「世界観が新しいアート」。Salyuニューシングル「青空/magic」リリース!
Salyu | 2011.07.13
そう語って、とても穏やかでありながらも眩いまでの笑顔を浮かべた、Salyu。この一言でもう、今現在の彼女の音楽に対する”自らに深い確信を抱いたうえでの、おおいなる冒険心”が、はっきりと理解できる。しかもそこには、波乱万丈すらも有意義に楽しめるタフな精神が伴っていることも、伺えるほどだ。小山田圭吾とのコラボレーションも大きな話題を呼んだ、salyu × salyu名義による最新アルバム『s(o)un(d)beams』で鳴り響かせた極めて創造的な音楽時空間は勿論だが、ここ数年のSalyuの動向を改めて考察してみると、音楽家としてのアクティヴさに拍車がかかり続けているのは、確か。
Salyu:『s(o)un(d)beams』は”声の可能性”というものをより多くの人に示したい、という気持ちから生まれた作品だったのですが、この作品によって”歌は楽器である”という事実を多くの人に感じてもらえたのではないか、と思っています。私自身にとっても、ヴォーカリストとしての意識、さらなる理想を確認できた、そして新しい基準が構築できた、大きな節目となった作品になりましたし。ただし、あのアルバムで私が取り組んだことは、実はすごく基本的なことだったんです。”メロディ/リズム/ハーモニー”という本当に基本的なことが、自分のテーマになっていた。数年前…ベストアルバムの『Merkmal』を発表する1年前くらいに、私は”感覚だけでは進化していけない”ということを実感した瞬間があったのですけれど。やっぱり、進化していくためにはスキルが必要なんですよね。だからこそ、基礎や基本的なことをより大切にしたい、とあの制作で改めて思ったんです。
『Merkmal』の少し手前、おそらく「LIBERTY」がきっかけかと思われる―での、気づき。「自分を新しく創り直したい」という思いで挑んだ”Merkmalツアー”。初のセルフプロデュース・アルバムであり、「様々な大きな変化を経て、次のシーズンに入っていく…そのサインがいろいろ散りばめられている」という『MAIDEN VOYAGE』。そして、先の『s(o)un(d)beams』で奏でた、礎なるものから放たれた新たなる世界観。”コアなものをポップに響かせる”ことを信条としながら、多彩かつ多角的なアプローチを展開し続けてきた、Salyu。その重厚で濃密な時間と実績を積み重ねたうえで、満を持してここに発表されるのが、Mr.Children桜井和寿が作詞・作曲を手掛けた新曲「青空」だ。
Salyu:実は、初めて桜井さんに作品の提供をお願いしたのは、今から4年くらい前のことなんです。やっぱり、私にとって「to U」という楽曲の存在はとても大きなもので。桜井さんから「to U」の歌詞を戴いた時、”これは歌のための、音楽のための言語だ!”と感じて、ものすごい衝撃を受けたんです。しかも、制作の現場で隣にいるわけですから…”いつかまた一緒に出来たらいいな”という思いは、誰でも抱きますよね。それで、いろいろ考えた末に意を決してお願いしたのですが…その時は丁寧にお断りされまして(苦笑)。そして、お願しては断られを地味に繰り返し続けていく中で、私も参加させて戴いたMr.Childrenの『Split The Difference』の一環で行われたスタジオライブの本番を終えた時に、フイに桜井さんが”今だったら書ける”と仰ってくださったんです。
この文章を読んでくださった方は、おそらく”なぜ「青空」の話がなかなか出てこないのだ?!”と思われたことだろう。そう、理由はひとつ。「断られ続けている中で、成長を促されているのが理解できた」というSalyuの言葉が象徴するとおり、このプロジェクトへの過程は、ここ数年の彼女の活動と切り離しては語れないから、だ。そして、遂にSalyuの願いが結実し、桜井が彼女に書き下ろした作品「青空」は、これまでの彼女のキャリアにはあまり見られなかった、”ポップなものをポップに響かせる”ナンバーであった。
Salyu:"ポップ”という音楽の構築を取り組んでいく…私が音楽に携わる場合、すべて”ポップ”なんですけれど、そこでのボーカリストとしての振る舞いにより磨きをかけていきたい曲だな、と思わされた楽曲でした。ポップシンガーとしての在り方、といいますか。今回の制作では、桜井さんと私でテーマを共有して取り組んだというよりは、桜井さんが私から受ける純粋な印象を知りたかったので、私の方からは具体的な希望は出していないんです。桜井さんが”楽しくやらせて戴きます”と仰って、そして作ってくださったのがこの作品でした。
一聴、シンプルでポップで人懐っこい、楽曲。しかし、”振る舞い”と”スキル”が先鋭的に備わっているSalyuだからこそ、歌い奏でることが出来る作品であることは、確か。
Salyu:人の耳に心に気さくに入っていける楽曲なんですけれど、実はすごく難しいんです。桜井さんならではの”スイートスポット”が、かなり斬新に織り込まれているので。それと、こういうプレーンな印象を与える楽曲は、自分がもともと持っている個性がすごく分かったりするもので、”歌で一筆書きをした時に声がどういう楽器になるのか”というところをまた新しく感じましたし、一筆書きの難しさもすごく感じましたね。桜井さんは”難しいことを考えないで、思い切り歌うのがいいと思う”と仰って、そういうディレクションをしてくださっているんですけれど。ですから、本当の意味で背伸びをせず、思いっきり歌える…思いっきり人とコミュニケーションを図れたり、振る舞いが出来たりする、そういうテンションを今回与えていただいた、と思っています。
そして、両A面のもう一曲に”めざにゅー”のテーマソングとして既にお馴染みの「magic」を収録。こちらは小林武史が手掛けた、清々しく軽やかなポップチューン。勿論、音色やフレーズへの拘りは、いつもながら随所に感じられて口元がほころんでしまうのだが。
Salyu:いろいろな期待に応えつつ、出していくべき主張はゴリッと出していこう、という(笑)。小林プロジェクトの魅力は、音楽という世界における振る舞いの自由さ、そのピュアネスをものすごく共有できるところだと思っているんです。でも、ポップスというものをメジャーな場所でオルタネイティブな…それは、他にはない、商業性という目的だけではない何か別のもの(笑)という意味での、オルタネイティヴ感。この作品には、それがすごく入っていると思います。
品格、つまり丁寧に培われた品の良さと、紡がれ続けた深奥な背景があればこその風格を兼ね備えている”品格”あるシングル盤。
Salyu:自分にとって理想的な環境を更に整えるための、すごく大切な過程。そして、この作品の世界観は本当に新しいアートだと思います。
【 取材・文:Takeuchi Miho 】
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ビデオコメント
INFORMATION
♪ap bank fes’11 Fund for Japan
パブリック・ビューイング at 仙台
◆2011年7月16日(土)
エスアールジータカミヤ スポーツパーク
[問]キョードー東北
022-217-7788
♪ap bank fes’11 Fund for Japan
◆2011年7月17日(日)
つま恋(静岡県掛川市)
※その他のライブ情報はオフィシャルサイトをご覧ください