黒木渚、4/6、ニューシングル「ふざけんな世界、ふざけろよ」はポップなピアノ・ロック

黒木渚 | 2016.04.06

 とんでもなく殺気立ったメッセージを、あくまで陽気にぶっ放す。
 黒木渚のニューシングル、その名も「ふざけんな世界、ふざけろよ」は、退屈なこの世界を目覚めさせるユーモアと情熱の弾丸だ。人生はコメディ、と言い放つ黒木渚流の超ポジティブな快楽主義の表明と、踊れるピアノ・ロックに仕上がったポップな曲調が、あなたの先入観を木っ端微塵にぶち壊す。さあ一緒に歌おう、チクショーチクショーふざけんな!

EMTG:なにはともあれ、「ふざけんな世界、ふざけろよ」。タイトルのインパクトが最強!
黒木:これは作っている段階で、わりと早めに決めていた気がする。「ふざけんな世界、ふざけろよ」というフレーズは、歌詞の中には出てこないけれど、総括してこういうことだろうと。でも元ネタというか、結構前までツイッター発言をさかのぼってみると、“ふざけんなと思うことが9割、もっとふざけろよと思うことが1割”って、つぶやいてる日があったんです。やっぱり世の中に対して“ふざけんな”という憤りと、“ふざけろよ”という、余裕を持って行こうぜという気持ちとの二つがある、それがそもそもの始まりだったんですね。
EMTG:ああ~。なるほど。
黒木:黒木渚がスタートして、「革命」「虎視眈々と淡々と」とか、“天下とったる!”みたいな、すごく張り詰めた精神状態で走り続けてきて。みんながそれを応援してくれる感じだったけど、この段階に来て、少し楽しむ余裕が出てきた。信念はそのままに、もっと人を巻き込んで愉快にやっていこうという余裕が出てきたんじゃないかな?と。
EMTG:それはすごく感じる。“ふざけんな世界”がこれまでの黒木渚で、“ふざけろよ”が今からの黒木渚というか。笑顔で言ってるのが目に浮かぶし。
黒木:そうですね。ずっと走り続けてきて、走るコツがわかってくると、景色を楽しむ余裕が出てくるじゃないですか。
EMTG:その例え、すごくわかる。
黒木:そうなってくると、私は根本的に快楽主義のところがあるから、楽しむという方向に流れていくんですよね。
EMTG:そして、繰り返される<チクショーチクショーふざけんな>というキラーフレーズ!
黒木:逆境を笑い飛ばすのが一番強いことかも、と思って、“チクショーチクショーふざけんな”を合言葉にしました。ユーモアのある曲調に、チクショー!という悔しさを乗っけて笑い飛ばすと、愉快な気持ちになれるかな?と。“人生はコメディ”という大テーマのもとで生活していれば、俯瞰の視点で自分のことを余裕で見下ろせるというか。チャップリンに、人生は“寄り”で見ると悲劇だけど、“引き”で見ると喜劇だ、みたいな言葉があるんですけど。
EMTG:うわあ。それはいい言葉。
黒木:彼もたぶん、ぐつぐつ燃えたぎる社会的な思想みたいなものを持ってるんだけど、それを人々に伝える一番の方法としてコメディを使ってるじゃないですか。やっぱり愉快なもののほうが伝播するし、人々も簡単に受け取ってくれるんですよ。敷居が低くなる。だからこの曲も、サンバみたいなリズムで、聴くと踊らずにはいられないみたいな曲に乗せて、自分の哲学を発信している。それは音楽としてはまっとうな主張の仕方なのかな?と思います。
EMTG:ピアノ・ロックですね。明快でポップな。
黒木:バンドのアレンジにする時がめちゃくちゃ楽しかった!「ふざけんな世界、ふざけろよ」というタイトルがついた時点で、この曲で音で遊ばないでどうすると思ったんで。とにかくやりたい放題やって、一番ダンサブルな方向になりました。スタジオの中で、踊りながら作ってました。
EMTG:ピアノのグルーヴ、最高です!
黒木:コミカルな音もけっこう入ってるんですよ。サビの前にピアノだけ残るフレーズとか、「8時だョ!全員集合」(註1)感がある(笑)。バラエティを見ながら家族で爆笑してるみたいな、平和な愉快さが出ましたね。ニューオーリンズみたいなフレーズでもあるんだけど、どこか日本人になじみがあるような、おとぼけテイストがある。
EMTG:今回は全曲そうだと思いますよ。いい意味で余裕を感じる曲ばかり。カップリング「おんな・おとこ・おんな」は?
黒木:カップリングだから、もっとふざけようという意識もあって、最初は「三つ」という仮タイトルだったんですよ。すべての歌詞がひらがな三つで構成されている。あとで大サビをつけたので、大サビは四つに統一したんですけど、文字数縛りから始まった曲です。
EMTG:それ面白い。
黒木:三文字探し、超楽しかった! 内容は、子供でも歌えそうなメロディに、びっくりするようなことが歌われているという。世の中の話題は不倫がトレンドだから、そういう歌にしようと(笑)。それぞれの三者の設定として、主人公と相手の男性との関係は秘密の関係で、そこにもう一人の存在が出てくる。私は三角関係の設定で書いたけど、解釈は無限になっていくと思うので、聴いた人の感想を聞くのがめっちゃ楽しみです。これは本当に楽しかったですね。“むかつく/あばずれ”とか今言いませんからね(笑)。
