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さかいゆう、最新ツアーのセミファイナルをレポート

さかいゆう | 2012.06.15

 アルバム『How’s it going?』を引っ提げての全国ツアー。この最新アルバムはピアノ、ベース、ドラムというギターレスのトリオがサウンドの要になっている。ということで、ライヴもギターレスのトリオで、さかいゆうワールドが表現された。参加アーティストはアルバムでもプレイしている実力派の2人、ベーシスト種子田健とドラマーFUYU。

 そして。改めて言うまでもないが、さかいゆうは非常に才能あふれるアーティストである。作る楽曲のセンスは洗練されているし、ピアノのテクニックと表現力も抜群。様々な楽器を操り、何より“シルキーヴォイス”と称される歌唱力あるその歌声は、透明感があり聴いていて純粋に気持ちよく、唯一無二。

 つまり、何が言いたいかというと、そんな天才さかいゆうと2人の実力派ミュージシャンが生で音をぶつけ合い化学反応を起こすであろうライヴは、きっといいものになる。そう予想していたら……“いい”どころではなく、予想をはるかに超えて、“恐ろしくいい!!”ライヴだった。

 ツアー・セミファイナル@恵比寿リキッドルーム。会場は超満員だ。オープニングは最新アルバムの中から「Jammin’」。1曲目から、さかいの歌が光る。ソウルフルで声量もハンパじゃない。また、さかいのピアノと種子田のベース、FUYUのドラムが1つになった音は、たった3つの楽器が鳴らしているとは思えないくらい厚みがあり躍動的。序盤はそのまま最新アルバムからの曲が続く。「Lalalai ?幡多弁ver?」では、歌はもちろん、エンディングの演奏もエキサイト。ワクワクするほどのグルーヴがうねりだした。

「恵比寿! I love you! 次の曲は6月13日にリリースされる福耳のニューシングル“LOVE&LIVE LETTER”です。でもモノマネしそうで怖いんだよね(笑)」と言って、福耳のメンバーである山崎まさよしの歌マネをして笑わせる、さかい。「では今日は、さかいバージョンでお届けします」。と続け、歌われた「LOVE&LIVE LETTER?さかいゆうtrio ver.?」は優しく奥深く、さかいの歌声がジーンとするほどあたたかかった。

 中盤は、バラードをじっくりと聴かせ、「夏のラフマニノフ」ではいったん種子田とFUYUがステージを去って、さかい一人で弾き語り。再び種子田とFUYUをステージに呼び込んだあとは、「この2人と出会ったのは、尊敬するMISIAさんのライヴで。MISIAさんの歌が素晴らしいのはもちろん、この2人の演奏があまりにも素晴らしすぎて、口説き落としました(笑)」と語り、リスペクトを込めてMISIAの曲「つつみ込むように…」をカバーする。超高音も伸びやかに響かせて、MISIAの曲をしっかり自分の曲にしているあたり、さすがだ。さらには「さかいゆうの知られざる名曲シリーズ」と称して、信近エリへ提供した「きみなんだ」のセルフカバーも。しかも「きみなんだ」の“きみ”にお客さんの名前を当てはめて歌ったりして、遊び心もたっぷり。素晴らしい歌と演奏に加え、メリハリの効いた構成は、オーディエンスを一瞬たりとも飽きさせない。

 後半戦。「サンバ☆エロティカ」ではオーディエンスとのコール&レスポンスも入れながら盛り上がり、更には、高揚感溢れる自身の曲にスティーヴィー・ワンダーの曲を交え、メドレーにした「ケセラセLife+superstition」では、トリオの化学反応が最高潮に達し、会場には熱気とグルーヴと高揚感が充満。大歓声が沸き起こった。

 そんな中、この日のクライマックスは、なんといっても本編ラストの「君と僕の挽歌」だ。歌う前に、帽子を脱いださかいは「どっから話しましょうか」と切り出し、この曲が生まれた経緯を話し出した。それはこんな内容だった。

