吉井和哉が昨年行なった「.HEARTS TOUR2012」の最終公演の模様をレポート!
吉井和哉 | 2013.02.26
ざわめく会場。明るい客席とは対照的に、薄闇に沈んでいるステージでは、まだ、スタッフが行き交っていた。スタッフがギターを手にし、開演直前のサウンドチェック。その音に、満員の観客から拍手が起こった。
暗転する会場。観客の期待と興奮が、目の前で雄叫びをあげる。ステージのバック。LEDのスクリーンに映像が映る。モノトーンのビル群、そして街並み。大音量で鳴り響く、エレクトリックでプリミティブなリズム。その音に、電波を探すようなチューニング音が混じる。探しているのは、今宵のロックンロール。今宵の周波数は、吉井和哉?441108?だ。ステージバックには、スクエアの模様。その点が赤く光り、ス―っと線になっていく。視覚と聴覚。自分の中の優先順位が、目まぐるしく変わっていく。吉井和哉がゆっくりとステージに姿を表す。大歓声。12月22日、日曜日。吉井和哉の全国ツアー「.HEARTS TOUR2012」の最終公演が、大阪城ホールで幕を上げた。
オープニング曲「20 GO」。ディープなミディアムチューンにのせ、イントロで吉井和哉が「ハロー、エビバディー」と左手をあげる。この曲の間奏ではテルミンの演奏も披露した。続く「煩悩コントロール」では「今夜は最終日です。思う存分、煩悩を爆発させてください」と叫び、観客を煽る。イントロで白光のライトがスパークした「SPARK」では、ゆっくりとステージを闊歩。その堂々とした姿は、ステージ=ライヴという自らの歴史の一部を、踏みしめているように見えた。
軽く右手を上げ、笑顔で歓声に応えた後、この日、最初のMC。「皆さんの大切な三連休(12月22日?24日までの三連休)の初日を、吉井和哉にくださってありがとうございます」と笑いをとった後、マヤの予言に触れ人類は滅亡しなかったと続け、最後はこう締めくくった。
「新しい時代がやってきたように思います。最後まで思う存分、楽しんで行ってください」
序盤から中盤は、ミディアム・チューン&バラードが続いた。ゆえに、吉井和哉の真骨頂である楽曲アプローチのバリエーションの豊富さが顕著に表れた。ギターのレイドバックが印象的でブルージーな「ロンサムジョージ」。王道のロックバラード「CALL ME」。サイケデリックなディープ・チューン「ノーパン」。英国ニューウェイヴを思わせるトリッキーさも味になっている「BLACK COCK’S HORSE」など、吉井和哉のルーツが咲き乱れ、バンドのダイナミズムも加わり、サウンドそのものが海外アーティストのようだった。
そしてもうひとつ、このセットリストで明確に提示されたことがある。
それは、吉井和哉のメロディーの面白さと、日本詞のマッチ感だ。例えば、こりゃ洋楽だと思ってAメロを聴いている。するとサビで、いきなりドメスティックに展開し、一瞬だけ歌謡ロックになり、その後すんなり元に戻る。かとおもえば、こんなパターンも。同様にAメロ聴いて、洋楽だなぁと思っている。そんな中、ふと、言葉に焦点を絞れば、耳に入って来る歌詞は日本語。でも違和感がまったくない。しかも、日本語の発音を日本語のままでしっかり発音しているのに、だ。
風変りというには強烈すぎる、吉井和哉の個性。彼はこの個性で、ぐいぐいライヴをひっぱっていった。
ライヴは後半へ。会場にいる全員がサビで拳を振り上げ大合唱した「ONE DAY」から、一気にテンポをあげていく。このツアーをやった時点での最新曲「点描のしくみ」では、イントロでタンバリンをシェイク。その吉井和哉の姿に、観客から大きな声が上がる。レーザー光線が、大阪城ホールという強大な空間を“点と線”でつないでいく。観客のテンションが、ものすごいスピードでステージに向かって走って行く。「ビルマニア」ドライヴするギター。ステージバックの映像にはビル。サウンドが止まる。一瞬の静寂。次の刹那、吉井のシャウトと同時にバックのビルが崩れ、闇に溶けた。間奏、バックには再びビルの映像。最後のサビの繰り返し。吉井和哉は、左手で客席を指さすアクションをしながら、観客をあおる。最後には大合唱になった。
「ありがとう、最高!」とMCへ。2013年でソロ10周年ということに触れた後、1月23日にリリースされるベスト盤『18』について、こう言葉を続けた。
「10年かけて完成したニューアルバムのようなベストができました」
客席から大歓声&大きな拍手。充実した、ピースフルなムードが会場を満たしている。
「……ぜひとも来年(=2013年)……借りて聴いてみてください!」
間髪入れず、客席から「えーっ!」の嵐。つーか、会場全体が、かっくん、と肩透かしをくらったのが見えたようだった。爆笑。客席のあちこちから「なんで!」「またそれか!」「買うし!」など、思い思いの突っ込みが入る。その様子を満足げに眺めていた吉井和哉。まぁ、まぁ、というジェスチャーをしながら、このくだりを、ちょっと小声でこう締めくくった。
