レビュー
さかいゆう | 2013.04.23
シルキーボイス。デビュー当時、さかいゆうの唯一無二の歌声を称して使われた言葉である。
その唯一無二っぷりは、透明感の中に生々しさを感じる、クリアーな歌声とでも言えるだろうか。抜群の浸透圧を持った彼の声は、聴く者の聴覚にスッと入り込んでくる。しかも、おそらくほぼ万人の聴覚に対して、違和感ゼロで。この声は、間違いなくさかいゆうの個性で、大きな武器であるが、曲調やメロディーによって、そこにキャラクターが加わってくるのが、彼の面白いところだと私は思う。
彼の歌声の魅力。そして面白さが、これまで以上にストレートに堪能できるのが、ニューシングル「僕たちの不確かな前途」である。2013年第一弾となった新作は、新曲はもちろん、小泉今日子へ提供した楽曲のセルフカバーとなる「100%」、さらに昨年のロンドン公演でも披露したレディオヘッド「CREEP」のカバーなどが収録されている。さかいゆうの“音楽の愛で方”が多面的にわかる1枚と言えようか。
タイトル曲の「僕たちの不確かな前途」は、リズムやサウンドアレンジもコミカルなファンクナンバー。歌声には幼児のような愛嬌たっぷり。他にも。
例えば「ONE WOMAN」はピアノを中心としたアレンジが特徴のバラード。歌声には男の優しさがたっぷり。同じくバラードの「100%」は、ストリングスがフィーチャーされた大人っぽくてスウィートな1曲。女性視点からの歌詞を歌う声には、儚さと強さ、そして性別を超えた可愛らしさがたっぷり。
ほんと、様々なさかいゆうが、たっぷり入っている。でも、いくらたっぷりでも、まだまだ引き出し、あるでしょ? と、思わせちゃうあたりが、彼の音楽家としての才能なのよね。
【文:伊藤亜希】