レビュー
さかいゆう | 2012.04.25
音楽家として、様々な表情を持っている人だと思う。
ドラム、ベース、ギター、ピアノなど、ほとんどの楽器を自らこなすマルチ・プレイヤー。滑らかな歌声を響かせ、魅力的なファルセットも操るシンガー。そして、ソング・ライターとして、クオリティの高いメロディーを、次々と紡ぎ出す。視点を変えれば(例えば、ジャンルの多彩さなど)、まだまだいろんな表情がある音楽家が、さかいゆうであろう。そして、前述した“表情”を、そのまま“才能”と言い変えることができるのが、さかいゆう、という音楽家の素晴らしさだ。
そんな彼がニューシングル「君と僕の挽歌」をリリースした。タイトル曲は、ストリングスのアレンジもロマンチックなバラード。冒頭から叫ぶような、さかいゆうのボーカルが、力強く響く1曲だ。
M-2の「三日月ナイフ」は、80年代の日本のウォール・オブ・サウンドを彷彿させる、ミディアム・アップなシティ・ポップス。タイトル曲とはガラリと変わったメロディライン、ボーカル・スタイルを聴かせてくれる。 そして、M-3の「Lalalai」は、ホンキートンクなピアノが軽快なジャジーなナンバー。ピアノ同様、跳ねるようなAメロも面白いが、フックのあるサビも秀逸。
全曲、さすがのふり幅、全然違う曲調ながら、一貫しているのは、シンガー・ソングライター・さかいゆうのポジション。彼は非常にすぐれたシンガー・ソングライターだったのだと、心底、納得させてくれると同時に、5月に発売されるニューアルバムの期待させる作品になっている。
【文・伊藤亜希】