「聴いていいと思ったら、ぜひ買ってください」
これは、吉井和哉が純粋で猛烈な音楽リスナーであり続けるからこそ、出てきた言葉なのだろうと思う。ギャグにしているが本音だと思うし、それだけ作品に対しての自負もあるのだろう。
そしてまた、この吉井和哉の耳が、彼の楽曲の個性になっているのだとも思った。
本編最後は「10年を振り返って」と、デビュー曲の「TALI」。曲の途中で、その曲調に合わせながらも力強く「幸せになるんだよー」と叫んだ吉井和哉の姿に、人間としてのエネルギーを感じた。
アンコールも含め、全20曲。この日、最後の曲として演奏されたのは「HEARTS」。前述したベスト盤『18』に収録された新曲である。この曲の直前に放たれた、吉井和哉の言葉を紹介しよう。
「10年かけて熱いハートが帰って来たような気がします。よいクリスマス、よい年の瀬をお送りください。今日はどうもありがとう」
2013年2月から全国ツアー「YOSHI KAZUYA TOUR 2013 GOOD BY YOSHII KAZUYA」がスタートする。この意味深なタイトルについて、彼はこう言っていた。
「あくまで“GOOD BY”。だから、GOODをあなたに……です。GOODをもらいに来て欲しい」
吉井和哉の2013年は、もう始っている。
【取材・文:伊藤亜希】
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リリース情報
18(初回盤)
2013年01月23日
EMIミュージック・ジャパン
1. TALI
2. CALL ME
3. FINAL COUNTDOWN
4. WANTED AND SHEEP
5. トブヨウニ
6. HATE
7. 20 GO
8. BEAUTIFUL
9. MY FOOLISH HEART
10. BELIEVE
11. 朝日楼 (朝日のあたる家)
12. HEARTS
ディスク:2
1. 点描のしくみ (Album Version)
2. 煩悩コントロール (Album Version)
3. 血潮
4. 母いすゞ
5. ノーパン
6. ビルマニア
7. ONE DAY
8. バッカ
9. WINNER
10. Shine and Eternity
11. LOVE & PEACE
12. FLOWER
ディスク:3
1. シュレッダー (LIVE)
2. WEEKENDER (LIVE)
3. 黄金バッド (LIVE)
4. 欲望 (LIVE)
5. SIDE BY SIDE (LIVE)
6. BLACK COCK’S HORSE (LIVE)
7. VS (LIVE)
8. 恋の花 (LIVE)
9. Don’t Look Back in Anger (LIVE)
10. スティルアライヴ (LIVE)
11. マサユメ
12. 甲羅
13. ギターを買いに
ディスク:4
1. 点描のしくみ Queen of Hearts 予告編
2. 点描のしくみ Queen of Hearts メイキング
3. LOST -誰が彼を殺したか-
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お知らせ
TOUR 2013 GOOD BY YOSHII KAZUYA
2013/02/27(水)府中の森芸術劇場どりーむホール
2013/03/02(土)山形県県民会館
2013/03/07(木)姫路市文化センター大ホール
2013/03/10(日)鳴門市文化会館
2013/03/13(水)高槻現代劇場 大ホール
2013/03/15(金)とりぎん文化会館 梨花ホール
2013/03/17(日)土岐市文化プラザ・サンホール
2013/03/20(祝)桐生市市民文化会館シルクホール
2013/03/23(土)長野ホクト文化ホール
2013/03/29(金)長崎ブリックホール
2013/03/31(日)大分IICHIKOグランシアタ
2013/04/05(金)茨城県民文化センター
2013/04/07(日)秋田県民会館
2013/04/12(金)苫小牧市民会館 大ホール
2013/04/14(日)旭川市民文化会館 大ホール
2013/04/20(土)下関市民会館 大ホール
2013/04/21(日)佐賀市文化会館
2013/04/27(土)福井フェニックスプラザ
2013/04/29(祝)島根県民会館
2013/05/04(祝)富士市文化会館ロゼシアター 大ホール
2013/05/06(祝)一宮市市民会館
2013/05/11(土)和歌山県民文化期間大ホール
2013/05/12(日)奈良県文化会館 国際ホール
2013/05/18(土)あづま総合体育館
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。