レビュー

RADWIMPS | 2011.02.09

「奪わないで!!」「余計なものを見せないで!!」「知らなくてもよいことまで伝えないで!!」そんな悲痛なまでの叫びが耳を刺す曲だ。
反面、「だけど、離れられないんだよ」「なのに、愛おしいんだよ」「だから、付き合わなくちゃならないんだよ」の、諦念や観念の慈しみがヒシヒシと伝わってくる曲だ。 まるでこの表層平穏で美しく見えながらも、その実、汚くて、醜くて、いやらしい今生きているこの世界を縮図として露呈させているように響くRADWIMPSのニューシングル「狭心症」。段々とエモ―ショナルになっていく歌唱に乗せられ伝えられる、そのタイトル通り、胸に圧迫感や切迫感を伴い迫ってくる歌詞は、理不尽で、いびつで、不条理で、矛盾だらけで、だけど、時々見せるふっとした美しさに、心がホロっとなり、結果、聴く者に”だけど、生きていかなくちゃ!!”と思わせてくれる。
前作シングルでうかがえたサウンドの詰め込み感とは対照的に、今回のシングルは一聴すると行間や隙間の多い印象を受ける。しかし、よくよく聴くと、音がさりげなくもびしっと入っていたりする。重々しいミッドなツービートの上、泳ぎ回るフリーキーなギター。それがラストでは今までひたすら我慢していた膿を吐き出すかのように堰を切って、エモ―ショナルさに向かうところも聴きどころだ。

一方、M-2の「寿限無」は、ボーッと聴いていたらサカナクションの新曲かと思った(歌内容は別として)(笑)。適度な浮遊感と夢遊感、多幸感の漂うエコー感のある歌声と太い動きの多いベースラインと、こちらもナチュラルトーンで隙間の多いサウンドに聴こえさせつつも、色々な音がこまごまと微かな音で張り巡らされていたりする。そして、その上に歌われるのは、”過去こんなキテレツな歌詞ってあったか?”と思える、物理から代数幾何、四文字熟語、関数、英語の三人称、古文の活用法、元素記号、円周率、こきん和歌、年号、エネルギー不変の法則の暗記方の数々。しかし、それらをしっかりとした歌と成立させ、聴く度に色々な物語や光景が浮かんでこさせるところは彼らの面目躍如だ。そして、タイトルに「寿限無」とつけときながら、一切寿限無が現れないところはいかにも彼ららしい(笑)。

タイトル曲で歌われている通り、世界はクルーエルだ。生きて、生活しているだけなのに、見たくないもの、聞きたくないもの、嗅ぎたくないないものが、望んでもいないのに、一方的に入り込んでは、僕らの胸を痛ませ、時々は発したくない言葉や押さえられない気持ちや想いを言葉や歌に乗せて吐き出してしまう。
世の中や人生の縮図とか、仕組みとか、摂理とか、原理とか、真理とか、成り立ちとか、なんかこの2曲はそんなことが歌われているような気がしてならない。 RADWIMPSはやはり危険だ。

【 文:池田スカオ和宏 】

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リリース情報

狭心症

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狭心症

発売日: 2011年02月09日

価格: ¥ 934(本体)+税

レーベル: EMIミュージックジャパン

収録曲

1. 狭心症
2. 寿限無

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