6月1日に行われた、吉井和哉『Flowers & Powerlight Tour 2011』のライブをレポート!
吉井和哉 | 2011.06.23
前作『VOLT』から約2年ぶりとなる6枚目のフルアルバム『The Apples』。このアルバムは本来ならば3月30日にリリースされる予定であったが、3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震の影響で発売延期となり4月13にリリースされたのだ。この地震の影響でアルバムだけではなく、4月2日の市原市市民会館から予定されていた『Flowers & Powerlight Tour 2011』も市原・新木場・仙台2カ所・宇都宮・大宮・青森の7カ所が公演中止となったのだ。 東北地方太平洋沖地震が日本に、いや、世界に落とした悲しみは果てしなく深い。
ツアーを楽しみにしていたファンはもちろんのこと、吉井も深く心を痛めていたようだ。
この地震後、多くのアーティストの取材を通し、表現者である彼らがどれほど心を痛めているか、自分たちが今何が出来るのかを自問自答しているかを知ることとなったのだ。
“娯楽”である音楽や映画。舞台やライヴ。エンタテイメントな仕事に関わる者の心の中には、自粛すべきか否かの葛藤があったことだろう。吉井もその1人であったと思わせる言葉を、彼はこの日何度もMCで口にした。
6月1日NHKホール。
吉井和哉は13年ぶりにこの場所に立った。
アルバムの1曲目を飾っているインストナンバー「THE APPLES」に、オーディエンスのハンドクラップが乗った最高のオープニングでステージに登場した吉井は、一発目から気だるいギターが唸る実に“らしい”ナンバー「ACIDWOMAN」を届けた。間奏ではフライングVでリードを取る吉井。アルバムの流れ通りに届けられる楽曲たちが、リアルにアルバムから飛び出してきた瞬間だった。間髪入れずに届けられた「VS」では、ギターを置きハンドマイクで唄う彼の粘りある独特な歌声が会場中に響きわたった。バックのヴィジョンには「VS」のPVでも使用した映像。今回のツアーは、特別な照明を用意して挑む予定が節電などの関係もあり叶わなかったというが、そこが叶わなかったからと言って物足りなさが生まれてしまうモノでは決してなかった。
今回のライヴは、アルバム曲を中心に届けられた楽曲たちの中に差し込まれる形で、THE YELLOW MONKEYの「球根」や「バラ色の日々」が歌われた。
“いろんなことを感じてもらえる曲を用意してきました---”
そう言った吉井の言葉の意味を、深く感じたセットリストであった。
そして。彼は本編最後にこう言った。
「このNHKホールにも神様は居るね。自分たちがここで音楽をやらせてもらえていることは本当に素晴しいことだと思います。3月11日に大きな地震が起こって、僕自身すごく怖かったし、感じたことのない感情が込み上げてきたし、アルバムが延期になったり東日本のツアーが中止になったりして、本当に大変なことになってしまったけれど、そんな中ですごく大切なことを見つめ直せることが出来たし、こうして充実した時間を過ごさせてもらっていることを感謝します。僕自身心がすぐ折れる弱い人間なんですが、みんながこうしてここに来てくれることで強くなれるし、前よりも強くなれたと思います。約束します。今回中止になった県は年末に必ず行って来ます。なので、国際フォーラムでは終わりません。なるべくみなさんの前で演奏して歌っていきたいと思います。来てくれたら、いつでも吉井和哉はステージに生えてるんで。これ以上、酷くならないように歌いたいと思います---」(吉井)
この言葉の後に届けられたのは「LOVE & PEACE」。今年の2月にリリースされた最新シングルだが、この日ここで聴いたこの曲は、不思議と“現在を生きる私たち”の胸に深く入り込んできた。
震災前に付けられたというツアータイトルの『Flowers & Powerlight』。Flowersはこうして集まってくれたり吉井の音を求めてくれる“みんな”を指し、Powerlightはスラングで“創世記”という意味だという。
“みんながここに来ることで強くなれたら”
そんな想いで吉井が付けたタイトルだが、このタイトルもまた“現在を生きる私たち”へのメッセージのように思えてならない。
アンコールでは「CHAO CHAO」「WEEKENDER」らが届けられたのだが、「CHAO CHAO」では曲中でツイストの「燃えろいい女」のフレーズを差し込んだり、「WEEKENDER」ではギターソロを弾くBURNYの後ろに周りこみシールドでイタズラをするなど、ライヴを手放しで楽しむ姿を見せてくれた。
本編よりも、より素顔の吉井和哉でステージ立っていた彼がアンコールのラスト曲に選んだのは「FLOWER」。サビで吉井の歌声に重ねられたオーディエンスの声を聞いたとき、吉井はみんなの元気の素であると同時に、吉井の元気の素はこうして集まってくれるみんなであることを知った。
“ありがとう! 自分を愛してね!”
彼はこの曲の中でと叫んだ。
“また会える日までキレイに咲いててほしいと思います!”
愛しい“みんな”へのメッセージは自分へのメッセージ。そう受け取れた。そして来年もアルバムを作ろうと思っていると約束した吉井。あたたかい時間だった。寂しくなったとき、心が折れそうになったとき、この空間が存在していることが力になってくれるだろう心強さを感じた時間だった。
吉井和哉がこの時代に生まれ、唄を届ける表現者となった運命と意味。
吉井和哉である意味。
そんな原点と吉井和哉という人間の深い部分を感じた夜だった。
これからも彼の笑顔と唄が、みんなの笑顔と元気の素になりますように---。
【文:武市尚子】
【撮影:MITCH IKEDA】

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リリース情報

The Apples
2011年04月13日
EMIミュージックジャパン
1. THE APPLES
2. ACIDWOMAN
3. VS
4. おじぎ草
5. イースター
6. CHAO CHAO
7. ロンサムジョージ
8. MUSIC
9. クランベリー
10. GOODBYE LONELY
11. LOVE & PEACE
12. プリーズ プリーズ プリーズ
13. HIGH & LOW
14. FLOWER
■DVD
1. ACIDWOMAN(YOSHII BUDOKAN 2010)
2. リバティーン(YOSHII BUDOKAN 2010)
3. おじぎ草(YOSHII BUDOKAN 2010)
4. LOVE & PEACE(VIDEO CLIP)
5. VS(VIDEO CLIP)
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INFORMATION
YOSHII KAZUYA
Flowers & Powerlight Tour 2011
◆2011年6月25日(土)
沖縄 ナムラホール
[問]PM AGENCY
098-898-1331
◆2011年6月30日(木)
東京国際フォーラムホールA
[問]ソーゴー東京
03-3405-9999
◆2011年7月1日(金)
東京国際フォーラムホールA
[問]ソーゴー東京
03-3405-9999
◆2011年7月3日(日)
仙台RENSA
[問]GIP
022-222-9999
※詳しくはホームページをご覧ください。