EMTG:確かに(笑)。
黒木:昼ドラのドロドロ感を出したかったんですよ。“この泥棒猫!”みたいな(笑)。あれって主婦から見るとすごく面白いと思うんですよ。下世話だけど、面白いからみんな見たがる。女の人が髪の毛をつかみあって争うみたいな、そういうシーンを書きたかったんですね。
EMTG:そして3曲目「カイワレ」ですよ。なんでしょうか、このかわいらしさと物悲しさの見事なバランスは。
黒木:これはめっちゃ笑いながら作りました。そもそもカイワレという植物は常に脇役だなと思ってたんですよ。今日は晩御飯にカイワレ食べたい~って、あんまり言われたことないだろうなと(笑)。
EMTG:あはは。ないでしょうね。
黒木:そのことについてカイワレはどう思っているのか?と考えると、きっともう腹が立つとかいうレベルは超えていて、あきらめの姿勢で生きてるんじゃないか?と。自己主張はすごく控えめで、はかなげな微笑みで世の中を見ている。“でもそういう人いるよな”と思って、そういう人と重なればいいなという思いで書きました。
EMTG:そうなんですよね。結局、人間や人生のテーマに寄っていってる。
黒木:うん。中身がカラッポだと意味がないので、一段深く考えてもらう部分は残しつつ、ふざけた部分もありつつ。この曲、最初はアコギの弾き語りだったんですけど、それをどうアレンジするか?となった時に、スーパーの鮮魚コーナーで ♪さかなさかなさかな~とか、流れてるじゃないですか。そういうタイプの愛され方をしたいなと思って、アコーディオンを入れて、ちょっとしたチンドン屋みたいにしたかったんですよ。
EMTG:コミカルだけどせつない感じ。
黒木:この曲がリリースされて、全国のスプラウト業界のみなさんに受け入れてもらって、私がカイワレ大使になって、タスキをかけて、各スーパーを回ることになると思うんですよ。妄想の世界では(笑)。横にアコーディオンの人が一人ついている、そのスタイルがすでに侘しいじゃないですか。その横に、気持ち悪いカイワレのゆるキャラがついていてチラシを配っているという、面白かわいそうな情景がありありと浮かんでいて、その絵を徹底的に音に変換しようと。カイワレ食べてください!というドサ回り感を出そうというのがテーマでした。
EMTG:すごいなあ。マーケティングまで網羅している(笑)。そして4曲目「ふりだし」は? これだけ声が違って聴こえるんですけど。すごいエモーショナル。
黒木:この曲だけ、レコーディングの時期が違うんです。「君が私をダメにする」と同じ時かな。どっちをリードにするか?ということになって、あの時は「君ダメ」でよかったと思うんですけど、こっちもすごく好きな曲でとっておいたんです。年齢は20代後半から30代女子の恋愛で、長くつきあってる人がいたんだけど、だらだらやってるのをもういい加減にけじめをつけなきゃというストーリーで、芝居の脚本ぽい感じですごく気に入ってます。歯ブラシの片づけとかも、自分の身に覚えがあるので。新しいスタートを切るつもりでいるけど、次の恋愛についてはまだ想像もできない。まだ混乱している心理状態を歌ってます。
EMTG:サビの歌詞は相当ヤバイですよ。乱れに乱れて狂気の沙汰、とか。
黒木:やけっぱちになるんですよ。別れた直後ってそうなるんです。まだ好きなのに別れざるをえないという状況になったら、“愛なんてどうでもいい!!”みたいな、真面目に尽くしてきたのがバカみたい、とか、そういう発想になるんですよ。この主人公はたぶん真面目に結婚とかを見据えてつきあってきたと思うので。私もそういうタイプで、お付き合いすると真面目にそこまで考えるので。同じように、止まり木みたいに恋人を作らないタイプの女子が共感してくれるのかな?と思います。
EMTG:という4曲入り。変わらぬ信念の上に、余裕とユーモアを感じるサウンドが加わって、すごくいいシングル。4月23日からのツアーもそういう感じになる?
黒木:いや~、ふざけないわけにはいかないかなと。今までにないポップな演出をしつつ、締めるところはしっかり締める。いろいろやってみたいと思います。会場が大きいので、今まで遠慮してきた仕掛けとか装置とかも使えるし、最後はみんなが爽快な気持ちで帰れるようなステージを作りたいと思います。
EMTG:♪チクショーチクショーふざけんな、のコーラスは、やらないわけにはいかないし。
黒木:チクショー児童合唱団と呼んでるんですけど(笑)。でも“チクショーふざけんな”って、言ってみたくないですか? 悪乗りですけど、そんなコーラスを全員で歌えるのは楽しいと思うので。みなさんぜひ参加してください。

