4thシングル『FLAVOR FLAVOR』は、KEYTALKのソングライティングの切れ味、高いアレンジ力が最大限に発揮されている1枚。涙腺を刺激するメロディと、強力なダンサブルさが融合したタイトル曲「FLAVOR FLAVOR」。メロディックパンク的な疾走感に溢れた「ナンバーブレイン」。甘酸っぱい風景と心情を浮き彫りにする「Stand By Me」。3曲それぞれが、かけがえのない魅力を煌めかせている。今作について小野武正（G）、首藤義勝（Vo & B）、寺中友将（Vo & G）、八木優樹（Dr）に語ってもらった。

EMTG：「FLAVOR FLAVOR」、義勝さんの作詞作曲ですね。

首藤： はい。キュンとくるメロディとダンサブルさを融合させたいと思って作りました。ただ踊れるだけ、あるいはただ泣けるメロディというだけではなく、両方詰め込んだ曲があったらいいんじゃないかと思ったんです。

EMTG：泣けるメロディとダンサブルさって、それぞれKEYTALKの魅力の大きなポイントじゃないですか。つまり、この曲はラーメンで喩えるならばKEYTALKの“全部乗せ”ということですね。

小野：全部乗せ、好きです（笑）。

八木：乗せましょう！

EMTG：「汗だと思ったら涙だった……」というような感じになる曲ですよ。

寺中：「汗だと思ったら涙だった……」って、めっちゃいいフレーズ（笑）。ほんとそういう曲だと思います。最初、デモが送られてきたんですけど、原形は今よりも展開が多かったんです。

八木：展開が多かったので、「ふざけた曲」っていう感じもあったんですよね。でも、メロディがすごく良かったので、「サビを立てるアレンジ」にしようっていうことになって、今の形になりました。

EMTG：リズムを多彩に切り替えていますよね。八木さんのハイハットの魔術師ぶりがすごいですよ。

小野：ハイハットの魔術師!?

EMTG：僕が勝手にそう呼んでいるだけなんですけど。ハイハットの使い方がすごく上手いドラマーじゃないですか。

八木：そうなんです。ハイハットの魔術師です（笑）。ハイハットのニュアンスによって曲の印象はかなり変わるので、いつもいろいろ考えて叩いています。今まではタテノリの感じが特に強かったと思うんですけど、この曲は横に揺れるようなアクセントも加えたりしています。4つ打ちの曲だとハイハットが個性を醸し出すんですよ。これは上手く曲にマッチしてますな。

寺中：「してますな」って何だ？（笑）。

小野：ハイハットを刻みまくって醸し出しているこのニュアンスが良いですよ。だからこそメロディアスさに寄り過ぎない曲になったんだと思います。いいブレンド具合です。

八木：ですな？

小野：うん。ですな（笑）。ギターに関しては、最近あんまりやっていなかった16分のカッティングも盛り込んでいます。

寺中：こういう爽やかな曲は俺も好きなので、コードの響きをいろいろ考えました。

EMTG：KEYTALKって思いっきり盛り上がれるサウンドが十八番ですけど、実はコードの響きとか、さっき触れたハイハットの多彩なニュアンスとか。じっくり練ったアレンジによってオシャレな風味も漂わせるバンドなんですよね。

小野：ありがとうございます。プロデューサーのNARASAKIさんにも、新鮮な風をたくさん吹きこんで頂きました。

首藤：「このメロだったら、このコードはどう？」っていうのをいろいろ提案してくださったんです。

EMTG：NARASAKIさんが加えてくださったものって、シンセのサウンドとかも？

首藤：そうですね。フレーズ自体は僕が作ったんですけど、音色の部分でいろいろ提案して頂きました。ゴージャス感が出過ぎないけど、心の琴線に触れるような丁度いいバランスの音色ですよ。

EMTG：歌詞に関しては、どんなことをイメージしながら書いていきました？

首藤：まず決めた大まかなテーマは、切ない感じの恋愛。そこから、「今はもう1人になっているけど、過去を思い出して切なくなっちゃってる」っていうものになっていきました。いつも作るのは曲が先なので、サウンドの雰囲気から自然と物語を作っていった感じです。

EMTG：これ、ライブでやったら楽しそうですね。お客さんがクラップしてくれそうなポイントも盛り込まれていますし。

首藤：曲が真面目になり過ぎちゃうのも違うのかなと思うので、こういう要素は入れたくなるんですよね。「曲自体は真面目だけど、ちゃんと遊べるところもある」っていうのは、大事にしています。ライブのことを考えているからそうなるんでしょうね。

寺中：この曲、お客さんもライブで休む暇はないですよ。まあ、KEYTALKは、基本的にいつもそうなんですけど。

EMTG：盛り上がるダンスチューンを生み出すことに対して、KEYTALKの情熱ってすごいですよね。バンドの最初期からそうでした？

小野：いや。昔はそういう意識はなかったんですけど、いつのまにかこういうバンドになっていました。インディーズでアルバムを出していくにつれて「4つ打ちを基盤に」っていう感じになったんです。ライブとかも経て徐々にっていう感じでしたね。

