全国を巡ったツアーも、25本目となるこの日でいよいよファイナル。収益金を福島県の復興支援活動に寄付する『YOSHII MARKET』（吉井の私物、衣装、ギターなどが出品された）もライブ会場の隣で13時からオープンし、たくさんのファンが集まっていた。

　開演時間となり、場内は暗転。オープニング映像を経て高らかに響き渡ったSE。その間に日下部正則（G）、三浦淳悟（B）、吉田佳史（Dr）、鶴谷崇（Key）、通称「鴨南蛮ズ」がスタンバイ。1曲目「トブヨウニ」がスタートした。ステージ袖から登場した吉井はビートに乗って軽快にステップを踏み、スタンドからマイクを外して歌い始める。観客も一斉に腕を振り上げて大合唱。その熱気のまま雪崩れ込んだ「点描のしくみ」は、タンバリンを叩きながらリズムを刻む吉井のしなやかな動き、エモーショナルな歌声が観客の興奮を一層激しく煽る。冒頭の2曲の時点で早くもクライマックス級の盛り上がりとなっていた。

　「元気でしたか福島？　ついにツアー最終日を迎えることになりました。個人的にもライブをやるのは15年ぶりの福島です。最高の夜にしましょう！」、観客に呼びかけて「I WANT YOU I NEED YOU」へ。吉井はエレキギターでシャープなビートを刻みながら歌い、鴨南蛮ズと共にエネルギッシュなサウンドを響かせる。さらには「ゴージャス」、「CALL ME」、「朝日楼（朝日のあたる家）」、「シュレッダー」、「LOVE & PEACE」……多彩な楽曲が次々煌めいていく。「雨雲」を歌い終えると、吉井は手を振りながらステージ袖へと入り、鴨南蛮ズの4人もその後に続いた。ステージ上には誰もいなくなったが、メンバー同士のLINEのやり取りが大型ビジョン上でスタート。『YOSHII MARKET』の会場内に置かれている等身大吉井パネルで記念撮影した吉井の写真が映し出されたり、福島出身のTHE BACK HORN・松田晋二からのメッセージ映像も流れるなど、盛りだくさんの内容であった。

　ステージに吉井と鴨南蛮ズが戻ってきて、アコースティックコーナーへ。曲にこめた想いやエピソードの紹介も交えつつ「HATE」、ジョン・レノンのカバー「Working Class Hero」、「CALIFORNIAN RIDER」、OASISのカバー「Don’t Look Back in Anger」、「4000粒の恋の唄」が演奏された。そして、後半戦は「BEAUTIFUL」からスタート。「バラ色の日々」「WINNER」「WEEKENDER」「Shine and Eternity」などは、素晴らしい演奏だったと同時に、観客に向けてのメッセージソング的な意味合いを帯びているようにようにも感じられた。「このツアーが終わったら2年くらい休もうと思ってたけど、やめます。休んでもやることないし。曲と詞を吟味してまた現れます。短い人生、次会う時はもっと綺麗に咲いてください」と語ってから歌い始めた「FLOWER」は、曲中でふと吉井が放った「自分を愛してね」という言葉がとても印象深い。温かいエールを、あの場にいた全ての人が感じたのではないだろうか。

　「これはラガブーリン。ツアーの初日から一緒にステージに立って、いろんな気を吸い取ってると信じてます。今日、バンドと、スタッフと、みんなと乾杯すると約束してた。ここで開けますね」、ラガブーリンのボトルを手に取り、コルク栓を抜いた吉井。軽く一口を味わい、「美味い！」と言って笑顔を輝かせた。「また会いましょう。この曲を聴いて一歩ずつ進んでください」という言葉を添えてスタートしたのは「血潮」。アカペラで歌い、途中で吉田のカホンが合流。吉井の合図で観客、日下部、三浦、鶴谷の手拍子も加わり、会場全体が濃密な一体感で包まれていった。「素晴らしいグルーヴだったので、もう1曲。今日はありがとう。Good night!」と言い、ラストを飾ったのは「JAM」。イントロが始まるや否や歓声を上げて飛び跳ねた観客。全力で歌う人々が揺れる場内を眺めながら、吉井も鴨南蛮ズの4人も、心底嬉しそうな表情をしていた。演奏が終わり、「ありがとう。最高でした」と言ってステージを後にした吉井に、観客からも「ありがとう！」という声が届けられる。爽やかな余韻が広がるエンディングであった。

【取材・文：田中 大】
【撮影：山本倫子】