ストリングスの織りなす壮大なアンサンブルに、切実な歌詞が映える、Charaのニューシングル

Chara | 2013.06.03

 Charaがニューシングル「hug」をリリースする。NHK BSプレミアムで放送されている、滝沢秀明主演のドラマ『真夜中のパン屋さん』の主題歌として書き下ろされたこの曲は、ストリングスの織りなす壮大なアンサンブルに、切実な歌詞が映える、ゆったりとしたナンバーである。カップリングは、Charaがパーソナリティを務めるNHK-FM『ミューズノート』のオープニングテーマに書き下ろした『永遠』。若手クリエイターmabanuaのアレンジが光る、美しきミドルチューンだ。さらにこの曲は、Chara史上初、自宅スタジオで制作したデモヴァージョンも収録されている。トピック満載な一枚について訊くと、そこに留まらぬ話も溢れ出てきた。

EMTG:アルバム『Cocoon』以来の作品ということで、次のテーマが見えていたところはありましたか?
Chara:今回は『真夜中のパン屋さん』っていうドラマの主題歌ということで、物語ありきっていうところを意識して。でも、自分の作品でも、何らかの書物や映画、あとは自分の親友や家族の誰も知らない物語から影響を受けているわけで、そんなに大きな違いはないんですよね。だから、ここでいろんな人と繋がって、次のアルバムに行くまでにストレッチして、っていう時期かな。夏フェスもあって、いろんなミュージシャンとセッションするし、自分を知らない人の前で演奏するし。そういうところでも、また音楽人生にいろんなものを拾えるなって。デビューして21年目だけど、結構いろいろあるんですよね。最近もTHE NOBEMBERSの小林(祐介)くんにライヴや制作に参加してもらったりするんだけど。だから、今は『Cocoon』……繭の中から出てはいるのかな。どんな姿になったかは、はっきりとは見えないけど、出たっぽい(笑)。
EMTG:いろいろな人と繋がることを大切にされていますよね。
Chara:忌野清志郎さんがお亡くなりになってから、誰かと共演したり共作することを、躊躇せずにやるように心がけてます。私はもっと清志郎さんと一緒にやりたかったの。ああいう人は、他にいないと思うから。こういう後悔はもうしたくないので。そういうことを清志郎さんは教えてくれたのかもしれない。
EMTG:そうなんですね。では、「hug」を掘り下げていってもいいですか?
Chara:『Cocoon』の時から、<いとへん>が気になっていて、その気持ちを引き摺っているから、仮タイトルは『優しい糸』だったんです。
EMTG:「hug」の歌詞にも<いとへん>がたくさん出てきますよね。
Chara:そうですね。歌詞は、『真夜中のパン屋さん』の台本を3話まで頂いて、読んでから書いたんです。ドラマでは滝沢(秀明)さん主役っていうのが印象的かもしれないんだけど、滝沢さんの家にひょんなことから住み出した高校生の女の子が、私的には主役っていうか。同級生から嫌がらせを受けていたりするんだけど、強い意志があって、そこに共鳴できるから。また、彼女にタッキーが父親のように接するんですけど、彼の台詞にも共鳴できるんですよね。あと、サウンド的には、包み込むような感じがあるといいって言われて、ハーモニーワークを考えましたね。だから「hug」になっちゃったんでしょうね(笑)。
EMTG:包み込むっていう?
Chara:そうそう。最近では日本でも、ハグってわかりやすいものになったしね。「キスまではいかないけど、ハグまでだったら…」っていう(笑)。言葉で言えない時はハグって、コミュニケーションとしてとてもいいものだと思うから。
EMTG:タイアップとはいえ、共鳴することが大事なんですね。
Chara:やっぱり、それがないと。「Charaさんのイメージで書いて下さい」って言われることが多いんで、そうするとこの曲の中でも、”私でいていいんだ”って思えるんですよね。ありがたい話ですけど。それでいて、ちょっとそれ以外の曲を作る時とは意識が違うっていう。「この本いいから読んでみなよ!」って友達に渡されるような……この場合は友達ではないですけど(笑)、「絶対これはChara好きだと思う!」って渡されたような感じですよ。
EMTG:細かくアレンジに気を配りながらも、絶対的にキャッチーな仕上がりにはなっていますよね。
Chara:サビは大きいメロディにしたかったんだ。大きいメロディって歌詞がいっぱい言えないんだけど。でも……話が逸れちゃうんだけど、私、チューリップの花が好きで。お日様に向かって真っ直ぐに伸びていく凛とした感じが。そうしたら、童謡の「チューリップ」を作詞したおばあちゃんが、♪どのはなみても、きれいだな♪って……少ないメロディの中に、昭和初期でいろんな差別がある時代に思いを込めたって知って、凄いなって。だから、作詞家として年を重ねていくうちに、シンプルで深い言葉も書いていければなって。今回は……まあ、少ない方(笑)。