註1・1969年から1985年にTBS系列で毎週土曜日20:00~20:54に放送されていた“ザ・ドリフターズ”主演の国民的人気コント番組。生放送にこだわり、入念に練り込んだコントや、大仕掛けの屋台崩しに代表される豪快な落ちなど、出演者たちの身体を張った笑いが、小学生を中心とした老若男女を問わず幅広い層の視聴者に熱狂的に受け入れられた。

【取材・文:宮本英夫】

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ビデオコメント

リリース情報

ふざけんな世界、ふざけろよ(初回限定盤A)[CD+DVD]

ふざけんな世界、ふざけろよ(初回限定盤A)[CD+DVD]

2016年04月06日

ラストラム・ミュージックエンタテインメント

[CD]
1. ふざけんな世界、ふざけろよ
2. おんな・おとこ・おんな
3. カイワレ
4. ふりだし

[DVD]
(Music Video Clips vol.1)
1. あたしの心臓あげる(Full Version)
2. 骨(Full Version)
3. はさみ(Full Version)
4. 革命(Full Version)
5. レスポール(Lyric Video)

お知らせ

■ライブ情報

黒木渚 ONEMAN TOUR 2016 SPRING「ふざけんな世界、ふざけろよ」
2016/04/23(土)【福岡県】DRUM LOGOS
2016/05/07(土)【北海道】札幌Sound Lab mole
2016/05/15(日)【宮城県】仙台darwin
2016/05/21(土)【愛知県】名古屋ボトムライン
2016/05/22(日)【大阪府】UMEDA CLUB QUATTRO
2016/06/03(金)【東京都】国際フォーラム ホールC

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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