レビュー
ASIAN KUNG-FU GENERATION | 2013.02.20
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アルバム『ランドマーク』以来のリリースであり、2013年第一弾シングルとなる『今を生きて』。映画『横道世之介』の主題歌というところも関わっているのだろうけれど、いつになく軽やかだ。後藤正文は「映画を見て、今このときを生きていることを、もっと喜びたいなと思いました」とコメントしているが、日々に漂う季節の花や、夕食の匂いのように、ふんわりと心地よい。小気味いいリフとビート、さらにイェイイェイというコーラスを聴いているうちに、彼らの核を改めて考えさせられた。ロックバンド日本代表といえる立ち位置を自覚していると思えるほど、音楽シーンに刺激を与えたり、強いメッセージを拡散してきた印象が強い彼らだけれど、そもそも、何故その立ち位置に登れたかというと、ポップチューンを生み出す達人だからだ。そんなことを思いながら、ああ、本当に良いバンドだなって、にんまりしてしまう楽曲である。
また、カップリングの『ケモノノケモノ』はH ZETT Mのピアノがきらめき、また違った魅力を引き出している。ユーモアと痛みが混じり合っているところが、何とも後藤らしい。デビュー10周年のはじまりに相応しい一枚だと思う。
【文:高橋美穂】
シングル
男性ボーカル
ASIAN KUNG-FU GENERATION
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