CHEMISTRY、10周年記念ツアーのファイナルで2人の表現欲を確認。
CHEMISTRY | 2011.07.28
本年、デビュー10周年を迎えたCHEMISTRY。3月に発売した10周年記念ベストアルバム『CHEMISTRY 2001-2011』を携え、アニバーサリーツアー“CHEMISTRY 10th Anniversary Tour-Neon-”をスタートさせた彼ら。そのファイナル公演は、さいたまスーパーアリーナ2DAYSであった。その2日目、ツアー最終日。1時間に渡り、2人が歌いまくる圧巻のメドレーを含み3時間以上のステージ。これまで刻んで来た歴史とともに、自分達のネクストをしっかりと提示したこの日のステージは、CHEMISTRYの2人にとっても、観客にとっても、ひとつの起点となるライヴだったように思う。
17時10分。さいたまスーパーアリーナが、スッと暗くなる。大歓声とともに、観客が手にした“neon”(ツアーグッズ。白、ピンク、青、黄色のサイリウム)が、激しく揺れる。ステージを覆っていた白色のスクリーンに鮮やかに、リズミカルに映し出されていくのは、元素名と、2001、2002……といった、彼らの活動をイマジネーションできるようなキーワード。ステージのライティングが、どんどん派手になっていく。スタートする生音のイントロ。まばゆい白い光。発光したかのようにボリュームアップするオーヴァーチュアー。その中央、大きなセットの壇上に、せりあがってきたのは、堂珍嘉邦と川畑 要のシルエットであった。ばらばらだった歓声が、ひとつにまとまり大きなうねりになっていく。2人のシルエットが、同時に少し上を向く。ピタリとポーズ。ステージバックのスクリーンに、タイピングの音とともに、待っていた瞬間を告げる、こんな数字が映し出されたーー20110710。
大歓声が、大きな波になり、ステージに向かう。バーッと明るくなるステージ。シルエットにスポットがあたる。2人が目の前で実像になり、動きだす。堂珍が叫ぶ。「みんな楽しもうぜ!」この声に重なるように、川畑はサウンドに合わせて、ファルセットでフェイク。次の刹那、2人は大観衆をしっかり見据え、ためていたエネルギーを解放するように、歌声を解き放った。「MOVE ON」。彼らのライヴではお馴染のナンバー。低音が響く、ファンキーなダンスチューンだ。この大音量のバンド演奏の、その上を2人の歌声が堂々と駆け抜けて行く。しかも、しっかりとお互いの声の輪郭を残したまま、だ。途中、上段から駆けおりてきた堂珍と川畑。4人のダンサーを従えたダンスで、歌いながら、広いステージの空間を、じつにスムーズに華やかに彩って行く。その姿に、彼らのこんな宣誓が見えた気がしたーーこれがCHEMISTRYの現在、これが今の俺達のエンターテインメント・ショウだ、と。
アニバーサリーツアーという事もあり、懐かしい曲も惜しみなく披露したこの日のライヴ。2人の歴史を今の2人が体現するという意味では、大きなポイントが2つあった。まずひとつはカバー曲。デビュー当時に歌番組でカヴァーした、Smokey Robinson and The Miraclesの「Ooo baby baby」を、アリーナ中央の花道の先端で、ソファーに寝そべったりしながら歌った。曲を披露した後、堂珍が「ファルセットキングの歌でした」と、このカバー曲を紹介していたが、この言葉がすんなり腑に落ちるほど、2人のファルセットは、とても自然であった。この事実は、彼らのボーカリストとしてのスキルが、この10年の間に、格段に進歩している証拠ではあるまいか。後日、今の感想を本人達に伝えたら、個々に言葉を交わしたにも関わらず、2人から、同じ答えが返って来た。
「それぐらいは出来てないと。前よりうまくなっていないと、ずっとやっている意味がないですから(笑)」 言った後に、薄く笑ったのも2人同様であった。
もうひとつのポイントは、冒頭でも触れたが、1時間に渡るメドレーである。曲と曲とのつなぎや、フックでワンフレーズだけ入っていた曲も含めると、じつに34曲(!)のメドレーであった。ステージ中央、さらに左右に設置された巨大なビジョンを存分に使い、ミュージックビデオや、リリース年のライヴ映像なども、織り込まれた、まさに耳と目と、そして音圧で彼らの歴史を体感できる構成であったが、その中でも、個人的に面白かった点がいくつかある。ひとつは、同じ曲を歌っていても、当時のミュージックビデオでの表情と、今の表情がまったく違う事。ミュージックビデオの収録とライヴの違い、加えて経験値からの余裕というところもあると思うが、その表情の差は、彼らの中で楽曲に対する解釈に変化が出てきている事を、即座に想像させるくらいの違いであった。
