昨秋、セルフカヴァーアルバム『JEWEL』をリリースしたChara。そのタイトルが掲げられた「Chara Special Live“JEWEL”新春初チャラ」の東京公演が、出来立てほやほやの会場、EX THEATER ROPPONGI TOKYOで行われた。年明け早々にハッピーなパーティになりそう！そんな気分で足を運んだ公演はCharaというミュージシャンを改めて信じられるようなライヴとなった。

　2階までびっしりと埋め尽くしたオーディエンスの前に、まずはバンドメンバーが登場し、演奏がスタート。空気をムーディーに染めていく。そしていよいよ、Charaがオン・ステージ！彼女が現れると辺りは照明を一つ足したように輝き、演奏は生き生きと躍動をはじめる。その存在感に、誰もがうっとりと惹き付けられているのがわかる。1曲目は『Junior Sweet』。しょっぱなから、パワフルなシャウトが炸裂だ。

　「元気なの!?」という呼び掛けに、ワー！という大きなリアクション。その流れで、演奏前にオーディエンスに♪イエ?、と歌う練習をさせた成果もばっちり現れた「18」、そして「久しぶりの」と言ってはじまった「Happy Toy」と、『JEWEL』に収録されていない楽曲を、惜しげもなく今夜だけのアレンジで聴かせていく。さらに「お友達を呼んじゃったわ」と、シタール奏者のminakumariが加わり、「しましまのバンビ」へ。その幻想的な音色に酔いしれていると、後半にはギターを抱えたCharaがminakumariと向き合って弾く場面も。こうやってグルーヴを大切にしているところに、フロントマンとしての華やかさだけではない、彼女のミュージシャンシップを感じてしまう。さらには、「歌える？」と、オーディエンスも巻き込んでいく。munakumariは「hug」でも引き続き演奏。特別にゴージャスなセットがなくても、衣装や雰囲気が華やかなCharaがいて、そこで名曲が演奏されるだけで、そんじょそこらのショウよりもきらめいて見える。
　なのに、当の本人は「みんな、会わない間に何かあった？　私は失恋ばっかりしていて。曲ネタになるんだけど」と、フレンドリー且つ、ほんとなの？と疑ってしまうような一言。その後に演奏された新曲が「スーパーセンチメンタル」だったものだから、何だかリアリティがあって沁み入ってしまった。

　ほっこりと温かな「大切をきずくもの」、「ミルク」と畳み掛け、「ノリノリのライヴもいいけど、ゆっくり聴いてもらうのも嬉しいです」と、再びminakumariを呼び込んではじまったのは「Swallowtail Butterfly ?あいのうた?」。『JEWEL』を聴いた時にも思ったけれど、こうしてライヴで味わうと、ますます確信が高まる。名曲は色褪せない。時代が巡るたびに、様々な人たちの思いを含んで、様々な音色が重なって、何度だって生まれ変わるのだ。

　そして「月と甘い涙」では、ステージのバックにはぽっかりと月が輝き、さらにロマンティックに盛り上げる。と、ここまでの10曲は、比較的じっくりと聴き入ってしまうナンバーが続いていたが、次の「恋文」ではイントロから、バンドメンバー総出でハンドクラップ！一気にアッパーな空気へと持っていく。
　……と、思いきや。歌い終えたところで、Charaは急に泣き出してしまった。そして「今日は最低な演奏だ。ごめんなさい。ありがとうございました」と言い、バーッとステージを降りてしまったのだ。戸惑いながら後を追うバンドメンバー。そして、驚きながらも手を叩き「待ってるよー！」、「Chara！」と呼び掛けるオーディエンス。
　15分ほど経って、Charaはステージに戻ってきた。まずはピアノを弾きながら「Tiny TinyTiny」を歌い、「みんな優しいね。Chara、気管支喘息だから、声が伸びないけどいいですか？」と、彼女のアッパーチューンの究極「あたしなんで抱きしめたいんだろう」へ。よくぞあそこからここまで温度を上げた！と思うくらいの熱気に包まれて、バンドメンバー紹介。それぞれが歌ったりソロを引く中、コーラスの加藤哉子は前に出て「罪深く愛してよ」を熱唱！Charaも気に入ったみたいで、♪罪深く愛してよ　フゥー！と何度もオーディエンスに歌わせていた。そして最後は「やさしい気持ち」。文字通り、やさしい気持ちを全員の心に宿らせて、ライヴは大団円となった。

　「あたしって我慢できない女なのよ。でも、そこからヴァイブスが出たらいいと思うの」とCharaは言っていた。この日のライヴで見たのは、人と音楽に誠実であることを選んだ彼女の不器用さと美しさだ。ずっと心に刻まれるライヴとなった。

【取材・文：高橋美穂】
【撮影：amitamari】