしていて。ちゃんとモノ作りのところでストレスを感じて、自分たちで自分たち自身に揺さぶりをかけるようなことをしたかったんです。
- EMTG: 実際、この編成で今回のミニアルバムの制作をしたわけですけど、どうでした?
- 江沼:「例えばこういうのは?」っていう、思ってもみなかった方向からのフレーズが面白かったり。そういうのを肌で感じられるようになっている今が、すごく楽しいです。
- EMTG:中村さんはplentyに入って、どんなことを感じています?
- 中村:もちろん江沼が言う「ストレス」みたいなことはあるんですけど、それを1つ1つクリアしていくと、どんどんいいものになっている感じがあって。それが楽しいです。
- 新田:郁弥が曲を作っている時は、一太と僕とでリズム隊の練習ができるじゃないですか。そういうのもいい刺激になっています。
- EMTG:先程から「楽しい」っていう言葉がみなさんからすごく出てきますけど、それは今作の音にも反映されていると思います。ざっくり言うと若々しいんですよね。
- 江沼:フレッシュさを大事にしたからだと思います。それは意識的にそう思った面もありつつ、そうでもない部分も大きいんですけど。曲の骨組み、アレンジ、歌詞とかは、そうするつもりもなかったので。でも、作ってみたら一音目から若いような感じがするものになりました。それもセッション的な過程を経て辿り着いた予想外のところなんですけど。そして、それに引っ張られるような形で歌詞も書きました。
- EMTG:歌詞の印象も変わりましたよ。
- 江沼:そうだと思います。前だと「江沼郁弥」っていう人間から離れたところで歌詞を書くことにずっと行っていたんです。歌詞の文字の配置とか文章としての美しさを追求することに、より意識が行っていましたから。でも、今回はもっと自分の身近な、手が届く範囲のことを歌うっていう感覚で書いていきました。
- EMTG:何て言うんでしょう? 「前に進む」みたいな気持ちが、今回のいろんな曲から感じたことの1つです。「手紙」とか「幼き光」とか「ぼくがヒトであるなら」とか。
- 江沼:なるほど。今の気持ちとしては、たしかにそういうところがあります。例えば地元のライブハウスの鹿嶋LOOPとか、地元の高校がなくなったり。そういう出来事が多い中、「ここでメソメソしていられない」って思って。
- EMTG:個人的な体験がダイレクトに歌詞に表れるっていうのも、今まであまりなかったことじゃないですか?
- 江沼:そうかも。今回やりながら、「それってある種、ポップだな」と思ったんですよ。個人的な出来事を曲にして、歌って、「ああっ!」って思わせる。関係ないことを関係させるっていうのはポップ。それってそもそものミュージシャンの役目だなと思うんですよ。
- EMTG:僕、前作の取材の際、「仏陀はポップだと思う」っておっしゃったのが忘れられなくて。江沼さんのポップ観ってすごく興味深いんですよ。
- 江沼:そういう話、しましたね。その発言だけ抜き出すとブッ飛んで聞こえるけど(笑)。
- 中村:ちょっと心配になる(笑)。
- 江沼:世にはびこっている「ポップ」って、何かが間違っている気がしていて。もっと深い意味が「ポップ」っていうキラキラした言葉にはあるように思うんですよ。仏陀が例えばミネラルウォーターを飲んで「うまい!」って言ったら、他のみんなも「うまい!」って感じになって、そのミネラルウォーターを求めるようになるでしょ? さっきの仏陀の話はそういうこと。
- 中村:なるほど。
- 江沼:仏陀が「うまい!」って言うのは個人的なこと。でも、仏陀っていうものを通すことでミネラルウォーターのうまさが分かりやすくなる。だからみんなも飲むようになる。これがクリエイティヴ。
- EMTG:面白い! そういう「ポップ」の追求がplentyのモチベーションの1つ?
- 江沼:そうですね。もちろんそういうのをやっている大先輩はいるんですけど、本質を見ずに表面をなぞっている人が多い気がしていて。みんな一所懸命「まあまあ」なものを作っている。それはモノ作りのテンションじゃない。なんとなくポップなようにも感じられるけど、食べ応えがないものが多い気がします。
- EMTG:そこそこ美味しいけど、今一つ物足りないラーメン屋のような?
- 江沼:はい。あるいはファミレスの「ミラノ風ドリア」のような(笑)。あれは「ミラノ風」であり「ドリア風」だから。つまり「ミラノ」にも「ドリア」にも着地していない。そうじゃなくて「ミラノのドリアを食べたいよ!」っていう。
- EMTG:今日、すごく喩えが冴えていますね。そういうのが今回の歌詞にも反映されているんだと思います。シャープに刺さって来るフレーズが、いろいろあるじゃないですか。
- 新田:今回、歌詞が早く書けていた気がしていて。郁弥の中で歌うことが決まっているんだろうなあと思いました。
- 江沼:そんなことねえよ(笑)。
- 新田:そんなことない?