 さかいには高校時代、ミュージシャンを目指していた親友がいた。さかいはギターも何の楽器も弾けず、将来自分が歌うことになるとは夢にも思っていなかったが、2人は気が合い、よく他の仲間と共に溜まり場でCDなどを聴いて一緒に遊んでいた。ところが、その親友は高校の卒業式から三日後に交通事故で他界してしまう。さかいは溜まり場で仲間たちと、彼の亡骸(なきがら)と三日三晩過ごし、そこで人生の3分の2ぐらいの涙を流したあと、翌日、火葬場へと向かう。その途中のことだった。神の声だか何だかわからないけれど、いきなり「おまえはミュージシャンになれ」という声がどこからか聞こえてきた。さかいは戸惑ったものの、次の瞬間“よし、俺はあいつの代わりにミュージシャンになろう”と、決意したのだという。

「これでよかったのかな……って、空に向かっていつも自問自答しているんですけど。それを歌にしたのがこの曲です」。そして放たれた「君と僕の挽歌」は、歌詞(ことば)が、さかいの想いがまっすぐ伝わってきて、心と涙腺を直撃した。楽曲のセンスがとか、演奏がとか、もちろんそれらが秀でているから歌もより明確に伝わってくるわけだが、しかしそういった理屈ではなく、ただただまっすぐ想いが伝わってきて、聴き手の心を激しく揺さぶった。名曲とは、そういうものだ。会場には自然と大合唱が起こり、それも感動的だった。

 アンコールでは「2曲いきます」と宣言して2曲投下……したものの、当然のように拍手は鳴り止まず、「特別だぞぉーーっ!」と茶目っ気たっぷりに言って、もう1曲「ストーリー」を歌い、この日のライヴを明るく締めくくった。

 ポップで、グルーヴィーで、ファンキーで、ソウルフルで、ジャジーで、繊細で、ダイナミックで……と様々な要素が詰まった、楽しく芳醇な2時間だった。 “How’s it going?”と聴かれたら、その場にいた人たちは全員“Great!”と答えただろう。それは間違いない。うれしそうに満面の笑みで手拍子するみんなの顔に、しっかりそう書いてあったから。

【取材・文:赤木まみ】
【撮影:古賀恒雄】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル さかいゆう

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リリース情報

How’s it going?(初回生産限定盤)

How’s it going?(初回生産限定盤)

2012年05月23日

アリオラジャパン

ディスク:1
1. Intro
2. Jammin’
3. パスポート
4. LOVE & LIVE LETTER ~さかいゆう trio ver.~
5. もしも あの朝に…
6. Lalalai
7. ペテン師と臆病者
8. How Beautiful ~English ver.~
9. サンバ☆エロティカ
10. されど僕らの日々
11. 君と僕の挽歌 ~Album ver.~
12. パズル
ディスク:2
1. 上を向いて歩こう
2. ROCK WITH YOU
3. train
4. 故郷(ふるさと)

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セットリスト

     
  1. Jammin’
  2. パスポート
  3. ペテン師と臆病者
  4. Lalalai ~幡多弁ver.~
  5. LOVE & LIVE LETTER ~さかいゆうtrio ver.~
  6. 三日月ナイフ
  7. もしも あの朝に…
  8. 夏のラフマニノフ
  9. つつみ込むように…(カバー オリジナル : MISIA)
  10. How Beautiful ~English ver~
  11. きみなんだ (セルフカバー 信近エリへの提供曲)
  12. されど僕らの日々
  13. サンバ☆エロティカ
  14. ケセラセLife+superstition(カバー オリジナル : スティーヴィー・ワンダー)
  15. 君と僕の挽歌
ENCORE
  1. パズル
  2. Midnight U
  3. ストーリー

お知らせ

■ライブ情報

『How’s it going?』発売記念スペシャルイベント
2012年6月13日(水)タワーレコード渋谷店 B1F「STAGE ONE」

※その他ライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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