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Salyu、10年間の想いのすべてを歌に託した一夜限りのプレミアムライブ!

Salyu | 2014.03.21

 唯一無二の才能。それはその歌声。それはその存在感。才能がメロディーにのり、目の前を次々と通り過ぎて行く。しかも、豊かな表情を携えながら。時に、華やかに、咲き誇るように。
 空間をSalyuという才能が満たしていく。
 耳から、そして肌から、歌声に注がれた愛情がじわりじわりと伝わってくる。自分の心がまっさらになっていく。そんな“ひとつの幸せの形”を意識できる約3時間であった。

 2月28日。中野サンプラザ。本年でデビュー10周年を迎えるSalyuが、アニバーサリーを記念して、一夜限りのプレミアムライブ「Salyu 10th Anniversary Concert “ariga10”」を開催。この日の模様は、全国の映画館でリアルタイム中継された。
 2004年に小林武史氏のプロデュースでデビューした彼女。この10年は、自分の声にこだわった10年間だったのではなかろうか。ポップスはもちろん、例えばsalyu × salyuでみせた実験的なサウンドスタイルも含め、彼女は様々な形で自分の声を追求してきた。このスタイル、そしてマイペースながらハイクオリティーの作品をリリースし続けてきた実績、表現に対する高いポテンシャルとフレキシブルなスタンスに魅了された熱狂的なファンも多い。この日も、中野サンプラザにはたくさんのファンが詰めかけていた。

 オープニングを飾ったのは「be there」。イントロとともに登場したSalyuは、ステージ中央まで来ると、左手を腰にあてて歌い出した。この日のバンドメンバーは、プロデューサーである小林武史(Key)、名越由貴夫(G)、キタダマキ(B)、伊藤大地(Dr)、ヤマグチヒロコ(Cho&Per)という構成。2曲目。小林氏がポローンとピアノを鳴らすと、アイコンタクトをとってSalyuが息を吸い込む。「彗星」。白いライトが中野サンプラザを旋回して「イナヅマ」、さらに「Tower」と続いた後、この日最初のMCへ。
「今日は10周年記念ライヴに足を運んでいただいてありがとうございます。10年間の中で制作してきた楽曲たちを今日は思いっ切り歌いたいと思います」
 事実をシンプルな言葉で綴ったMC。決して特別なことを話したわけでも無かったと思うが、観客からのレスポンスは、心の底からの拍手だった。“今日は思いっ切り歌いたい”――このひとことが、Salyuが放ったからこそ特別な言葉になったと思った。
 8曲目「青空」。桜井和寿氏が作詞、作曲を手掛けた、Salyu15枚目のシングル曲(2011年発売)だ。イントロと同時にあちこちで喜びの声があがる。タイトルどおり、ブルーに染まるステージ。Salyuを中心に白い光が踊りだす。ムービングライトがロンド(=輪舞)している。シンプルなステージセットだからこそ生きる、照明の繊細さがこの日の世界観にばっちりはまっていた。Salyuの歌声も弾む。少女のようだ。楽曲により、キャラクターはもちろん、年齢までも行き来する歌声は、Salyuの専売特許だ。