さらにメドレーを聴いていて、個人的にいちばん面白かったのが、CHEMISTRYというグループの音楽性の変遷が、耳だけではっきりとわかるところである。特に後半・2006年以降のメドレーに顕著で、爽やか系ポップスからいきなりディープなソウル、壮大なバラードと、2人がこれまで、本当にいろんなタイプの歌をしっかりと歌ってきた事が、再確認&発見できるものであった。メドレーが終わった後、素直に心の底から、2人に“お見事!”と拍手を送る自分がいた。
10年間を鮮やかに再現したメドレーの後は、再びダンサー4人が登場し、2010年以降のCHEMISTRYのスタイルへ。カラフルでハウスの赴きもあるアップチューン「Go Alone」、ロックな「TOGETHER」、メロディアスでロマンチックなダンスナンバー「My miss Universe」、力強い「Now or Never」と、畳みかけるようにショウアップされた4曲を披露。大観衆も、大声で歌い、サイリウムを揺らし、踊りながら、本編終盤を思う存分楽しんでいた。 アンコールでは、8月10日発売の新曲「Independence」も披露。7月10日、ツアー最終日で、初お披露目となったこの曲のタイトルを、2人は曲前のMCで、観客を巻き込む形でしっかりと紹介。観客に「Independence!」とコールさせ、笑顔で歌い始めるという、そこにいる誰もが、思わず笑顔になるような、予定になかった鮮やかなサプライズを決めた。シンプルで、どこか牧歌的な趣も感じられる優しいバラードでありながら、メッセージ色も濃い新曲「Independence」は、大観衆に、彼らの次の1歩を予感させるにふさわしい1曲だったのではあるまいか。
初めて耳にする曲なのに、しっかりとすべての歌詞とその意味を響かせる事ができるあたりは、さすがのボーカル力だと思ったし、これこそ、CHEMISTRYのライヴならではの強みだと痛感した1曲であった。
この強みがあったから、彼らはこれまで歴史を刻む事ができたのだろうし、この強みがあれば、これからもしっかりと、歌とともに歴史を刻んでいくことができるのではあるまいか。
この日、本人達の口から、この秋?冬にかけそれぞれのソロツアー、来年2012年にCHEMISTRYとしての次なるツアーも決定している事が発表された。
10年かけ変遷してきたCHEMISTRYのスタイル。それは、堂珍と川畑、それぞれの中にあった、音楽的ルーツや自己表現欲といった潜在意識が、少しずつ表面化してきた結果だろう。己の中にある表現欲を、それぞれが体現できるようになってきた。そう実感できる、7月10日のファイナルライヴだった。
だから私は、今、こんな事を思う。
CHEMISTRYって、これからの方が、断然、面白くなってくるんじゃないの?ってね?
【 取材・文:伊藤亜希 】
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リリース情報
セットリスト
- MOVE ON
- merry-go-round
- Shawty
- 君のキス
- why
- 愛しすぎて
- Ooo baby baby(カバー)
- 最後の夜
- ELEMENTS MEDLEY(all singles Medley) PIECES OF A DREAM
- Go Alone
- TOGETHER
- My miss universe
- Now or Never ENCORE
- a better tomorrow
- Independence(8/10 発売 新曲)
- Be Yourself
- TWO
Point of No Return
You Go Your Way
君をさがしてた
My Gift to You
SOLID DREAM
It Takes Two
Let’s Get Together Now
FLOATIN’
アシタヘカエル
YOUR NAME NEVER GONE
白の吐息
Long Long Way
mirage in blue
So in Vain
Wings of Words
キミがいる
almost in love
約束の場所
Top of the World
遠影
空の奇跡
輝く夜
This Night
最期の川
Life goes on ~side K~
恋する雪 愛する空
a Place for Us
あの日・・・
Once Again
Shawty
Period
Keep Your Love