レビュー
ASIAN KUNG-FU GENERATION | 2012.07.27
鋭ささえ感じさせるアンサンブルに、疑問や現実を綴った歌詞。さらりとしたポップスと言うには伝わり過ぎて、剥き出しのロックと言うには冷静だ。しかし、こういった楽曲ほど、ジワジワと心身に響いていくものである。さらに、普段着なバンドと言えるアジカンだからこそ、こういう日常と地続きである楽曲を、説得力を持って鳴らすことができるのだと思う。《彼が求めたのは/あの娘が流したのは/君が嘆いたのは/他ならぬ 今日だ》という描写の後の、《それでは、また明日》というありふれた言葉にも、ずっしりと希望が籠っているように聴こえてくるのだ。ファンタジーを傍に引き寄せたような前作『踵で愛を打ち鳴らせ』と、実はそう遠くない世界観を描いている気がする。
カップリングの『冷蔵庫のろくでもないジョーク』は、重めなサウンドと、《馬鹿に塗る薬はない》などといった直球な言葉でぶった切るようなナンバー。今のアジカンは、とにかく自分たちができること、やりたいことを追求していこうという意思に満ち満ちているように感じられる。
9月にはニューアルバム『ランドマーク』もリリースされる。来るべき目印(=landmark)の道標と言えるようなシングルだ。
【文:高橋美穂】