EMTG:よく、英詞の方がメロディにはのせやすいって言いますけど、日本語だからこそのせられるメロディもありますよね。
Chara:そうですよね。ちょっと闇がある、でも美しい日本のファンタジーっていうか。言葉の語源とかも気になって、調べると、はっ! としたりするんですよ。<いとへん>が気になった後に、<にくづき>が気になって。体の部位に付いている偏。そんなことも、次の作品に繋がっていったりすると思います。
EMTG:いちいち気になると、いちいち吸収できますよね。
Chara:そうねえ。言葉や音楽を生み出す人って、散歩している人が多いんだよね。何か、わかる気がしませんか?
EMTG:そうなると、アイディアは尽きないですよね。
Chara:まあ、マイペースに生きたいけれど、早くに亡くなられる先輩もいるし、「人生意外と短いのよ」って金子マリさんもおっしゃってて。”そっかあー!”って。
EMTG:そんな話の後に、カップリングの「永遠」の話を訊きたいんですけど(笑)。
Chara:ね(笑)。いや、「永遠」って、よくわかんないから歌ってるんだと思います。これは春からラジオ番組(NHK-FM『ミューズノート』)をやっていて、一人のミューズ、歌姫にスポットを当てているんです。「そのオープニングでかける曲を作ってもらえないか」って言われて。だから、女神チックなイントロにして、そこから作り始めたんです。自宅で録ったヴァージョンも収録していますけど、それをmabanuaに渡して、ちょっとポップに仕上げてもらったっていう。歌詞は、こっちの方は感情に近いから、”何言ってるかわかんないけど、でも、わかる気がする”って思われるような感じかな(笑)。一番言いたかったのは《「君を愛したいよ」》で、ここが聴こえればいいと思ったの。それと「永遠」って言う言葉が印象に残れば、その人なりに何かイメージしてもらえるだろうなって。
EMTG:デモヴァージョンもかっちりしてて。先日、恵比寿ガーデンホールでライヴを見た時に、3人編成で自らいろんな楽器を演奏されていましたけど、Charaさんって、女の子であり母でありアーティストであり、っていろんな魅力があると思うんですけど、音楽家としての魅力がもっともっと伝わっていけばいいのになって思ったんですよね。
Chara:元々ね、自分の音楽人生年表でイメージしていたのは、“楽器との距離が近くなっていき、ステージでも弾いている姿しか思い浮かばない”っていう未来だったので、そこに近付いているのかな。膝も悪くなっちゃったりして(笑)。
EMTG:そこまで先も考えていたんですか!?(笑)。
Chara:楽器は小さい時から好きだったからね。いつも楽器が助けてくれてたから。私、幼稚園の時から小さくて、おままごととかすると赤ちゃん役だったんだけど(笑)、先生の代わりにオルガンを弾いたりした時に、”これってみんなの役にも立つし、みんなを動かせるし、なんかいいもんだな…”って思えて。今もそれと同じかな。まあ、踊ったりするのも好きだし、そういうのも作っていきたいと思います。

【取材・文 高橋美穂】

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リリース情報

hug

hug

2013年06月05日

キューンミュージック

1. hug
2. 永遠
3. 永遠 (1st demo ver.)

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チューリップ、歌詞
インタビューで言っていた話ですけど、童謡の歌詞の秘密。何で子供の時に、チューリップを描かされるのかな? って思ってたんだけど、ああいう意味を刷り込むっていうこともあるのかな? って。でも、いい刷り込みだよね。あと、チューリップは、花言葉もいいんだよね。色によって違っていて、紫のチューリップは“不滅の愛”だったり。しかも、昭和初期って、あまり日本って愛とかさ、言わなかった時代でしょ。そういうことを知ると、”あの花カッコいい!”ってますます思うようになるんですよ。

■ライブ情報

[Who Was In My Mirror ?]
2013/07/11(木)Shibuya O-EAST

FUJI ROCK FESTIVAL ’13
2013/07/26(金)新潟県 湯沢町 苗場スキー場

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO
2013/08/16(金)石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ

JA KYOSAI Presents RADIO BERRY ベリテンライブ2013 Special
2013/09/08(日)井頭公園 運動広場

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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