Acid Black Cherry、61公演におよぶ全都道府県ツアーが遂にファイナル!
Acid Black Cherry | 2014.06.30
2013年の8月13日の福島を皮切りにスタートした全都道府県ツアー【Project『Shangri-la』】は、全都道府県51ヵ所52公演をまわり、その後、Encore Season(東名阪アリーナツアー6公演)と、Final Season(6月13・15日の国立代々木競技場第一体育館と宮城・宮城セキスイハイムスーパーアリーナ)という総数61公演に及ぶロングツアー。このプロジェクトツアーは“君”に唄を届けるために、“君”を笑顔にするために、yasu自らみんなに会いに行こうと企画されたツアーでもあったのだ。
2014年6月15日。
セミファイナルであったこの日、低く落とされた照明から放たれる薄暗い光の中、yasuは「ジグソー」からライヴをスタートさせた。サビの広がる旋律を受け、ゆっくりと照明が上がっていくと、そこは柔らかな光に包まれた。ドラマチックさと激しさが共存したAcid Black Cherryらしい音と光りが融合した魅せ方である。
今回のツアーは、とにかく出来るだけ近い距離でライヴを届けることを目標にしていたこともあり、照明以外に派手なセットや大きなヴィジョンなどは設けられておらず、音とyasuの唄とラフなトークのみで構成されていたのだ。これは、全都道府県のホールツアーも今回のアリーナツアーもまったく同じ。Acid Black Cherryという音の力と、yasuという人間そのものを感じる歌詞の力は、会場の大小に左右されることなく、真っ直ぐな想いを真摯にぶつけたライヴとなったのだ。
1万人を超すこの国立代々木競技場第一体育館でも、その光景は変わらなかった。
体一つで挑むyasuの姿に、オーディエンスも手放しで向き合った。
「ジグソー」から繋がれていったのは「ピストル」。「ピストル」は、シングル曲ながらもAcid Black Cherryの楽曲の原点となるヘヴィロックが前面に押し出された攻め曲である。このツアーでは、まったく同じセットリストは1度たりとも存在しなかったのも特徴だったが、ファイナルを前に、しっかりとAcid Black Cherryの本領を見せつけようという強い想いがあったのだろうか? この日は特に頭から激しく攻め立てていたように思う。
「今年に入って東京だけで5本ライヴをしているわけですが。こんなに短期間のうちに東京でライヴをするとは。なのにも関わらず! みなさん、こんなに集まってくれてありがとうございます。2日前にもここでライヴをさせてもらったんですが、そのライヴが激し過ぎたのか、今日は腰が……(笑)。普通は首が痛いもんなんですけどね(笑)。でもですね、今日は噂によると2日前よりも淫乱な奴らが集まっているということなので、最高に淫乱でエッチなSEXをして帰ろうぜ!」
相変わらずのyasuらしい挑発がオーディエンスをより沸き上がらせた。そんなMCを挟んで届けられたのは「楽園」。拡声器を持ち、荒々しく歪みのある声と表情で唄って魅せるyasu。何ものにも変えることは出来ない、yasuそのものが最高の演出となるこの曲でも、オーディエンスは力強く拳を振り上げ、自らを解放していったのだった。
「蝶」「黒猫~Adult Black Cat~」といった人気のシャッフル曲を挟み、サポートメンバーと共にツイッターで募集した質問に答えるという、このツアー恒例のMCを届けた。
このツアーを一緒にまわったのは、ギターのYUKI(DUSTAR-3)、HIRO(Libraian/La’cryma Christi)、ベースのSHUSE(La’cryma Christi/TRiCK)、淳士(SIAM SHADE/BULL ZEICHEN88)。長いツアーを共にしたメンバーとあって、5人は、演奏面はもちろん、トークでの掛け合いや突っ込みでも絶妙なバランスを見せた。yasuは、多くの質問の中から、父の日でもあったこの日にちなんで、【お父さんに怒られた思い出】をチョイス。若い頃、歌手を目指して上京したこともあったという父親との思い出話しを始めた。