 中盤。一旦ステージを後にしたSalyu。着替えて再びステージに。コスチュームはホワイトからグリーンへ。シルエットもタイトに変わっていた。
 何曲か披露した後、「夜の海 遠い出会いに」。歌の出だしで驚く。声量が格段に違うという印象。ここまで抑えていたのか……と、そんなはずはないとわかっていながら、でもそう思ってしまうほど圧倒的だった。このように声の質量をコントロールできるのも、Salyuの強力な武器だと思うし、私はこの彼女の作品で彼女のライヴでこの瞬間に出会う度、いつも背中がゾワゾワする。未知のものに出会った興奮と、ほんの少しの恐怖に、皮膚が反応してしまうのだ。
 この日、3度目のMCへ。「皆さん楽しんでいただけてますか」という言葉に、会場から拍手のレスポンス。「嬉しいです」と言った後、「ここで昔の話を……」と話をつなぐ。あまりMCは得意じゃないと自己申告しているSalyu。そんな彼女にここで観客からこんな言葉が飛んだ。「がんばれー!」。彼女が笑顔で返した。「そんな……余計、プレッシャーになるわ(笑)」会場から笑いが起こった。自分の10年を振り返りながら「ラッキーな女の子だった」と言い切った彼女は、このMCをこう締めくくった。
「10年を節目に次の10年に向かって、自分を高めて毎日を過ごして行きたいと思います。(観客から拍手)ありがとうございます。軌跡の最先端の新曲をやりたいと思います。この10年の軌跡を感じながら歌ってみたいと思います」
 この言葉を受けて披露されたのが、最新シングル『アイニユケル / ライン』 から「ライン」。たゆたうような、柔らかなメロディーが特徴のバラードだ。照明が空中に“ライン”を描く。細く、太く。そのラインの起伏が、Salyuが丁寧に紡ぐメロディーの起伏、そして自分のバイオリズムの起伏と少しずつ重なっていく。楽曲と自分がリンクした瞬間だった。本編のラスト前では、前述のシングルからもう1曲「アイニユケル」もお披露目。ミディアムバラードの本作は、“前進”という言葉を思わせる力強さが持ち味ながら、起承転結&ストーリー性を感じさせる表情豊かな1曲である。微動だにしない観客は、Salyuの軌跡の最先端を全身で受け止めていた。本編最後は、小林氏と2人で「to U」。このスタイルは、この後控えている全国ツアー「a brand new concert issue " m i n i m a " - ミニマ - Salyu × 小林武史 vol.2」を予感させるものだったのはなかろうか。

 アンコールでは、Salyuの「この人がいなかったら10周年はなかった」という言葉から、小林氏がマイクをとるサプライズ(?)も。デビュー以来のバンマスを務めたという小林氏曰く「僕から皆さんにお願いしたいことはひとつ。これからもSalyuを応援してやってください。本当に貴重なアーティストだと思うので、どうぞこれからもよろしく」と。そして最後の最後は、Salyuの「みんな自由に!」というひとことから「風に乗る船」へ。観客が一斉に立ち上がる。リズムに合わせて手を鳴らす。ステージを彩るカラフルなライト。七色のそれは、虹を思わせた。そのライトが、眩い白光に変わる。Salyuが歌う、♪雨上がりに?という歌詞を視覚で印象づけた演出だった。曲のエンディング。Salyuは、マイクを抱え込むように握り締め、「イエーッ!」と、思いっ切りシャウトした。

 時刻は、もうすぐ22時になろうとしていた。
 拍手の中、ステージに向かい手を振る観客。「ありがとう!」という声も、たくさん聞こえてくる。
 Salyuは、何度も手を振りながら背中を向けた。最後にこんな言葉を残して。
「素敵な春を迎えてください。また逢いましょう!」

 5月30日の福岡公演を皮切りに「a brand new concert issue " m i n i m a " - ミニマ - Salyu × 小林武史 vol.2」がスタートする。

【取材・文:伊藤亜希】
【撮影:Taku Fujii】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル Salyu

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リリース情報

アイニユケル / ライン【初回限定盤】

アイニユケル / ライン【初回限定盤】

2014年02月26日

トイズファクトリー

1. アイニユケル
2. ライン
3. アイニユケル [Studio Live ver.]
4. ライン [Studio Live ver.]
5. アイニユケル [inst.]
6. ライン [inst.]

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セットリスト

Salyu 10th Anniversary Concert
“ariga10”
2014.2.28@中野サンプラザ

  1. be there
  2. 彗星
  3. イナヅマ
  4. Tower
  5. Dialogue(ダイアローグ)
  6. 悲しみを越えていく色
  7. HALFWAY
  8. 青空
  9. name
  10. 再生
  11. 体温
  12. Dramatic Irony
  13. landmark
  14. 夜の海に 遠い出会いに
  15. I BELIEVE
  16. ライン
  17. コルテオ〜行列〜
  18. VALON-1
  19. 新しいYES
  20. アイニユケル
  21. to U
Encore
  1. LIFE(ライフ)
  2. 風に乗る船

お知らせ

■ライブ情報

a brand new concert issue“m i n i m a”- ミニマ - Salyu×小林武史 vol.2
2014/05/30(金)福岡・ももちパレス
2014/06/04(水)神奈川・神奈川県立音楽堂
2014/06/06(金)宮城・日立システムズホール仙台シアターホール
2014/06/13(金)愛知・名古屋市公会堂 大ホール
2014/06/15(日)大阪・NHK大阪ホール
2014/06/20(金)東京・NHKホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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