八木：もっと踊ってもらうために、僕もいろんな魔術をさらに使えるよう頑張ります！

EMTG：では、カップリングの「ナンバーブレイン」のお話に移りましょう。武正さんの作詞作曲ですね。

小野：そうです。僕、バッド・レリジョン（アメリカのロックバンド。メロディックパンクの先駆者）とかが大好きで。その直系サウンドですね。これも踊れる感じのものになっていると思います。

八木：アメリカンなメロディックパンクをイメージしつつ、楽しんで叩きました。ここまで男くさい曲って、今まであんまりなかったかもしれないですね。

寺中：自分の中にある攻撃性を歌にして表現しました。レコーディングの時、2、3回連続で録ったんですけど、「あともう1回！」とか言われたらヤバかったですよ。それくらい全力の歌です。

首藤：ベースも男らしく、普段より強めに弾きました。歌は2人一緒に、ブースだけ分けて録ったんですけど、巨匠（寺中）が予想していた以上に男モードでした。それに引っ張られて、僕もテンションが高い感じの歌い方になっていると思います。

EMTG：歌詞の音の響き、すごく歯切れが良いですね。

小野：語感を重視して書きつつ、意味合いも持たせています。「コンピュータが発達して、人間の仕事がどんどん機械に奪われていく中、自分にしか出来ないことって何なんだろう？」っていう自問自答。「そういうことをしっかり考えて生きていけよ！　立ち上がれ！」って鼓舞するような歌詞ですね。字面を見ていても楽しいものにしたいと思っていました。

EMTG：なるほど。そして、3曲目「Stand By Me」は、巨匠の作詞作曲。シンセとオルガンをフィーチャーしたサウンドが新鮮です。

寺中：新しい感じのことをやりたいなと思って作った曲です。俺の作る曲ってマイナー調のものが多いので、メジャーキーな感じのものを作りたいっていうことも考えていました。

EMTG：「FLAVOR FLAVOR」もシンセが入っていますし、鍵盤を導入したアレンジに関心が出てきています？

寺中：まあ、「どんどん入れていきたい」というよりは、「そういうこともやりたい」っていう感じですかね。鍵盤を入れるだけでもサウンドのバリエーションが増えると思うので。

EMTG：この曲、ギターソロがカッコいいですよ。

小野：弾きながら、自分でものめり込みました。良いテイクが録れたと思います。

八木：打ち込みが入っている曲なので、ドラムに関してはそこを活かすことを考えました。でも、この曲、いろんな展開をするので、意外と遊べるんです。いろんな叩き方を試す面白さがありました。

首藤：タイトルが「Stand By Me」なので、僕は「歩く感じがいいのかな？」ということもイメージしました。映画の『スタンド・バイ・ミー』からの連想ですけど。

寺中：線路の上を歩くような？

首藤：そう。「ここは線路の上だ」と思って弾きました。

EMTG：「俺はリヴァー・フェニックスだ！」と？

首藤：そうですね（笑）。この曲、サビのメロディが良いですよ。「巨匠、すげえな」と思いました。グッとくるけど明るいっていう感じが印象的です。

EMTG：「エンドロール」もそうでしたけど、僕、巨匠が作ったグッとくるメロディの曲を聴くと、砂浜の風景が浮かぶんですよ。

寺中：俺、暇があると砂浜によく行くからですかね？

EMTG：よく行くんですか？

寺中：そうなんですよ。夏は特に。泳ぐとかではなくて、ただ座っています。

八木：やばっ！　その絵面（笑）。

寺中：好きなんですよ、砂浜。

EMTG：背中を丸めて座っている姿、見かけたらびっくりするだろうなあ。

寺中：見かけても、声をかけずにそっとしておいてあげてください。写真は構わないので、自由に撮ってください（笑）。

EMTG：はい（笑）。ところで、今年のリリースは、このシングルが第1弾。対バンツアーも間もなく始まりますが、2015年の抱負やビジョンは何かあります？

小野：より一層たくさんの人にKEYTALKの曲を良い形でお届けして、聴いてもらうっていうことですね。そして、ライブにも来て頂きたいです。でかいバンドになりたいと思います。

八木：僕の個人的な野望は、「サーフィンデビューしたい！」です。スノーボードが好きなので、今度は波に乗ってみたいです。

EMTG：サーフィンをする八木さんを巨匠が砂浜から見守るわけですね？

寺中：いや。その場合はサーフィンに参加します（笑）。俺の今年の目標は、フルマラソン出場ですね。今年中？　うーん……来年の頭くらいまでには。

八木：年跨いじゃうんだ？

寺中：やっぱ、この目標やめます（笑）。対バンツアーは修行の場になるでしょうね。KEYTALK主催のツアーなので、対バンの方々に負けるわけにはいかないです。全部勝つくらいの意気込みで行きます。そして、今年の後半に向かってどんどん大きいステージに上って、修行の成果を発揮したいです。

首藤：KEYTALKは今までもずっとライブを通して成長してきたバンドですからね。ライブをやる毎にいろんなことを吸収する流れを続けてきたんです。だからその感じを忘れず、変えずにやっていきたいです。そして、大きい会場でも自信を持って演奏できる曲をいっぱい作っていきたいと思います。

【取材・文：田中 大】

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