「俺、上京したとき、親にギリギリまで言わへんくて、いきなり“俺、来週から東京に住むわ”って言うたんですよ。だから、親もビックリしたんでしょうね。めったに部屋なんかに来ない父親が、“yasu、ちょっといいか”って部屋に来て、“オマエ、東京なんかに行って、メシが食っていけると思ってのか?”って言われたんですよ。珍しいなと思ったんですけど、心の中で、“あ、これ絶対オカンに、「アナタ! ちょっとyasuが東京行くとか言ってるから止めて来て!」って言われて来たんやろなぁ~”って思ったんです(笑)」と笑いを誘ったのだが、そこから何故かメンバーたちも巻込み、お題であった【お父さん】の話が、いつの間にか【お母さん】の話題へとスイッチ。そこからは、【母親にひくくらい怒られた話】で盛り上がった。
そんな身近さを感じさせるyasuのトークも、彼の人気の大きな理由の1つである。
「とまぁ、そんな話しもいろいろとありますが、みなさん、今日は父の日でもありますので、ご両親は大切にしてあげて下さいね」とMCを締めくくると、この【Project『Shangri-la』】のファイナルの地である東北地方に響かせるために作られた、「君がいない、あの日から…」を届けたのだった。
この曲には、yasuの音と唄を何よりも愛しながらも、もう二度とライヴに足を運ぶことが叶わなくなってしまった“君”への想いが詰め込まれている。オーディエンスは、そんなyasuの想いを静かに受け取っていた。
後半戦では、ベースのスラップを軸としたヘヴィなナンバー「Greed Greed Greed」から、再び激しいAcid Black Cherryのライヴへと舵を切り、オーディエンスを盛り上げた。
アンコールでは、チケットの半券をメンバーが引き、当たった席の人のリクエストに応えるという『リクエストコーナー』が届けられた。
「【Project『Shangri-la』】もあと1本で終わります。初めて47都道府県をまわって、初めて行く場所もたくさんあったんですが、最初はどうなるかすごく不安でした。でも、日本中を笑顔にできればいいかなと思って10ヶ月やってきました。(「シャングリラ」の)歌詞の中にある《光と命のユートピア》を再現しようと思ってまわったツアーでしたけど、逆にみんなから元気をもらえたツアーになりました。今思うことは、本当に無事にまわれて良かったなと思うことと、みんな本当にありがとうということです。本来は今日が最終公演だったんですが、急遽、ツアー中に宮城でライヴができることになったので、最後にバシッと、東北でこの【Project『Shangri-la』】を締めくくってこようと思います!」
yasuは最後にこのツアーへの想いを言葉にし、ラストに「20+∞Century Boys」を置いた。
yasuはこのライブの7日後の6月22日に、宮城セキスイハイムスーパーアリーナで、10ヶ月にわたった総数61本に及ぶ【Project『Shangri-la』】の幕を下ろした。この日、東北の地に響きわたったyasuの音と声は、多くの人々を笑顔に変えた。このとき、yasuがこの【Project『Shangri-la』】にかけた想いが完結したと実感した。
福島から始まったこのツアーの裏には、2011年の3月11日に東北地方を襲った東日本大震災への想いがあったのだと思う。yasuはこれまでそのことを表立って口にはしてこなかったのだが、それには、“安い慰めの言葉ではなく、自分が出来る最善の方法でみんなを笑顔にしたい”という想いがあったからなのであろう。
このツアーには、yasuが“唄う意味”がしっかりと詰め込まれていたように思う。
きっとyasuはこの先も、このツアーを胸に、全国の“君”のために唄い続けていくことだろう。
【取材・文:武市尚子】
【撮影:宮脇進(PROGRESS-M)】
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リリース情報
セットリスト
Project『Shangri-la』Final Season
2014.6.15@国立代々木競技場第一体育館
- ジグソー
- ピストル
- 楽園
- 蝶
- 1954 LOVE/HATE
- 黒猫~Adult Black Cat~
- 君がいない、あの日から…
- Maria
- チェリーチェリー
- Greed Greed Greed
- 罪と罰~神様のアリバイ~
- Black Cherry
- シャングリラ
- Bit Stupid
- 優しい嘘
- SPELL MAGIC
- 20+∞Century Boys