- 江沼:俺がその分時間を貰ったから。一太と新田が練習する間に俺が歌詞を書いたりするっていうことができるようになったんだよ。一太が「俺らは俺らで練習するから、お前はお前のやることをやれ」と。「よく言った、一太!」と。それは新田紀彰じゃ言えないぞ(笑)。
- 新田:なるほど(笑)。
- 江沼:分かってねえなあ(笑)。
- EMTG:(笑)なんかこういう容赦ないやり取りからもバンドのいい状態が窺われます。
- 江沼:そうですか?(笑)。まあ、面倒くさいことをしたくて3人になったわけですけど、いろいろ任せられる分、役割が減った部分もあるんです。そういうのも今回やってみて大きかったことですね。
- EMTG:中村さんの登場は、やっぱりplentyにとって大きかったみたいですよ。
- 中村:話を聞いていると、そうみたいですね(笑)。
- 江沼:まあ、今日、スピーカーをあげたから。
- 中村:今回のミニアルバム分は、それでチャラだね。
- 江沼:物欲で解決するようになってる(笑)。ヤバいなあ。分かってねえな、2人とも(笑)。
- EMTG:(笑)作品の話に戻りましょう。「バンド」ってものを求めたことにも関連するのかもしれないですけど、効率よく生きることを全面的に善しとしない感覚が「パンク」や「イキルサイノウ」で描かれているのも印象的です。
- 江沼:便利なのはすごくいいことだし、上の世代に較べて 住みよい暮らしになっているんでしょうけど、そうなってくると動物としての勘が鈍っていく気がして。便利なものがあるほど、それが便利にしてくれるものに対して考えることが減る。それがヤバいなと。もっと面倒くさいことをしなきゃいけない。そうじゃないとクリエイティヴな気持ちにもならない。さっきお話しした「plentyが守られている」っていうのもそういうことですね。守られたままじゃなく、いろんなことを自分たちから起こさないといけないと思ったんです。もっとワクワクしたいじゃいですか? ワクワクしたいですよ。
- EMTG:今回、まさにワクワクする1枚ですよ。「見知らぬ朝」とか「空から降る一億の星」も、すごくグッと胸に沁みるメロディの曲ですし。
- 江沼:ありがとうございます。アレンジとか音がどんなに良くても、結局メロディが良くないと、その曲は良くない。今回改めてそう思いました。それがないと一太のドラムも新田のベースも映えてこない。自分が良くなることを考えるのが、結果的に全員が良くなることに繋がる。自分が歌い切らないと全員の音を殺すことになる。それを「空から降る一億の星」とかで感じました。
- EMTG:さて。作品全体を語って頂きましたが、今後、どう進んで行こうと思っています?
- 江沼:楽しんでいこうかなと思っています。「自分たちだけが楽しいだけ」っていう形ではなく、それがお客さんにも「こういう面白さなんだ!」って伝わる。そういうことをやっていきたい。自分たちが面白いと思うことにみんなを巻き込む活動をやり続けたいです。
前ドラマーが脱退して以来、江沼郁弥(Vo & G)と新田紀彰(B)による2人組編成で活動してきたplenty。しかし、今年の8月に中村一太(Dr)が加入。再び3ピースとなった彼らが生み出した初の作品が、ミニアルバム『空から降る一億の星』だ。3人それぞれの感性を交わし合いながら音を鳴らす喜びが、収録されている全7曲から鮮やかに伝わってくる。各楽器のフレーズが有機的に絡み合って生まれる奥行き深いドラマ、瑞々しい抒情性 を湛えたメロディ、鋭い視点と豊かなイマジネーションに裏打ちされた歌詞……漲っている全てが、plentyの新たな物語の始まりを美しく示している。メンバー3人に新体制始動の経緯、今作の制作の背景について語ってもらった。
【取材・文:田中 大】
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お知らせ
●江沼
太陽と星空のサーカス
知り合いの知り合いがやっているイベントで『太陽と星空のサーカス』っていうのがあるんです。それがなんかすごく素敵そうなんですよね。音楽とかいろんな食べ物があるイベントみたいで。面白そうなので行ってみたいです。
●新田
フィルムカメラ
キャノンの「オートボーイシリーズ」っていうカメラを買いました。僕、趣味がないので、何かあった方がいいなと思ってフィルムのカメラで写真を撮るようになっています。わざわざ現像に出す面倒くささがいいなと思って。フラッシュの調子が悪くて、変な感じに写ったりもするんですけど、それが面白いです。
●中村
紅葉 スタンプラリー
僕、公園に座って「綺麗だなあ~」って木とかを眺めるのがすごく好きなんです。この季節、いろんな公園を回って紅葉を見て、スタンプを押すラリーをやっているんですよね。以前、紅葉のスタンプラリーではない、都内の公園をいろいろ回るのをやったことがあります。全スタンプを集めて、タオルを貰いました。
■ライブ情報
plenty 2014年 冬 ワンマンツアー
2014/11/29(土) 新潟 LOTS
2014/11/30(日) 仙台 darwin
2014/12/06(土) 札幌 PENNY LANE 24
2014/12/13(土) 名古屋 ElectricLadyLand
2014/12/14(日) 浜松 LiveHouse 窓枠
2014/12/20(土) 大阪 なんばHatch
2014/12/27(土) 東京 渋谷公会堂
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。