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デビュー5周年の秦 基博が東阪福でアニバーサリーライヴを開催。日本武道館をレポ!

秦 基博 | 2011.11.18

 開演前のBGMは、いつもはアーシーなロックなのだが、この日はルパート・ホルムズの1979年の大ヒット「エスケープ」がかかったりして、ちょっとオシャレな雰囲気の武道館だ。

 このところ、秦のライブを見て思うのは、「この人のメンタリティは“日本人”じゃないかも?!」ということだ。声量や喉の強さ、そして度胸は、並外れている。たとえば秦の名物ライブ“GREEN MIND”にしても、大きな野外会場にアコースティック・ギター1本で挑む。その際の秦は、まったく物怖じせず、かえって楽しそうに演奏し、歌ってのける。あるいは、当初はステージであまりしゃべれなかったのに、最近はたあいもない話を飄々と語ってのける。

 さて今回の5周年を記念する武道館では、どんな外人っぷりを見せてくれるのか(笑)。

 秦はたった一人で現われ、ステージ中央の椅子に座る。「ようこそ」とひとこと言って、アコギのコードをじゃらんと鳴らす。バックの真っ赤なカーテンに、黒いシャツがよく映える。ギターのチューニングや音響、自分の声も含めて、隅々まで確かめるように「青い蝶」を歌う。緊張よりも、これから始まるライブに向けての準備を優先させているように見える。いい度胸だ。こちらも思わず、微笑んでしまう。

「改めまして、こんばんは。秦 基博です。5周年ライブということで、非常にラフな格好でやってきました(笑)。前半はアコースティックで、ゆっくりと楽しんでいただこうと思ってます」。

 “準備”を済ませた秦は、「青い蝶」での6本の弦を一度に弾くコード・ストロークとは対照的に、1本1本の弦を指で弾くアルペジオという奏法で「やわらかな午後に遅い朝食を」を奏でる。繊細なタッチも、彼の得意とするところ。ベースを加えた柔らかなサウンドで、2曲目にして武道館全部を音楽に集中させる。4曲目「風景」で、喉は完全に開き、武道館全体が秦の声に共振したのだった。

「楽しんでますか? 5年間でいろんなことが変わって行きました。いちばんは“見た目”。大人になったというか」と笑いを誘い、リラックスした雰囲気になる。「いつも新しい自分でいられるよう、いろんなチャレンジを今もやってます。その中で揺るがないものもある」と、自身の5年間を振り返る。
 選曲の妙もあって、ファンも秦とともにキャリアを確かめながら進行されるのが楽しい。前半の中で最も華やかだったのは08年のアルバム『ALRIGHT』からの「バイバイじゃあね」だった。ドラムも入った5人編成で盛り上がる。反対に、秦ひとりでじっくり聴かせたのは、10年1月にリリースされたシングル「アイ」。ギターのアルペジオも美しく、前半最高のラブソングのパフォーマンスになった。

 前半と後半の間の15分間のインターバルでじっくりステージを眺めてみれば、黒と赤を基調にしたフロアの上に、楽器が並ぶシンプルなもので、やはり“外タレ”のようだ。

 後半はバンド・セットで、「今日もきっと」などアップなナンバーをタイトなドラムがリードしていく。まだまだエネルギー有り余るオーディエンスたちは、立ち上がってリズミックな秦の歌を大いに楽しむ。そのリズムが素晴らしかったのは、「色彩」。バンドのロック・スピリットと、秦の歌心が見事にマッチする。
 新曲の「トラノコ」は、シンプルで楽しい最近の秦の傾向を映した曲。オーディエンスはハンドクラップで参加する。そうして秦のボーカルが伸びやかに会場を包んだのは「シンクロ」だった。

「たった5年ですけど、またこうして武道館のステージに立てて、みんなに会えて本当に嬉しいです。シンガーソングライターとしてひとりでデビューして、ひとりだからこそ沢山の人に支えられている。ソロは孤独に見えるかもしれませんが、その分、沢山の人に出会える。これからもみんなに届く歌を歌いたいと思ってます」。

「朝が来る前に」は低音の声をしっかりと響かせ、ラストの「鱗(うろこ)」では爆発的な声の伸びを聴かせる。そんな踏ん張りに寄りそうように、秦の創作活動の名パートナー久保田光太郎が心のこもったギター・ソロを捧げる。最高の締めくくりとなった。

 ツアーTシャツを着て寛いでのアンコールが進む中、秦のこの2度目の武道館を思う。よく「武道館でのライブが目標」と言うアーティストが多いが、秦はその類ではない。秦にとって武道館は、目標でも目的でもない。彼はひたすら、そこで歌うことしか考えていない。そんな秦のメンタルに気付いて、改めて頼もしく感じたのだった。

【 撮影:笹原清明 】【 取材・文:平山雄一 】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 秦 基博

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セットリスト

  1. 青い蝶
  2. 夕凪の街
  3. やわらかな午後に遅い朝食を
  4. 風景
  5. dot
  6. アゼリアと放課後
  7. 最悪の日々
  8. バイバイじゃあね
  9. アイ
  10. 虹が消えた日
  11. 今日もきっと
  12. トレモロ降る夜
  13. フォーエバーソング
  14. SEA
  15. 色彩
  16. 赤が沈む
  17. トラノコ(※新曲)
  18. キミ、メグル、ボク
  19. シンクロ
  20. 朝が来る前に
  21. 鱗(うろこ)
  22. 僕らをつなぐもの
  23. 花咲きポプラ
  24. 水無月

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